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今回紹介いたしますのはこちら。

「忘却のサチコ」第1巻 阿部潤先生 
小学館さんのビッグコミックスより刊行です。

阿部先生は90年にデビュー後、小学館山系の雑誌をメインに活動されている漫画家さんです。
大ヒットとまで言った作品こそないものの、デビュー後から切れ目なく、様々な年齢層に向けた雑誌で活躍し続け、5年にわたる長期連載作品を生み出すなど、確かな実力を持っているベテランなのです!!


さて、本作は最近はやりの食事漫画です。
もはや料理漫画というくくりではなく、食事をするだけの「食事漫画」が一ジャンルとして成立し始めている昨今、工夫がなくては生き延びることはできません!
果たしてこの作品に用意された工夫とは!?


盛大に行われる披露宴。
新婦のサチコは、お色直しのためにいったん控室のほうにはけていきました。
お色直し中、本日はご結婚おめでとうございます、と担当の人に話しかけられるサチコですが、祥子は旅先で出会った3つ年上の会社員の彼と2年間付き合って29歳で結婚、妥当すぎるくらい妥当に、普通のことをしただけなので……と、機械的な返答をするのです!
別にこれは嫌味を言っているわけではなく、サチコの性格から生まれる自然な言葉でして。
堅物、という言葉がふさわしい彼女の持論に基づく持論を淡々と述べただけなのです!

和装に変わったサチコは、ゆっくりと会場へと戻っていくのですが……何やら会場の前で騒ぎが起こっています。
あわただしい感じの渦中にいる母親に事情を聴いてみますと、新郎である俊吾の姿が見えないのだとか……?
サチコは時間がもったいないからと新郎がいないにもかかわらず披露宴を進行しようとするのですが、そこに見慣れない子供が入ってきたではありませんか!
子供はとことこと歩いてきて、これを渡してくれと頼まれた、と言いながらサチコに手紙を渡してきます。
どうやら差出人は新郎の俊吾さん。
おお、ひょっとしてサプライズが仕込んであったのか、と感心した列席の皆様。
その前で幸子は手紙を開き、中を読んでいくのですが……
その文章はこんな内容。
サチコ、すまない。
……ただそれだけです。
どうやらあろうことかこの披露宴の現場で……サチコは、婚約者に逃げられてしまったようなのです……!
サチコは声を張り上げ、言いました。
皆様、大変お見苦しい点があったことをお詫び申し上げます。
ですが入籍は式のあとの予定でしたので、戸籍上は今までと同じで何も問題はございません。
御祝儀もすべて返金させていただく所存です。
本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。

翌日、サチコは普段通りに職場である出版社の文芸雑誌の編集部に姿を見せていました。
前日に新郎に逃げられてしまったとは思えない、いつも通りの仕事をしている……かに見えました。
ですが動揺しているようで、破産である付箋はすべて「俊吾さん」と書かれていて、用紙を閉じるホッチキスの針は、四辺すべてをがっちりと止めてあって、袋とじのように中が見えない状態になっているという始末。
編集長は気を使って、今日はもう帰るといい、2,3日は休んでいいから、とサチコを家に帰すのですが……

サチコは帰り道、私は大丈夫なのに気を使わせてしまった……などと考えながら歩いていました。
ですが、その道すがらによぎるのは俊吾との楽しい思い出ばかり……
その事実に気が付いたとき、道の中央でサチコは崩れ落ちてしまうのです。
もしかして私、俊吾さんに逃げられたことにショックを受けている!?
突然崩れ落ちたことを心配した通りすがりのおばあさんに助け起こされるものの、その肩を借りてもまともに立てないほどで……
自分が受けているショックの大きさを実感したサチコは、普段の無表情からは想像もできない勢いで、人目もはばからず泣きはじめます。
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私、俊吾さんのことこんなに好きだったなんて……

気が付けばサチコは定食屋にいました。
本能的に空腹を察知して手近な店に入ったのでしょう、ほどなくしてサバの味噌煮定食が運ばれてきます。
何の気なしに口に運ぶと……サチコは違和感を感じます。
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サバ味噌って、こんなにおいしかったかしら?
たれの懐かしい甘さと、サバそのものの脂の甘さ。
そして、口の中で一瞬で溶けてしまう、とろんとろんな柔らかさ!
しょうがの聞いたみそだれと、白いご飯の抜群の相性は、サバとごはんの反復作業を止めさせません!
そして、外人が見たら驚くであろう味噌だれに味噌汁と言う重複献立が醸し出す奥深いハーモニー……
ビバ日本、この時間が永久に続けばいいのに……!
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そのあまりのうまさに、忘我の領域に達したサチコ。
その経験と、友人からのおいしいものを食べていればきっと大丈夫だ、という言葉がミックスされ、ある結論に達します。
おいしいものを食べていた瞬間だけは、俊吾さんのことを忘れられていた。
いける、これで行ける!!
……こうして始まったのです。
サチコの、苦い思い出を忘れ去るための……忘却の美食道への第一歩が!!


というわけで、辛い思い出を忘れるために美食の道を歩み始めることとなる本作。
本作の最大の特徴は、なんといってもサチコのキャラクターでしょう!
基本的には堅物で真面目な彼女ですが、もともとちょっとずれたところもあった彼女。
それがこの破局をきっかけに、その天然ボケは一層加速!!
時としてその真面目さと天然さが合わさってとんでもない出来事を巻き起こしたり巻き起こさなかったり!
サチコのちょっとずれた奮闘をお楽しみください!!

そして本作の主題であるお食事のほうもばっちり。
トルコライスやらわんこそばというご当地色の強い料理も、編集者と言う立場をうまいこと使って(?)実食。
彼女なりのこだわりを持って、俊吾のことを忘れられる食事を目指していくのです!
特にさんまのくだりは試してみたくなること必至!!
おいしそうな描写だけでなく、豆知識的な要素もたっぷりと用意されています!!

さらに気になるのは俊吾の行方。
このまま登場しないで終わるわけはないでしょうが、よりを戻したりすればお話自体が終わってしまいます。
ですがなぜ俊吾が姿を消したのかは非常に気になる所!!
果たしてそのあたりが明かされることはあるのか!?
こっちのほうも見逃せませんよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!