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今回紹介いたしますのはこちら。

「エロゲの太陽」第1巻 原作・はまむらとしきり先生 漫画・村正みかど先生 
小学館さんのビッグコミックスより刊行です。

よしきり先生と村正先生は「武礼堂」名義でコンビを組み、95年ごろから活躍されています。
村正先生のいわゆるロリ巨乳的な絵柄を生かした、セクシー系+ドタバタギャグな作風をメインとして、全年齢向けから成年向けまで幅広い作品を手掛けております。

本作は成年向けゲームの業界を舞台にした作品となるのですが、実は両先生、武礼堂名義で成年向けゲームメーカーを経営していたこともありまして。
その経験も生きている、いろいろと興味深い内容なのです!!


菱崎商事企画一課課長、神田太陽。
まだまだ年若い身の上ながら、完全なる実力主義を掲げる超やり手でして、会社に多くの利益を生み出してきました。
ですが出る杭は打たれるとはよく言ったもので、そんな彼をやっかむものも少なからずおります。
失敗する奴は努力が足りないだけ、俺は誰よりも頑張ってる、人生はすべて結果だ。
そんな持論を持つ彼ですから、疎ましく思っているのは下の部下たちよりもむしろ……

ある日、神田は専務と総務部長に呼び出されます。
そこで言い渡されたのは、やってもいない不正の責任をとって、ビルから身を投げろという理不尽極まりない命令でした!!
おそらくさまざまな「証拠」はたっぷり用意されているのでしょう。
ぼやぼやしていれば話のついている守衛などにつかまり、強制的に責任を取らされてしまうでしょう!!
神田はすんでのところで逃げ出すことに成功。
専務たちも「責任を取り終える」までは警察沙汰にはしたくないようで、大っぴらに神田を追うことはしなかったのですが……

家に帰ればすぐに足が付いてしまうでしょう。
やむなく雨の降りしきる電気街をさまよう神田……
失敗するのはいつだって努力不足のせい。
そのはずだったのに……世の中は、自分が考えているほど単純ではなかったのか。
疲れ果てた神田は、立ち並ぶビルとビルの間の細い路地に倒れ込むようにもたれかかり、意識を失ってしまうのでした。

こんなところでどうしたの?かわいそうに、行くとこないんだね。
うちに来る?あったかいよ?
そんな声が聞こえてきて、神田はか細い声で知らないやつの世話になんかなれるか、と反論していたのですが……
その声急に、大丈夫かな、おしっこ漏らしてるよ?などと言うではありませんか!!
これは聞き捨てならないと、漏らしてねーよと叫んで起き上がる神田!!
目の前にいたのはロングヘアーの女性でしたが……その手には小さな黒猫が抱えられています。
どうやら今までのセリフは、すべてこの猫に対していっていたもののようで……
赤恥をかいた神田ですが、彼女はそんな神田に手を差し伸べるのです。
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あたしは月島英理子。
あんたを拾ってやるよ、猫のついででよけりゃね。

自分の会社を手伝えという月島。
とにかく今は路銀が欲しいところですので、神田は彼女についていくことに。
たどり着いたのは秋葉原の雑居ビルの中にある、「株式会社エリコム」なる小さな会社。
促されるままに中に入ってみますと、中にあるのは大きな裸の女性キャラを描いた看板やら、なにやら喘ぎ声を上げている女性が写っているPCやら……
なんとこの会社、
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成年向けゲーム……平たく言えば、エロゲを作る会社だったのです!!

当然今までのノウハウを生かすことなんてできないこの職場では、神田は言われたことをこなすのが精いっぱい。
売り物に写ってはいけない部分に、モザイクをかけるという地味~な仕事を担当することになりました。
なんにせよ真面目で、一刻も早くお金を手に入れた斎木の足掛かりにしたい神田は仕事に打ち込み……モザイク入れの才能がある!と謎のお褒めの言葉までいただいた神田。
ですが飲まず食わずで仕事を終えたその時に、今作っているゲームの出資者が話をしたいと呼び出してきたのです。
いかにも海千山千といった雰囲気を醸し出すその出資者、やはり嫌な話をし始めました。
先日いただいた発売予定ゲームのCG一覧。
そのCGを並べてみると、世界観がバラバラすぎる!!
……実際成年向けゲームは、その作品作品で一つのテーマを決めていることが多いです。
おっぱいの大きいキャラクターばかりのもの、逆に小さい人ばかりのもの。
痛い目にあわせたりあったりするもの、妙齢の女性ばかりが出るもの……
とにかくこの業界、「このシチュエーションで楽しみたい!」というニーズに応える作品作りというのが重要になってくるのです!
どうやらプロデューサーが、シナリオができない苦し紛れに適当なCG依頼を発注していたようで……
そのプロデューサーはすでに失踪。
当然とっつ構えて責任は取らせると出資者は言うのですが……そこはそれ。
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このゲームが完成しなければ、制作会社には報酬を払わない!
……正直言って、普通の業界ならば許されることではありません。
プロデューサーが真っ先に逃げるなんて、詐欺以外の何物でもないでしょう。
ですが月島は言うのです。
この業界には、こういう無責任な屑どもがうようよいるんだよ!と!!
だったらどうするのか?
このバラバラのCGを、一つの形にして発売にこぎつけてやればいい!!
……とはいっても、それは簡単なことではありません。
CGに大幅な手直しをしている時間も予算もありません。
なんとか、最小限の手直しで、一貫性のあるテーマにしなければ……
月島は、神田に諭吉を三枚ほど手渡しました。
バイト代だ、持って帰りな。
こっから先は自分たちの問題だからな。

……神田にできることはもうないかもしれません。
実際彼は、モザイクを入れただけのリンジのお手伝いでしかないのですから……
一緒に仕事で来て楽しかった、というスタッフの言葉を背中に受けながら、その場を立ち去る神田……
これを当座の資金にして、また新たな働き口を探すのが賢いやり方かもしれません。
ですが神田の心の中には、どうしても大きな大きなモヤモヤが残るのです。
ほんのわずかな間とはいえ、自分を拾ってくれた社長、そして一緒に仕事をした仲間たち。
このまま何事もなかったかのように新しい一歩を踏み出していいのでしょうか……!?
神田が選ぶ道は!?


というわけで、はたから見てもドロドロしてるんだろうなぁ、というのがうかがえる成年向けゲームメーカーを題材にした作品である本作。
もちろん多分に脚色はしてあるでしょうし、本作のメインの舞台であるエリコムのように社員全員が美少女の男性向けソフトのメーカーなんてないとは思います。
ですが、それを補って余りある、本作に漂うリアルな香りはどうしたことでしょう!!
やはりメーカーを作って潰した経験のあるはまむら先生、というほかないでしょう!!
この後、漫画ですから劇的な展開が待っています。
その逆転劇がうむカタルシスは非常にスカッとする、そして武礼堂コンビ作品らしいバカバカしく笑える内容となっているのですが……
実際はこういう理不尽なあれで消えて行ったメーカーがたくさんあるんだろうなぁと思うと……なんか、あれですね……!!

そんな熱さ、笑い、リアリティとそろった物語はもちろんのこと、村正先生の各プリティなキャラも見どころです!
月島をはじめとして、作画担当で豊かなお胸を持つ聖美や、企画とシナリオ担当のちっちゃなメガネっ子の遥香などなど、多種多様なニーズに応えるキャラ造形は流石そのもの!!
まだまだスポットライトの名立っていないキャラもいますし、今後のお楽しみはたっぷりです!
そしてゲス度の非常に高い敵役の男キャラも登場し、読者をヒートアップさせてくれること間違いなし!!
キャラも物語も充実なのです!!

ですが、最大の目玉はひょっとするとあとがきのおまけ漫画なのかもしれません。
成年向けゲームメーカーの社長をしていたころの苦く苦く、ひたすら苦くてほんのり楽しかった思い出を赤裸々に描くおまけ漫画はもう、渇いた笑いが……!!
ここまで来ると作中で「大爆死した」というはまむら先生作品をやってみたくなっちゃいますよ!!
もうダウンロード販売もしてませんけど!!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!