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今回紹介いたしますのはこちら。

「ニッケルオデオン 青」 道満晴明先生 
小学館さんのイッキコミックスより刊行です。

さて、道満先生ならではの味が楽しめる短編を集めた本作もいよいよ三冊目。
今回もそんな味をたっぷりの堪能できる一話8Pの短編を13編収録しています。
そんな中で今回紹介したいのが、「迷子のチーコ」。
道満先生ですから、ただの迷子の話で終わるはずがありません。
いったいその内容は……?


今日もチーコは待ち合わせに遅刻してきました。
これでは今日のデートで見る予定だった映画には間に合いません。
そこでチーコとユウはファミレスでお茶することに。
コーヒーとケーキを前にしながら、チーコはわき目も振らず何かを描いています。
なんでも、地図に今度迷子になった時の道しるべを描き込んでいるのだとか……
ユウが気になったのは、「クロ」という描き込み。
それは野良猫なのですが、いつもその位置の塀の上にいるとのことで。
相手は生き物なんですから、気まぐれで移動することもあるでしょう。
いつもはいねーだろ、と思わず突っ込みを入れるユウでしたが、その後二人で例のしるしのところに行ってみますと……ほんとにクロは塀の上に座っていたのでした。
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またまたいつもの銅像のところで待ち合わせ。
今回もチーコは迷子なのですが……今回はいつもに輪をかけて遅いのです。
もうすでに4時間おくれ。
いくらなんでも遅すぎますし、携帯も出てくれません。
ユウはこころあたりをさがしはじめるのですが、 そこでいつも塀の上いいるはずのクロの姿がないことに気が付きました。
近所のおばあさんに尋ねてみると、この間車にひかれて死んでしまったと言うことがわかるのです。
やがてユウは。細く薄暗い路地でうずくまっているチーコを見つけました。
クロがいなくて、道がわからなくなっちゃった。
半べそでそういうチーコに、ユウはもっと見つけやすいものを目印にしろ、とアドバイス。
チーコがそうだねと返事するころには、ちょうどチーコが自宅に帰るバスが来るバス停にたどり着いたところでした。
何せ待ち合わせから4時間も遅れ、そこから彼女を探したのですから、日もとっぷりと暮れ放題。
何もできなかったものの、もうデートする時間は残っていないのです。
が、ユウはそんな彼女の手を握りました。
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もう遅いし、俺んちすぐそこだから。
ユウ君……うまいこと自室に誘い込みやがりました!!

愛し合う二人が一つのお部屋で夜を過ごせば……
ごにょごにょをおえ、、二人は一緒のお布団で眠っていました。
まだまだ朝は遠い夜中、いーこはむっくりと起き上ります。
気が付いたユウはどうしたのか尋ねるのですが、お手洗いとのことで。
ユウはトイレは突き当りを右な、と声をかけて再び目を閉じるのですが……
そこでハッとします。
不安に駆られ。チーコの名を呼ぶユウ。
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ですが、返事はありません。
何をやってるんだ俺、目が離せないからずっとそばにいてやるって決めたばっかだろう。
そう自分自身をしかりつけるユウですが、それと同時に、トイレに行く途中で迷子になるなんてだれが思うんだ、と同時に相反する考えもわいてくるのです。
……トイレにもチーコはいませんでした、
ユウのもとに残されたのは、チーコの地図だけ。
そこには新しく、いつもの待ち合わせ場所に「ユウくん!!」と書き込みがされていまして……

それから三か月。
チーコはいまだ、迷子のままです。
……そしてその日も、ユウはいつもの待ち合わせ場所で待ち続けています。
塀の上の野良猫のように。
目印になりながら……チーコがひょっこりと戻ってくるのを……


というわけで、今巻も不思議な極互換が味わえる短編が収められた本作。
切なくもどこかほっこりする前述のエピソードの他にも、道満先生ならではのテイストが存分に楽しめる作品がそろっております。
巨人の女性の胃の中で、それなりに幸せに暮らしていた者たちが迎える幸福な結末を描く「ミシュリーヌとその中の者たちの話」。
宇宙船に密航したものの、作業ロボットに見つかって宇宙の放り出されそうになる少女とそのロボットの話、「詰めない方程式」などなど……
さらにこの他にも、「とある家族の飲尿法」をはじめとしたただただひたすらばからしいお話や、ブラックな描写がひかる「Grimm DEAD」、理不尽な選択から予想外の結末を迎える「不死体コンストレイント」と言った、ちょっと違った感覚の作品も注目したいところ!
道満先生と言いますと、静かにゆっくりと物語が進み、寂しさと残酷さ、暖かさと冷たさが同居するkのような不思議な味わい深い短編が印象深いところでしょう。
ですがそれ以外の、ばかばかしいお話やなんかもまた道満先生の持ち味!
脱力感ほとばしるギャグメインのお話も、ブラックでダークなお話も必見です!!

連載誌の休刊もあり、残念ながら今巻で完結となった本作。
おまけカット多数、おまけ漫画もカバー下本体に掲載、さらに巻頭と巻末にフルカラー作品を描く一話ずつ収録していまして。
最後の最後まで道満先生武士が楽しめるのです!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!