to4
今回紹介いたしますのはこちら。

「トミノの地獄」第1巻 丸尾末広先生 
エンターブレインさんのビームコミックスより刊行です。

さて、本作は丸尾先生の得意とする、昭和初期あたりを舞台に、主人公が残酷な運命に翻弄されていくタイプの作品です。
「トミノの地獄」といいますと、ネット上でも話題になった西条八十先生の死を連想される方も多いでしょう。
ですが本作はおそらくそちらをモチーフにこそしているのでしょうが、原作というわけではありません。
しかし丸尾先生が紡ぎだす本作の中で描かれているのは、紛れもない地獄……
果たして本作のトミノたちに待っている運命とは、いかなるものなのでしょうか?


双子の男女がいました。
彼らは、まだ一歳にもなっていないうちに母親に捨てられたことを覚えている、と言います。
親戚のうちへ押し付けるように預けられた二人……養育費は毎月送られていたようなのですが、名前すら付けられていませんでした。
二人は預けられた親戚にも歓迎などされてはおらず厄介者、邪魔者として扱われます。
名付けられた名前が、「ミソ」「ショウユ」だということからもそれがうかがえるでしょう……

食事も満足に与えられなかったミソとショウユ、教育すらロクにうけなかったせいもあり、親戚の家でなぜたくさんの蚕を飼っていたのかを理解できていません。
そんな要因が重なったこともあったのでしょう、親戚のうちの子供たちに受けているいじめがエスカレートし、これを食えと口元に持ってこられた蚕を、ショウユはむしゃむしゃと食べてしまったのです。
飯の種である蚕を食べてしまったところを見られ、ミソとショウユの扱いはより苛烈なものとなっていきます。
挙句の果てに、栄養失調のためか何なのか、二人の体に大きなあざができてしまったことからそれに拍車がかかり……
飯抜きを言いつけられ限界が来てしまったのでしょう。
to1
ショウユは自ら蚕を貪り食らい、それが親戚に見つかったことをきっかけとして、とうとう二人は家から追い出されてしまうのです。

追い出されただけならばまだよかったかもしれません。
二人は、売られたのです。
帽子にマント、マフラーを着込んだ、目つきが普通でない男に連れられた二人は、船に乗り、満員の地下鉄に揺られ、都会へ。
にぎやかな都会の喧騒、なにやら楽しげな遊園地。
今まで見たことも聞いたこともないものの連続に、二人はただただ戸惑うばかり。
ですがたどり着いたのは、そんな街の賑わいから離れた郊外の森の中。
そこに立っていた複数のテント。
そこがミソとショウユの新しい家となるのです。
……このテント群は何なのでしょうか?
中にいたのは……
歯をむき出しにした暴れる得体のしれない獣。
全身毛むくじゃらの子供。
額にもう一つ頭のある男。
手足が4歩ずつある、金髪の物言わぬ美少女。
to2
……そう、ここは見世物小屋のキャラバンだったのです……!

見世物小屋の主、ウォンは様々な黒い噂のある怪人物です。
その噂に真実がどの程度交じっているのかはわかりませんが、どちらにしろ相当胡散臭い人物であることは間違いありません。
しかし、ここでの生活は二人にとって今までよりもよっぽど楽しいもので……
見た目こそ少し普通の人とは違っていますが、心根はやさしい、二人と年の頃の近い子供たちとはすぐに打ち解けることができました。
くいっぱぐれることもありませんし、活動写真を見るという体験までできまして。
とはいえここは見世物小屋。
「仕事」のできないものに居場所はありませんから、二人は何か芸を覚えて「舞台」に立たなければいけません。
まず二人に与えられたのは、セーラー服のような衣装と、芸名。
その時たまたま見ていた新聞の記事から、二人はこんな名前が名付けられたのです。
to3
男のショウユは、カタン。
女のミソには……トミノ、と。


というわけで、カタンとトミノの数奇な運命を描く本作。
「少女椿」を彷彿させる、丸尾先生が得意な(?)見世物小屋がらみの物語となるわけですが、導入の苦難から打って変わって見世物小屋では幸せな生活が描かれていきます。
ですがそこは丸尾先生。
幸せなまま物語が進むなどということがあるはずもありません!
実はカタンとトミノにはとある能力が備わっていまして、そのおかげで見世物小屋での生活自体には問題はありませんでした。
ですがここで問題となるのが、やはりウォン。
彼がある企みを企てたことから、カタンとトミノの運命がさらに大きく捻じ曲げられていくこととなるのです!!
そして、物語が進むうちに見えてくる、様々な人物の過去。
それはトミノたちにも及んでいき、その残酷な真実も浮き彫りとなって……
今巻は物語が大きくうねり始めたところで終了。
これからどのように物語が動いていくのか、気になりすぎるところで続いていくのです!!

本作の目玉と言えばやはり何と言っても丸尾先生の描く独特の世界。
双子の運命はもちろん気になるのですが、それを彩る丸尾先生の筆は圧巻の一言!
おぞましいものや、ともすれば不謹慎とも言われてしまうような題材を、怪しくも艶やかに描くその筆致に圧倒されてしまう読者も多いはず。
人を選ぶのは言うまでもありませんが、それを乗り越えられる方ならば惹きこまれること必至!
本作のタイトルに惹かれて興味を持った方は、一か八か(?)ご一読していただきたいです!!
……気分を害されるかもしれませんが、そこは自己責任で!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!