今回紹介いたしますのはこちら。
「あもくん」 諸星大二郎先生
角川書店さんの幽コミックスより刊行です。
さて、本作は諸星先生が「幽」にて10年以上にわたって連載していた連作短編を集めた一冊です。
諸星先生作品と言えば伝奇要素や歴史要素を含んだものが多いのですが、本作は現代日本を舞台に、オカルティックな要素をが全面的に押し出された作品なっています。
タイプとしては「栞と紙魚子」シリーズに近いのですが、本作はよりホラー要素が色濃く出ているのです!
最初から、気は進んでいませんでした。
ですが、奥さんの妹一家も一緒に行く、と言うため、お父さんは重い腰を上げ、奥さんと子供を連れてキャンプにやってきたのです。
お父さんの子供は、守(まもる)と言う名前です。
ですが彼の年下の従姉妹は、「あもくん」と発音していました。
あもくん遊ぼう、と盛んに声をかける従姉妹の子。
ですがあもくんは携帯ゲームに夢中で、やだ!の一点張り。
守は朝からこんな感じです。
そもそもキャンプに乗り気ではなかったようで、出かける間際までなんだかんだとごねていたのです。
お父さんは、ボートにでもなるかと声をかけたのですが、乗らないと冷めた返事。
お母さんに、せっかく来たんだからゲームばっかりしてないの!と叱られ、ようやく重い腰を上げたのです。
何で従姉妹の子と遊ばないのか?
キャンプ嫌いか?
あとでみんなで花火もするぞ。
様々な質問を投げかけても、守の返答は「別に」とか、「ふーん」とかのどうでもいい感じの返答ばかり。
しばらく歩いているとキャンプ場の案内板を見つけた二人。
子供の広場と言うのがある、大きな滑り台があるらしいぞ、面白そうじゃないか。
そう声をかけてみても、行かないの一点張り。
ただでさえ気分の重いお父さん、この返答でさらに気が重くなっていくのです……
当てもなく歩いていると、二人は「ととろの森」を見つけました。
……が、よく見てみると看板に書いてあったのは「ことろの森」。
なんだかわかりませんが、行ってみようかという質問に、初めて肯定的な答えが返ってきたため中に入ってみることにしました。
ですがそのことろの森、行けども行けども暗い切通しが続くばかり。
別に何にもないな、何なんだろう、トトロの森のパクリかな?
そんなことを呟いていますと……
ねえお父さん、ことろって「子取ろ」なんじゃないかな。
そう言う歌があるでしょ?
子取ろ子取ろ、どの子を取ろか、あの子を子取ろ、取るなら取ってみろ、子ー取ろ子取ろ……
夕闇に響く、不気味なうたごえ……
お父さん、もう帰ろ。
その提案を断る理由はありません。
お父さんは、そうだな、もうこんな時間か、きっとみんな夕食の支度をしてるよ、帰ろう。
そう言って、来た道を引き返すのです。
ですがいつの間にこんなに歩いたのか……なかなかみんなのもとへ帰りつきません。
お父さんのぼやきが一層疲れを増幅させたのか……最初はお父さん道わかる?などと声をかけてきましたが、やがて疲れたとうなだれだし……
お父さんはおんぶしてあげました。
皆もう夕食食べちゃったかな?携帯を忘れてきちゃったから、心配してるだろうな。
……子供を背負って歩いていると、不意にもの寂しさに教われるお父さん。
ことろの森って何だったんだろうな?
明日、みんなで言ってみようか?
でも大したものじゃないかな、明日は展望台に行くって言ってたしな……
答えは何も帰ってきません。
疲れ果てて眠ってしまったのでしょうか。
重くなったなぁコイツ、としみじみしながら歩き続けますと……ようやくキャンプ場が見えてきました。
いつの間にか火はととっぷりと暮れてしまっています。
みんな待っているだろうなぁ、と言う予想通り、自分の姿を見た家族たちは帰ってきた帰ってきた、と口々に語り合っています。
もうご飯は食べ終わって、花火をしているようで。
近づくつれ、家族たちの談笑の声がはっきりと聞こえてきます。
あもくん、あもくん。
あもくん、私もやる!
あもくん……?
あもくんが、花火をしています。
どこへ行ってたの?と声をかけてくる奥さん。
ごめん、と謝った後……お父さんは尋ねました。
ところでさ、僕がおぶっているの、誰?
というわけで、お父さんとあもくんを中心にした日常を描いていく本作。
本作はこの第1話にあたる物語のような雰囲気で、淡々と二人の毎日を描いていくのです。
この淡々、と言うのが本作の最大の持ち味でして……
ギャッと叫ぶような怖いお話はありません。
その代り、ヒッと思わず声が漏れるような、ゾクゾクと背筋に悪寒が走るような、静かな恐ろしさが売りなのです!!
当たり前のように、怪異がすぐそこにいる。
そんなお話を、諸星先生ならではの夕暮れと、魔の息遣いが感じられる筆致で描いていきます!!
それでいて、もう一つの持ち味であるユーモラスな味わいもそこかしこに用意。
読めば読むほど味わい深い、諸星先生のホラーワールドを満喫できる内容になっていますよ!
さらに書きおろしで、短編の児童文学風恐怖小説を6編、超短編「ゆびさき怪談」を18編収録。
本編もショートストーリーが19編用意されていますし、実に様々な恐怖がより取り見取りで楽しめるのです!!
今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!
「あもくん」 諸星大二郎先生
角川書店さんの幽コミックスより刊行です。
さて、本作は諸星先生が「幽」にて10年以上にわたって連載していた連作短編を集めた一冊です。
諸星先生作品と言えば伝奇要素や歴史要素を含んだものが多いのですが、本作は現代日本を舞台に、オカルティックな要素をが全面的に押し出された作品なっています。
タイプとしては「栞と紙魚子」シリーズに近いのですが、本作はよりホラー要素が色濃く出ているのです!
最初から、気は進んでいませんでした。
ですが、奥さんの妹一家も一緒に行く、と言うため、お父さんは重い腰を上げ、奥さんと子供を連れてキャンプにやってきたのです。
お父さんの子供は、守(まもる)と言う名前です。
ですが彼の年下の従姉妹は、「あもくん」と発音していました。
あもくん遊ぼう、と盛んに声をかける従姉妹の子。
ですがあもくんは携帯ゲームに夢中で、やだ!の一点張り。
守は朝からこんな感じです。
そもそもキャンプに乗り気ではなかったようで、出かける間際までなんだかんだとごねていたのです。
お父さんは、ボートにでもなるかと声をかけたのですが、乗らないと冷めた返事。
お母さんに、せっかく来たんだからゲームばっかりしてないの!と叱られ、ようやく重い腰を上げたのです。
何で従姉妹の子と遊ばないのか?
キャンプ嫌いか?
あとでみんなで花火もするぞ。
様々な質問を投げかけても、守の返答は「別に」とか、「ふーん」とかのどうでもいい感じの返答ばかり。
しばらく歩いているとキャンプ場の案内板を見つけた二人。
子供の広場と言うのがある、大きな滑り台があるらしいぞ、面白そうじゃないか。
そう声をかけてみても、行かないの一点張り。
ただでさえ気分の重いお父さん、この返答でさらに気が重くなっていくのです……
当てもなく歩いていると、二人は「ととろの森」を見つけました。
……が、よく見てみると看板に書いてあったのは「ことろの森」。
なんだかわかりませんが、行ってみようかという質問に、初めて肯定的な答えが返ってきたため中に入ってみることにしました。
ですがそのことろの森、行けども行けども暗い切通しが続くばかり。
別に何にもないな、何なんだろう、トトロの森のパクリかな?
そんなことを呟いていますと……
ねえお父さん、ことろって「子取ろ」なんじゃないかな。
そう言う歌があるでしょ?
子取ろ子取ろ、どの子を取ろか、あの子を子取ろ、取るなら取ってみろ、子ー取ろ子取ろ……
夕闇に響く、不気味なうたごえ……
お父さん、もう帰ろ。
その提案を断る理由はありません。
お父さんは、そうだな、もうこんな時間か、きっとみんな夕食の支度をしてるよ、帰ろう。
そう言って、来た道を引き返すのです。
ですがいつの間にこんなに歩いたのか……なかなかみんなのもとへ帰りつきません。
お父さんのぼやきが一層疲れを増幅させたのか……最初はお父さん道わかる?などと声をかけてきましたが、やがて疲れたとうなだれだし……
お父さんはおんぶしてあげました。
皆もう夕食食べちゃったかな?携帯を忘れてきちゃったから、心配してるだろうな。
……子供を背負って歩いていると、不意にもの寂しさに教われるお父さん。
ことろの森って何だったんだろうな?
明日、みんなで言ってみようか?
でも大したものじゃないかな、明日は展望台に行くって言ってたしな……
答えは何も帰ってきません。
疲れ果てて眠ってしまったのでしょうか。
重くなったなぁコイツ、としみじみしながら歩き続けますと……ようやくキャンプ場が見えてきました。
いつの間にか火はととっぷりと暮れてしまっています。
みんな待っているだろうなぁ、と言う予想通り、自分の姿を見た家族たちは帰ってきた帰ってきた、と口々に語り合っています。
もうご飯は食べ終わって、花火をしているようで。
近づくつれ、家族たちの談笑の声がはっきりと聞こえてきます。
あもくん、あもくん。
あもくん、私もやる!
あもくん……?
あもくんが、花火をしています。
どこへ行ってたの?と声をかけてくる奥さん。
ごめん、と謝った後……お父さんは尋ねました。
ところでさ、僕がおぶっているの、誰?
というわけで、お父さんとあもくんを中心にした日常を描いていく本作。
本作はこの第1話にあたる物語のような雰囲気で、淡々と二人の毎日を描いていくのです。
この淡々、と言うのが本作の最大の持ち味でして……
ギャッと叫ぶような怖いお話はありません。
その代り、ヒッと思わず声が漏れるような、ゾクゾクと背筋に悪寒が走るような、静かな恐ろしさが売りなのです!!
当たり前のように、怪異がすぐそこにいる。
そんなお話を、諸星先生ならではの夕暮れと、魔の息遣いが感じられる筆致で描いていきます!!
それでいて、もう一つの持ち味であるユーモラスな味わいもそこかしこに用意。
読めば読むほど味わい深い、諸星先生のホラーワールドを満喫できる内容になっていますよ!
さらに書きおろしで、短編の児童文学風恐怖小説を6編、超短編「ゆびさき怪談」を18編収録。
本編もショートストーリーが19編用意されていますし、実に様々な恐怖がより取り見取りで楽しめるのです!!
今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!
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