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今回紹介いたしますのはこちら。

「百人の半蔵」第1巻 横尾公敏先生 

秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックスより刊行です。

横尾先生は、ゲーム制作やデザイナー、編集プロダクションなどのサラリーマン経験を経て、07年にコミックリュウさんの第1回竜神賞を受賞、07年より受賞作をベースにした「ロボット残党兵」で連載デビューをされました。

さて、本作はファンタジー要素のある時代劇です。
奇抜な設定と、圧倒的勢いで描かれる本作、果たしてその内容は!?


1702年、能登国。
群がる忍達を、「秘剣・仏斬り」なる技で蹴散らしていく剣士がいました。
戦いが終わった後は、あたり一面屍の山。
刀を収める剣士のもとに、このあたりに住む住人が駆け寄り、口々にお礼をし始めます。
この忍達に苦しめられていた住人達……ですが、剣士は彼らを助けたくて戦ったわけではありません。
弱いものをいたぶるクソにムカついて殺しただけだ。
そう言い放つ剣士に、それでも自分たちのようなものを助けてくれる方がこの世にいるなんて本当にありがたい、お名前だけでも教えてくださいと住人達はお願いしました。
すると剣士は、名乗るほどの名じゃない、と前置きしておきつつ、思いきり名乗ってくれました。
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あの世と無縁の最強の男、極楽浄土無縁之助だ!!

かつて生きていた、100の技を持つ最強の忍・服部半蔵。
その強さは、あまりの規格外のためにすべてを受け継ぐものが現れず、半蔵は100人の忍を自らの手で育て、それぞれに一つずつ技と、「半蔵」の名前を授けました。
そして生まれた100人の半蔵!
100人の半蔵はやがてその野心を暴走させ、老いた服部半蔵を殺害、徳川幕府に戦を仕掛けます。
1682年に巻き起こった「半蔵の乱」。
その戦に敗れた幕府は家族・血縁に至るまで処刑され、半蔵たちがこの国の実権を入手。
半蔵たちはそれぞれ国をおさめたり、好き勝手に暴れまわったりと好き勝手な行動をとるのでした。
今やこの日本は半蔵たちの欲望を満たすおもちゃ箱も同然。
そのおもちゃ箱で決められたルールはたった一つ。
弱き者どもは、クズ!!

能登は「首屋の服部半蔵」によって支配されていました。
首屋はその名の通り、首をこよなく愛する男。
自らの収める国の住民たちに重税を課し、おさめられないようならば容赦なく首を切る。
そうでなくとも、気が向区だけで首を切る……
今日も数え切れないほどの人間が、首切り場に送られます。
そして罪もない住人達が、次々に首を落とされる姿を見ながら酒を飲み、自作の「首切り場の歌」を歌って満悦の表情を浮かべる首屋……
今日も首屋が人間の首で築かれた、首城は、新たな首を得て巨大化していくのでした。

首城、南の城壁で一人の少年が兵士たちに蹴り飛ばされていました。
彼が抱えているのは、彼の父親の首。
首屋のコレクションから取り戻し、せめて体と一緒に埋葬してやろうとしたのですが、見つかってしまいリンチにあっているということのようで……
どれだけ蹴飛ばされても父の首を放さない少年。
兵士たちがとうとう刀を取り出し、お前の首もはねてやろうかとすごんだところで……そのすごんだ兵士の額に深々と釘が突き立てられたではありませんか!!
その付き立った釘が何なのか理解する前に、その男の顔面に無数の釘が突き立ち、兵士は倒れます。
ガキを置いて消えな、テメーらクソ!ムカつくんだよ。
そう言って現れたのは、釘を放った男……無縁之助!
その男に向かって、俺たちを首屋様の忍と知っての狼藉か、と残った兵士たちはいきり立つのですが……
無縁之助は、クソ半蔵の忍とは、道理でクソ臭いやつらだと思ったぜ。
消えろ、俺と相棒(クギ)は鉄分は多いガキは短いんだ!!
まったくひるまずそう言い放つ無縁之助に向かって、いよいよ戦闘態勢を取る兵士たち……
それを確認した無縁之助、手にしていた釘の一本を、閉じられたままの自らの左目にグイグイ押し込み、挟み込んだではありませんか!!
その姿を見て、兵士たちはあることを思い出します。
あのクギ、飛騨国の半蔵を襲ったという変態剣士なんじゃないか?と。
無縁之助、変態ということには異論がある様で、こいつには意味があると説明し始めます。
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俺はスリルを感じるほど強くなるんだ。
こいつを指して戦うと、普通以上のスリルを味わって俺は最強になる。
この釘が押されると、脳みそにぐさりと刺さるから……
そこまで言うと、自分から説明を始めた癖に説明なんてめんどくさいと叫び、忍に切りかかったではありませんか!!
相手は兵士とはいえ、あの半蔵の部下である忍。
普通の剣士ならば到底太刀打ちできない実力を持っているのでしょうが、無縁之介は一呼吸で二人の忍を惨殺!!
唯一残った一人の忍は、強い、と呆然とつぶやくしかなかったのです。
無縁之介は、てめえらが弱いんだ、スリルも感じねえとこき下ろし、自らの目に刺さった釘を指ではじきました。
そしてその釘を指し、さっき言ったろ、こいつを押すんだよ、こいつをグサッと、俺を軽く殺せるって言ってるだろ、と挑発めいた言葉をはくのです!!
残った兵士がバカにしやがってと怒り狂うのも無理はないでしょう。
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そんな男を、一刀のもとに切り捨てる無縁之助!!
その様子を見ていた少年は……呆然と立ち尽くしたまま、こういうしかありませんでした。
剣術はめちゃくちゃなのに、なんであんなにスゲー強いんだ……!


というわけで、無縁之助VS100人の半蔵の戦いが繰り広げられる本作。
本作の目玉はなんといってもその圧倒され力強い画で描かれる迫力のバトル。
それぞれとんでもない能力を持つ半蔵を、これまたとんでもない胆力と、一撃必殺と言っても過言ではない必殺の仏斬りで打ち砕いていく……
そんな一撃で決着が突くような戦いながら、決して圧勝というわけではない圧巻のバトルが楽しめるのです!!
そして繰り広げられるのは単純なバトルだけではありません。
この第1巻ではやくも、剣が登場しないバトルが繰り広げられます!!
そのバトルは……なんと、将棋!!
命を懸けた将棋、と言うとんでもない戦いまで用意されていまして、毎回無縁之助が必殺技で蹴散らしていく、というだけではない度肝を抜く展開が楽しめるのです!!

さらに物語には様々な仕掛けが施されています。
この第1巻ではやくも、無縁之介に体に隠された謎と、そのあの世に無縁とまで言いきれる力の源が明かされます。
ですが、まだまだこの後描かれていくであろう謎がたっぷりよういされているのです!
最強とうたわれた初代服部半蔵、その彼すらも翻弄したある人物の存在。
無縁之介が相棒と言い切る、釘の謎。
地下に潜み、打倒半蔵の旗印のもとに暗躍をつづける地下幕府。
なにやら無縁之介の廻るをうろちょろし始める三人の男女。
そして、半蔵たちに激しい恨みを抱く、無縁之介の過去……
圧巻のバトル、ところどころに挟まれるユーモア、そして気になる物語。
ちょっと絵柄でとっつきづらさは感じるかもしれませんが、はまれば癖になること間違いなしの内容なのです!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!