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今回紹介いたしますのはこちら。

「じごくあね」第2巻 吉田丸悠先生 

小学館さんのサンデーGXコミックスより刊行です。

さて、事故で意識を失った後、まるでおっさんのような人格になってしまった真尋。
真尋の弟である宏樹はそんな姉に振り回されながらも、なんだかんだ仲良くやっていたのですが……?


突然宏樹と真尋のもとに尋ねてきたお隣の変態さん、佐伯。
ちょっと……いや、だいぶ引くくらいのテンションで真尋にアプローチをかけ続ける彼ですが、今回は珍しくまっとうな話題を持ち掛けてきます。
それは、記憶を取り戻したくないか?というもの!
佐伯の父の知り合いで、脳科学を研究している人がいるそうでして、記憶の喪失、混濁に詳しいのだそうです。
もし気が向かなければいいんだけど、という佐伯の提案を……いいわ、と受け入れる真尋。
さっそく放課後にその人がいるという大学に行くことになるのですが、真尋が本来の記憶を取り戻すということは、今真尋の体を動かしているおっさんっぽい人格が消えるということではないでしょうか。
真尋はどう思っているのか……宏樹はその顔をうかがうのですが……
真尋は足を止めて様子をうかがっていた宏樹を殴り、早くしないと燃やすぞバカ、といつもの調子で家を出ていくのでした。

放課後。
例の脳科学を研究しているという人物ですが……脳科学者というわけではありませんでした。
超常現象研究会の鳳と名乗る女性、宏樹よりもちっちゃい身長で、腰まで伸びた長髪で表情も読めないミステリアスな人物。
幽霊、呪い、UFOといったものの9割は脳科学で説明できる絵空事だ、でもいるかもしれないいてほしい!と自己紹介がわりに絶叫する鳳さん……ちょっとお近づきになりたくない感じですが……ともかく本題に入ってはくれました。
記憶を失ったのはいつなのか、どのくらいのことを覚えているのか、と質問を始めます。
そして鳳は、宏樹一人にいろいろ聞いてみたい、と真尋と佐伯を退席させました!!
意外に鳳はしっかりした人物で、宏樹の様子がおかしいことに気が付いていて……

二人きりになると、さっそく鳳は切り出します。
何か、秘密を持っているね?
……いきなりズバリと斬り込んできた鳳、だからこそ宏樹は信頼できると考えたのかもしれません。
意を決し。打ち明けたのです。
姉には、別の人間が入り込んでいるんです。
最初は俺も信じられませんでした、でも一緒にいるうちに確かにそう思えてきて……
でも、疑わしい部分もあるんです。
楽しそうに服を選んだり、胸の小ささを気にしたり。
まるで、姉が他人を演じながら、やりたいことをしているような……
それを聞いて鳳はうなずき、一つの例を上げました。
多重人格の実例は少なくない、その原因として多いのは、「抑圧」だ。
家庭や社会で抱え込んだストレスによって、別の人格を作り上げてそいつの行動によって解消する。
真面目で控えめな人に起こりやすいんだ。
……思い当た理すぎるくらい、思い当たります。
まさにそれは、真尋のことを言っているかのようで……
鳳は、真尋のそれは意識的なものか無意識的なものか、はたまた本当に誰かが入り込んでいるかはわからない、と結論は出しませんでした。
が、一応気休めはしておこう、と……なんか怪しげな儀式をし、これでお姉さんの記憶も戻るでしょう、多分、と無責任な言葉とともに一同を送り出すのです。
なんでも話においで、と笑顔で手を振りながら。

帰り道。
いつの間にか真尋はいません。
なんでも作りたいものがあるとかで、先に帰ったんだそうです。
期せずして佐伯と二人で家に帰ることになった宏樹。
今日はありがとう、でもこれ以上迷惑をかけたくないからもうここまでしてくれなくてもいいよ、と声をかけるのですが、佐伯から帰ってきたのは意外なほど強い返事でした。
お前は真尋の記憶が戻らなくでいいのか?
このままでも折れの気持ちは変わらないが、これじゃ今までの思い出全部がなかったことになるんだぞ。
小さいころの俺も、赤ちゃんだったお前も、同じくらいだった真尋も、アイツの中にはいないんだ。
……俺はイヤだ。
佐伯が初めて垣間見せた、本当の気持ち。
その言葉は、宏樹の心を少なからず動かすのです。

家に帰りつくと、真尋が木の枝で作ったムチで攻撃してきました。
最近いろいろやっても反応が薄いから作ってみた、と笑う彼女ですが、その木の枝が何の枝なのかを聞いた宏樹は、とたんに顔色を変えるのです!!
宏樹が家を飛び出すと、玄関横に植わっていたアジサイが根元から切り取られていました。
それを見た宏樹は、今までに見たこともないくらい、絶望したかのような表情を浮かべていて……
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何も言わず、自分の部屋に駆け込んでいく宏樹。
そこにちょうどお母さんがやってきまして、そのアジサイのことについて言及してきました。
病気してたから、可愛そうだけど処分した、と答える真尋ですが……お母さんもまた寂しげに言うのです。
残念ね、あのアジサイ
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真尋が生まれた年に植えたのにね。

小さいころの俺も、お前も、真尋も、アイツの中にはいないんだ。
佐伯のその言葉を反芻し、夜を過ごした宏樹。
やがて朝になり、朝食の時間になったのですが……真尋は食卓に現れません。
やむなく宏樹が起こしに行くと……真尋は蒲団にくるまった状態でベッドに腰掛けていました。
そして、浩樹に尋ねてきたのです。
今、何月?
私、何で……家に……?
この反応は……ひょっとして……本来の、人格が!?
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というわけで、2巻にして早くも物語が大きく動いた本作。
ここで急に記憶を取り戻した真尋ですが、それが意味するものは何なのでしょうか。
やはりきっかけとなったのはアジサイの件でしょう。
アジサイを切ってしまい、そのことにショックを受けた宏樹を見たことがきっかけで人格交代が起こった……?
すると少なくとも、本来の姉がおっさんぽい人格をただ装っているだけ、というセンは消えました。
するとあのおっさんぽい人格は、やはり姉の抑圧された経験がうみだしたものだったのか、本当にどこかの誰かが入ってきたものなのか?
そこが明かされるのはまだ先のようですが……
少なくともこの事件が、姉の人格についての謎を解く一つのカギとなり、また今後の展開を左右する変化をもたらしたのは確実。
果たしてこれから物語はどうなっていくのか?
普段のギャグ的な日常ももちろん楽しみではあるのですが、軸となる本筋のほうも目が離せなくなってきましたね!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!