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今回紹介いたしますのはこちら。

「兄妹 少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿」第1巻 木々津克久先生 

秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックスより刊行です。

さて、前作「名探偵マーニー」を完結させた木々津先生。
続けて探偵ものを連載開始しました。
「マーニー」ではしっかりとした探偵もので、全くないわけではありませんでしたが、オカルト要素はほとんど存在しない作品。
ですが本作は、バリバリオカルト要素を満載!!
霊的なものと、人間の起こす事件、その両方の要素を混ぜ込んだホラーサスペンスなのです!!


赤木蛍、高校一年生。
彼女はあまり裕福でない家に生まれ、工場を経営する父と、夜の仕事をする母をサポートし、妹や弟の世話をしながら綏靖選択を行わなければいけない忙しい毎日を過ごしています。
そんな状況でもしっかしと勉強に励み、見事推薦でミッション系名門校に入学しました。
彼女の目下の悩みは、兄のこと。
兄、圭一は妹から見てもイケメンで、文武両道、誠実な性格の持ち主で大学卒業後警察官になりました。
警察でも評価は高く、将来を有望視されていたのですが、ある日突然消えてしまいます。
交番勤務を終え、リョウに戻るといったきり、そのまま……
警官の突然の失踪は当時注目され、TVなどでも取り上げられました。
そんな状況もあって、100人態勢での操作も行われたものの手掛かりすらつかめず。
その後リョウの部屋から遺言めいたものが見つかり、自殺ではないかと言う見方が強まっていき……
蛍たち家族は死体もないのにと納得しませんでしたが、次第に操作の規模は縮小……実質的に打ち切られてしまったのです。
が、蛍が今頭を悩ませているのは、消えた兄のことではないのです。
蛍は知っているのですから。
今、圭一は自分のすぐそばにいることを!!

2か月前のことです。
もうすっかり習慣となった、兄の情報を求めてのビラ配りを駅前でしていた蛍たち。
すると、妹がトイレに行きたくなってしまい、蛍が連れていくことになりました。
妹をトイレに連れていき、個室の前で待っていますと、中から手伝っての声が。
もう6歳なんだから手伝ってじゃないよと最初は断る蛍でしたが、妹が泣きはじめてしまったのですからそうもいきません。
やむなく手伝うよ、とトイレのドアを開けると……そこには、
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妹のすぐ後ろにおぞましい骸骨が立ち、手を伸ばしてきているではありませんか!!
信じられない光景ではありますが、危険を感じた蛍はとっさに妹を抱き寄せます。
ですがもう一度トイレの中を見てみると、そこには何もおらず……
気のせいかな、と気を取り直した蛍、骸骨発見時に思わず声を上げてしまっていた為、使用中になっている隣の個室にお騒がせしてすみませんでしたと声をかけました。
すると……その個室の下の隙間から、カメラのレンズが覗いていることに気が付きます。
蛍は落ち着いて静かにトイレを出て警察に通報。
案の定、その個室の中には盗撮目的の変質者が潜んでいて、無事逮捕されたのでした。
骸骨見える上に変質者まで。
怖いトイレだ、と蛍は思ったのですが……

その帰り道のことです。
電車の中でうとうととしていますと、どこからともなく懐かしい呼び声が聞こえた気がします。
あれは何だろう、とうつらうつらとしている間に降りるべき駅を通り過ぎてしまいました。
慌てて引き返し、家についたころにはもう夜。
母はばっちりおめかしをしてお仕事に出かけるところでした。
やっと一休み、と言いたいところですが、蛍はこれからおさんどんをしなければいけません。
子守りやら洗濯やら夕飯の用意やらを済ませれば、もう日はとっぷりと暮れてしまい……
屋上の柵にもたれかかり、ため息をつく蛍。
疲れ切った体、そんなとき頭をよぎるのはやさしくていつも自分を助けてくれた兄のことでした。
あにが生きていたなら、私は……
その時です。
蛍、と呼ぶ声がはっきりと聞こえたのは!
声のほうを見てみると、そこにはあの時の骸骨が現れ……何かを呟くではありませんか!
これは何だ、幽霊なのか。
驚いたほたるは思わず後ずさりをすると……その時、大きな地震が起こったのです!!
洗濯物は倒れ、屋上の柵は歪んで倒れてしまいました。
かがみこんで頭を抱え、おびえる蛍。
そんな蛍に、大丈夫だ、蛍、と懐かしい兄の声が聞こえてくるのです。
自身が収まった後、その声がするほうを見てみると……先ほどの骸骨が、自分に覆いかぶさるようにして立っているではありませんか!!
一体何なんだこの骸骨は、と思い起こしてみる蛍。
そう言えば、トイレではこの骸骨が現れたおかげで隣の変質者から逃げられた。
今の地震だって、驚いて柵から身を引かなければ、柵もろとも転落していたかもしれません。
覆いかぶさっていたのも、幽霊だから実際にそれができるかどうかは別問題として、落下してくる破片から守るためなのかもしれない。
そして改めて見てみると、この骸骨が着ているのは、警察の制服。
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ひょっとして、この骸骨……兄なのでしょうか!?

翌日から、兄、圭一は蛍の周りに常にいるようになりました。
圭一は、自分がおそらく死んで幽霊になっているという事実が受け入れがたいようで。
末っ子の赤ちゃんや、可愛がっていた弟や妹に見えない存在になっていて、自分から触れもしないことに少なからずショックを受けています。
これは悪い夢だ、きっと夢なんだ。
でなければ……
圭一が気が付いたとき、森の中にいたと言います。
家に帰りたい、その一心で歩いていると、暗闇の中で一人、ホタルのように輝いていたのが蛍だったのです。
夜の闇が暗いのは、死者がこの世を覆うから。
世界は使者で覆われ、生きているものを呪う。
だから夜は怖い……その中で、お前だけは明るい、明るいんだ、蛍……
そう絞り出すように打ち明ける圭一の言葉を、理解できない蛍。
ですがそんな二人の前で、とんでもない事件が起きてしまうのです。
たまたま近くで遊んでいる子供が、トンボを追いかけて流れのはやい川へ向かってかけていく・・・・・・そしてそのトンボは、なにやら普通ではない、男性の亡霊位のようなものが操っているのです。
慌てて駆け寄る蛍と圭一。
圭一がいち早く子供のもとにたどり着き、抱き留めようとするのですが、圭一は幽霊、その手はむなしく空を切ります。
やむなく蛍が飛び込み、子供の手をつかんで引き上げようとしました。
が、子供は異常なまでに「重い」のです!!
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地面に足はつくし子供の手はしっかりとつかんでいる……なのにこの異常な重さ。
これは間違いなく、子供をおびき寄せ、今はしっかりとつかんでいる亡霊の男の仕業でしょう!!
このままではパニックになっておぼれている少年を引き上げることはできません。
しかもそのことに気が付いた子供の母親たちは、蛍が子供を抑え込んで沈めようとしていると騒ぎ始め……!!
突如巻き込まれたこの異様な状況。
果たしてこの子供と、蛍の運命は!?


というわけで、兄の霊とともに不可思議な事件に巻き込まれることになる蛍。
これから蛍は、圭一とともに様々な事件に遭遇し、それに立ち向かっていくことになるのです。
平穏を求める蛍ですが、学校生活でもその災難は襲ってくるのです。
その影にいるのは、先ほどの男性の亡霊のような、普通の人間には見ることのできないおぞましい存在。
そんな存在の招く恐怖を、どう解決していくのか?
蛍に秘められた力と、圭一の霊体であるからこその奮闘が描かれていくのです!!

基本的に前作「マーニー」では、一話完結型のお話でした。
ですが今回の物語は数羽で人事件を解決するスタイルをとっています。
そのため、「マーニー」のようなテンポの良さはあまりないものの、その代わりにマーニー^ではできなかった細やかだったり、ねちっこかったりする描写をすることができました!
今まではどうしてもしづらかった犯人役の真理なども描写され、これからはおそらくより複雑な事件も描いていくことでしょう。
マーニーと似た事件解決ものではありますが、その味付けはがらりと変わっているのです!!

さらに気になるのは、兄の事件の真相です。
謎の多い圭一の失踪事件。
物語が進んでいくにつれ、徐々に明かされていくその謎。
本作の各話ごとの事件とは別の、大きなお話の軸として見逃せない要素になりそうです!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!