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今回紹介いたしますのはこちら。

「バチバチBURST」第12巻 佐藤タカヒロ先生 
秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックスより刊行です。

さて、いよい幕を開けた幕下優勝決定戦。
鯉太郎と王虎、先代から続く因縁ぶかきこの戦い、果たして最後に立っているのは……?


ガッチリと組み合った両者。
鯉太郎は前まわしをがっちりとつかみ、一気に前へと出ていきます!
その突進力はさすがの一言で、王虎はあっという間に土俵際に追い込まれてしまうのでした!
かつては各界の暴れん坊として忌み嫌われた火竜の息子である鯉太郎はデビュー前から相撲ファンから嫌われていました。
それがどうしたことでしょう。
今まで幾度となく、土俵上でその凶悪な本性を見せてきてしまったということもあってか……
場内の声援は、鯉太郎一色に染まっていたのです!
その歓声を聞いた王虎は、呆然と上を見上げていたのですが……
自分への歓声が消える、自分が消える。
そんな考えが頭をよぎったその瞬間。
王虎に今までの様々な思い出がよみがえりました。
何をやっても大横綱・虎城の息子として見られる。
自分に注目する者は、みな虎城の姿を通して見つめてくる。
そしてその父も、何かを成し遂げたとしても、さすがは俺の息子だと笑い……
そんな右を向いても左を向いても、虎城の息子、虎城の息子ともてはやす周囲。
連勝街道を驀進し、ようやく自分の腕で自分を認めさせる頃に成功したはずなのに……
とうとう王虎は限界を超え、取組中にもかかわらず黙れと怒号を上げてしまったのです!!
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王虎はおっつけで鯉太郎の体をはね上げ、左の前まわしを切りました!
自分の存在が肯定されるのは「強さ」だけ。
自分にとって、目の上のたんこぶでしかない虎城の存在を消し去るには、まだまだその強さが足りない!!
王虎は左腕をかち上げのように振り上げて右前まわしも切って……
鯉太郎の顔面に、すさまじい突っ張りを叩き込みます!!
その威力によって、鯉太郎は大きく後ろに弾き飛ばされてしまい、一気に二人の距離が開いてしまいます。
力任せに劣勢だった戦局を一気に自分のほうへと引き戻す。
その姿はまさに、自分の力以外は何も信用していない、悪鬼羅刹のようで……
一方の鯉太郎は、一連の交錯によってもうスタミナ切れ状態。
王虎を眼前にして、ぐったりと身動きもできない状態になっています。
もはやここまでか。
思わず空龍部屋の面々が目をそらしてしまうその状態でも、王虎は攻め手を緩めないのです!!

一気に土俵外に押し出すなり、廻しをとって転がすなりすればあっさりと勝負は決まるはず。
だというのに、王虎は両のツッパリで鯉太郎の顔面を乱打し続けるではないですか!
まるで自分が圧倒的に鯉太郎に勝っている、と周囲に見せつけるかのように……!!
凄惨な現場となった土俵を、青ざめながら見つめ続ける観客たち……
ですが、そんなムードの中にあっても……鯉太郎はまだ勝負をあきらめてはいないのです!!
鯉太郎の下半身はまだどっしりと下りていて、そのまなざしにもまだ力がみなぎっているのですから!!
鯉太郎に残されているエネルギーは、どんなに絞り出してもあと一回。
それも、重い王虎を土俵外まで押し出すほどの力は出せません。
じっくり待ってチャンスをうかがい、左下手を取って投げる!!
王虎の破壊力大きい小手投げを食ってしまう可能性もあるのですが、もはやそれ以外に勝つ方法はないでしょう。
ですが王虎がやすやすとチャンスを与えてくれるはずもなく。
すさまじい右の張り手が鯉太郎の顔面を襲い……
鯉太郎は力なく土俵に崩れ落ちる……かと思われたその瞬間です。
どうしたコラ、それで終わりか!!
そんな火竜の声が、鯉太郎の耳に飛び込んできたのは!!
そう、ここで終わるわけにはいきません!
凌いで、守ってどうするんだ。
指一本でも動くなら、ぶち当たれ!!
火竜がまだ幼かった鯉太郎に言った言葉。
立て、お前の相撲(生きざま)はそんなもんか!
・・…そして小山内鯉太郎も、今の鯉太郎もこう返すのです。
まだだ!
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まだやれる!!
自然と口に笑みがこぼれる鯉太郎……
それはまるで、在りし日の火竜そのもの!!
鯉太郎は残されたわずかな体力を爆発させ、王虎のツッパリに合わせて突進します。
食らえばその場ですべてが終わるであろう張り手をかいくぐり。
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届いた左廻し!!
幕下優勝決定戦、最終局面。
果たして鯉太郎は荒ぶる虎を投げ捨てることができるのでしょうか。
それとも龍になることなく、虎に食い散らかされてしまうのでしょうか!?


というわけで、クライマックスを迎える本作。
6人ではじまったこの決定戦も、巴戦を経てとうとう最後の一戦を迎えることとなりました。
強敵相手に苦戦して勝ち上がり、疲労困憊、満身創痍の鯉太郎。
対して王虎は、石川にイラつきを感じはしたものの、終始圧倒的な力で体力の消耗は最小限。
体調面でも、純粋な実力面でも王虎に軍配が上がるであろうこの戦い。
ですが二人の間で最も違う点は、それらの肉体的要素ではないのです!!
虎城と火竜、お互い存在する偉大な父。
王虎はひたすらその存在を打ち消そうと、自分の力だけを信じて誇示してきました。
逆に鯉太郎は、最初こそ王虎と同じように自分だけで相撲を取るつもりだったものの、今は様々な人々の力を借り、精神的にも大きく成長してきたのです。
孤高にして孤独の天才、王虎。
祭では一枚劣るかもしれないものの、多くの力を借りて成長した鯉太郎。
その、これからも長くぶつかっていくであろう二人の戦い、ひとまずの決着が今つけられようとしているのです!!
最後の最後まで目の離せない攻防の連続。
たどり着く結末をぜひその目でご覧下さい!!

そして完結を迎える本作ですが、11月より佐藤先生による新作幕内相撲漫画が始まるとのこと。
鯉太郎のお話はここでひと段落となってもおかしくはありませんが、やはり関取になってからの姿も見たいもの。
常松や大吉もまだ見せ場が少ないですし、渡辺や田上さんと言った面子のその後も気になります。
……まぁ「新作」と銘打たれていますので、もしかしたら鯉太郎が主役ではなくなっているのかもしれませんが、それはそれでまた別の熱いドラマを見せて呉れることは間違いないはず!!
今から新作が楽しみですね!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!