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今回紹介いたしますのはこちら。

「燐寸少女」 鈴木小波先生 
KADOKAWAさんの角川コミックス・エースより刊行です。

鈴木先生は99年ごろから活躍されている漫画家さん。
児童誌や学年誌、少年誌から青年誌まで様々な出版社さんの幅広い雑誌で、原作付きからオリジナル、コラムまで多種多様な作品を発表されていらっしゃいます。

本作は07年に鈴木先生がモーニングの増刊で発表した同名の読みきり作品を、セルフリメイク(というよりこちらのほうが原型に近いそうなのですが)した作品になっています。
不思議な燐寸を売る奇妙な少女、その燐寸がもたらす驚きの出来事を描く本作、果たしてその内容は?


おはよう、と女子に気軽に挨拶する少年。
するとあいさつされた少女は、顔を真っ赤にして走り去ります。
そこに別の女子が現れ、少年にぶつかってしまうのですが、その少女は謝るどころか頬を染めながらもよそ見してんじゃないわよ、とツンデレ風味の反応をしてきました。
そしてすると周りにいた女子たちが、ちょっとその態度はひどいじゃない、彼は私のなんだ、と押し寄せてきてもみくちゃに……
全く女と言う生き物はめんどくさくて図々しい、俺にかまうし……

などという妄想から覚める少年、秋津。
実際には、勇気を振り絞って女子に挨拶しても一瞥しただけで無視されたり、女子とぶつかっても「あ?」とにらみつけられる始末……
女と言う生き物は面倒くさい。
そして、男と言う生き物は二つに分かれている。
自分のような無視される系の害虫男子。
そして、イケメンの七節のような群がられる系、フェロモン男子。
くそう女子どもめ、俺の妄想で無茶苦茶にしてやる!!などとくだらない復讐を誓う秋津。
ですがそんな彼にも一応声をかけてくれる女子もいるのです。
保健委員の蝶野さん。
かわいくていい子で、害虫男子にも優しい声をかけてくれる。
まさに高嶺の花、雲の上の鳥。
害虫男子は上を見上げるだけ。
いや、生きているんだから妄想くらいはするのです。
……モテたい!!

先ほどの女子にぶつかった際に足をくじいてしまったらしい秋津。
やむなく保健室に行くのですが、そこではなんと七節と女子がお楽しみをしようとしているところでして……
七節によって、部屋から叩き出されてしまう秋津。
あまりに理不尽な目にあわされ、秋津の怒りは最高潮……!
保健室はホテルじゃないぞ、お前こそ害虫だ。
そのフェロモンなんて悪臭になり下がれ……
悪臭をまき散らせ!!
そう願った瞬間のことです。
一本の……燐寸が擦られました。
と同時に、
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七節の体から……筆舌に尽くしがたい悪臭が発せられたではないですか!!
今の今まで七節にメロメロだった女の子も、その匂いにはたまりかねて逃げ出してしまいます!!
秋津はものすごい悪臭の中で、事態が把握できずただ驚いていたのですが……
そこに、一人の少女が現れたのです。
少女は、手にしていたバスケットから一箱のマッチを差し出してきました。
火が付いている間に思ったこと……妄想を具現化する妄想マッチです。
先ほどの者は試供品ですのでご安心を。
秋津さまのその思い、お手伝いします。
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マッチ売りのリン、と名乗った少女はそう言いながら、燐寸とともに領収書を差し出してきます。
そこに書かれていたのは、「寿命一年分」という文字。
……まさかこのマッチによって、七節から悪臭が発されるようになった、とでも、言うのでしょうか……?

その燐寸の力が本物であることを、秋津は自ら証明することとなります。
保健室に偶然やってきた蝶野さんにシップを張ってもらった秋津、冗談半分で「蝶野さんのパンツが見たい」と言いながらマッチを擦ってみました。
するとどうでしょう、突然突風が吹きまして、蝶野さんのピンクのおパンティが露わになったではありませんか!!
このマッチの力は本物。
とすれば、秋津が思い描く妄想は一つしかありません!!
モテたい!!

それから、妄想に思い描いていた以上にもてるようになった秋津。
もう俺は害虫じゃない、とほくそ笑み、残りのマッチをどう使おうかと思案します。
すると注意書きには、本製品は妄想用であり、願望用ではない、と注意書きをしてあるのを発見。
妄想と願望ってどう違うんだ?と思わずつぶやきますと、「覚悟ですよ」と言う声とともに突然リンが姿を現します。
リンは「アボカドチーズヌードル」なるカップ麺をためていました。
このカップ麺は暴走を具現化したもの。
アボカドとチーズ、おいしそうな響きではあるものの、本当においしいのでしょうか?
妄想は想像力が足らぬものですから。
……何かを暗示しているかのような言葉ですが、正直秋津にはピンときません。
全然わからないんだけど、と素直な感想を漏らしますと、そこで不快な悪臭が鼻を突きました。
この匂いは……そう、七節です。
俺が急にこんなにおいを出し始めたら、お前が突然もてはじめた。
俺にないをしやがった、秋津!!
身の程をわきまえ解け、害虫が!!
そう言いながら胸ぐらをつかんでくる七節……
一瞬ひるんだものの、すぐに落ち着きを取り戻す秋津。
俺はもう害虫なんかじゃない。
益虫?女王蜂?いや……
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地球上すべての女にもてる、皇帝だ!!
そう言って燐寸に火をともす秋津!!
今度の妄想はとんでもない規模じゃありませんか!!
……「妄想は想像力が足らぬもの」。
リンの言った言葉の真意がわかるのは……もう少し先のことなのです。


というわけで、不思議な燐寸をめぐる物語を描いていく本作。
この後もリンは様々な人物のもとを訪れ、様々な妄想を叶える手伝いをしていきます。
正義を行使したい、人の心を覗き見たい、彼女との時間を永遠に続けたい……
そんな妄想は、どんな結果を生むのでしょうか?
言葉を変えれば、どんな願いでもかなえることができるこの燐寸。
ですがそれは、想像力に欠けた……覚悟のない途方もない妄想すらも現実としてしまうことを意味しています。
過ぎた妄想が自分の身を亡ぼすという悲劇を生むのか、はたまたその妄想を乗りこなし、ハッピーな現実をつかむことができるのか。
リンはそんな人々がもがくさまをただ見つめるのです。

そして物語は今巻の後半から登場する新キャラをきっかけに、だんだんと形を変えることになっていきます。
イチ狂言回しに過ぎなかったリンですが、ライバル的な不思議なキャラが現れ、より主人公色が強まることに。
そしてそんなリンをサポートするマスコット的なキャラも意外なところから登場し、それまではやや薄かったリンのキャラを際立ててくれるのです!
今巻は関数表記こそありませんが、現在もヤングエース市場で連載は継続中。
第2巻以降は展開も変わってきそうですし、先が楽しみですね!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!