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今回紹介いたしますのはこちら。

「ダンジョン飯」第1巻 九井諒子先生 
エンターブレインさんのビームコミックスより刊行です。

九井先生は同人やネットで作品を発表していた漫画家さん。
11年ごろから商業誌で活躍をはじめ、13年に発表した短編集「ひきだしにテラリウム」は、その独自の世界観で多くのファンの心をつかみました!

さて、本作は昨今大ブームとなっている料理漫画です。
ありとあらゆるシチュエーションや主人公なんかが出尽くした、かにもおもえたこのジャンルですが、本作はもう発想の第一歩から変えてきました。
シチュエーションから食材まで、すべてがファンタジーな世界観……
よくあるファンタジー的な世界でのお食事にスポットライトを当てた作品なのです!!


経験を積んだ、ベテランの域に達し始めた冒険者の一団。
迷宮の奥に住まうという「狂乱の魔術師」まではあと少しを残すところとなりました。
そんな彼らの前に立ちはだかったのは……巨大なドラゴンです。
強力なモンスターではありますが、準備は万全。
負ける要素はない、と、言いたいところだったのですが……
一つ気がかりなところがありました。
ここまでたどり着く前にかかったトラップや、マッピングミスによる時間の浪費によって、食料が尽きていたのです。
そう言えば、空腹のためかメンバーの動きも精彩を欠いているような。
ドラゴンを倒したら、一回引き返すべきだ。
リーダーのライオスはそんなことを考えていたのですが、その瞬間のことです。
突如後ろから。ライオスの妹であるファリンが突き飛ばしてきたではないですか!
一体何事かと後ろを振り向くと、
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最愛の妹は……ドラゴンに食われてしまっていて……!!
しかも気づけば、パーティーの他のメンバーも総崩れに。
まさかこのダンジョンの最深部で、全滅……!?
寒気を感じるライオスですが、そこでファリンは最後の力を振り絞り、脱出魔法を唱えてくれたのでした!!

……気が付けば、ライオスは草原の上で大の字になっていました。
ですが、ファリンの姿はありません。
ドラゴンに食われていた為、脱出魔法が効かなかったのでしょう……
ライオスはすぐに救出に向かおうとしたのですが、ここで問題が起きていることに気が付きます。
荷物をすべてダンジョン内に置き忘れてしまったために無一文。
さらに6人だったライオスのパーティーから、こっちも生活が懸かっているからと別のパーティーに惹き抜かれて2人出て行ってしまい……
ダンジョン探索はお金がかかります。
仲間の雇用費、装備代、日用品代、食費……
無一文になっては、すぐに立て直すのが難しいわけです。
ですがあまり時間も残されていません。
冒険者がダンジョンで命を落としても、その亡骸を持って蘇生呪文をかければ生き返ることができます。
「みじん切り」までは蘇生した例があるのですが……消化された後のアレから蘇生、するのでしょうか!?
ライオスは、残ってくれた二人の仲間に、一旦パーティーを抜けないかと提案してきました。
その二人の装備を売れば、自分一人で装備の質を落とさずにダンジョンに潜ることができる。
一人で戦いを避け、最深部に行くというのは不可能ではないはず。
自分の判断ミスで起きたことなのだから、二人まで危険にさらすわけにはいかない……
ですが残った二人の仲間、魔法使いのマルシルと鍵師のチルチャックは言うのです。
自分たちの力が必要だろう?絶対についていく、と!!
そんな仲間の心強い言葉を聞いたライオスは、素直に感動し……
二人にこういうのです。
本当に、どんなことがあろうとも、俺についてくる意思があるんだな……?
その顔は、今まで見たこともない真剣な顔で……

ライオスの考えていた作戦はただ一つ。
食料は、現地調達をする。
……ダンジョンに多種多様な生物がいるということは、生態系ができているということ。
肉食の魔物が草食の魔物を食べ、装飾の魔物は植物を、植物は光や水を……
それならばそこで人間も「食っていける」はず!!
植物だろうと魔物だろうと、食べられそうなものは何でも食べる!!
とんでもない提案に仰天するマルシルですが……ライオスがまずこれから行こうとばかりに捕まえたものが、歩く巨大キノコ型モンスターだったからたまりません!
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思わず「ヤダー!」と絶叫してしまうマルシル!!
そんなことはお構いなく、ライオスは「迷宮グルメガイド」などと言うやたら読み込んだ形跡のある本を片手に、さらなる食材を探しに行く始末で……
捕まえてきたのは、小型犬ほどもある大サソリ。
これらを調理しようというのです!!
なんとライオス、前々から魔物に興味津々でして。
やがて姿や鳴き声、生態などでは飽き足らず、味も知りたくなっていたとのこと。
実はこの作戦、追い詰められての苦し紛れの一手ではなく、渡りに船とばかりの公私混同(?)の一手だったようで……

巨大キノコを盾に先、サソリを捌いて。
とりあえずオーソドックスに煮てみよう、と雑に煮始めるライオス。
食べても害はないらしい大サソリの毒の詰まった尻尾からかじってみるのですが……
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あっさりリバース。
魔物食の道は険しい、と思い知らされたその瞬間のことです!
なんだかいかついドワーフのおっさんが三人の前に現れまして、こんなことを言い出すのです。
大サソリを食べるときは、はさみ、頭、足、尾は必ず落とす。
身にも切れ込みを入れておくと、だしもでるし熱も通りやすい。
キノコは尻と表面3センチを捨て、足に当たる部分のキノコは美味しいからすべて入れる。
さらに自前の大鍋を持ってきて煮込みはじめ……
このドワーフはいったい何者なのでしょうか。
まさか、こんなすぐ近くに魔物食の先人が……!?
3人は思いもしなかったでしょう。
この出会いが、長く険しいダンジョングルメの第一歩だということを……!!


というわけで、お金のなさをカバーするために生み出されたダンジョン飯を探求していく本作。
舞台もなら登場人物も架空の職業、食べるモノまでもが架空と言う思い切った構成となっています!
美味しそう、とはあんまり思えない食事も多いですが、なかなかどうして味が気になる料理も続々登場してくれます。
魔物なんてとてもとても、ゲテモノとしか思えない!と言う読者も多いでしょう。
ですがそう言う視点に立ってくれるマルシルさんもいらっしゃるのでご安心を!
マルシルはその女子力を保つことができるのか、はたまた空腹に負けて舌鼓を打ってしまうのか!?
奥深き魔物食、その無限の荒野は果たしてどこまで続いているのでしょうか!!

……で、忘れてはいけないのが妹さんの現状。
ライオスさん、夢がかなったためなのか、若干妹さんへの心配が薄いような……?
果たして妹さんを無事に助けられるのか、魅惑の魔物食にとらえられてしまうのか!!
そちらのほうも忘れず見守っていきましょう!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!