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今回紹介いたしますのはこちら。

「忘却のサチコ」第2巻 阿部潤先生 

小学館さんのビッグコミックスより刊行です。

さて、結婚式中に婚約者に失踪されてしまい、心に深い傷を負ってしまったサチコ。
ですがふとしたことから、今まであまりに気していなかった食事、それもおいしいものを食べているときだけそのショックを忘れられることに気が付きます。
そこからサチコの果てしなき、食の探求の旅が始まることとなるのです……!

高松空港に降り立ったサチコ。
わざわざここにやってきたのは、彼女の仲良しの従姉妹である歩美の結婚式に参列するためです。
ですが問題なのは、サチコはつい先日婚約者に逃げられてしまったという状態。
そのトラウマは今だ癒えず、あゆみのほうもそのことを重々承知で、招待状に「無理してこなくてもいい」という旨のメッセージも添えてくれていました。
ですがサチコは、歩美の結婚は是非面富むあったきちんと祝福してあげたいと考え、出席を決意したのです。
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……「けっこん」という言葉がどうやっても口に出せないほどの大きなトラウマを抱えながら!!

高松、香川と言えばやはりうどんです。
絶品のうどんを食べればトラウマもいくらか軽減され、よどみなく「けっこん」を祝う言葉が紡ぎだせるかもしれない。
そう考え、サチコは香川名物「おうどんタクシー」に乗り込み、うどん巡りを始めるのでした!!

おすすめの店をお願いしますと告げ、連れてこられたのは田んぼのど真ん中にあるうどん屋さんでした。
ですがその立地からは想像もできないほどの行列ができています。
見た感じ、うどんの注文には独特のルールがありそう。
そう考えたサチコは、タクシーの運転手さんにアドバイスを求めるのですが……運転手さんはさらりとこんなことを言うのです。
前の人のまねすればええんですよ。

お店に入ってみたサチコ。
製麺所がうどん屋さんもやっているというタイプのうどん屋さんで、お店と言うよりは田舎の民家、といった風情のたたずまいです。
サチコはうどんの味がよくわかると言う冷たい面を注文すると、どんぶりにただうどんだけが入れられたものが出てきました。
どうすればいいのかわからないサチコですが、アドバイスを思い出して前の人のまねをすることにします。
まず目に入ったのは天ぷら。
非常においしそうなところですが……前の人は取っていないのでとりあえずスルー。
そして前の人がやっているのに倣い、だしをセルフでうどんに注ぎます。
冷たいうどんに注がれる暖かいだし……こういうのもあるんだなと言う程度の認識でサチコは露を注ぐのですが、薬味を入れた後あたりに冷たいだしも用意されているのに気が付きます!!
さらに周りの人を見回せば、けっこうみなさん天ぷらも取っていますし……自分もとればよかった、といきなりがっくりと精神的ダメージを負いつつレジに向かいますと……
なんとお値段130円!!
先ほどまでのダメージがぶっ飛ぶほどの安さにサチコは驚愕するのでした!!

さて、いよいよ実食です。
一口食べた瞬間から口の中に広がるおいしさ!!
表面はすっと歯が入っていく感じで、最後は髪きれずにはを押し返してくるような弾力がある。
だしもあっさり味でありながら炒り子やカツオの風味が立っていて絶品!!
暖かいだしにしたのも、冷たい面がだんだんとやわらかくほぐれている感覚を生んで二度楽しめるような感覚を味わえ、結果オーライ。
まさに本場の讃岐うどん、と感嘆するのです!!

ひとしきり食べたところで、結婚式で読み上げる祝辞のメモを取り出すサチコ。
ですがやはり、どうしても「けっこん」の言葉は出てこないのです!!
これではまだ足りない!と感じたサチコは、二件目に向かうことにしました。
やってきたお店は、またまた製麺所タイプのお店。
今度は比較的街中にありますが、行列ができているのは同じです。
幸い頼み方は一件目と同じ感じのようで、今夏にはじっくりと考えて「かまたま」を注文します。
かまたまには卵はもちろん、ネギも入っていました。
お客さんの流れが速く、てんぷらは吟味する暇がなかったので今回もスルー。
つゆに関してはきっちり説明を読んで、スタンダードにつけだしを少量かけました。
さあ、再びお食事タイムです!
卵と麺、つゆをよーくからめ、一気にすすりますと、やっぱり美味。
ですが先ほどのうどんとはまた大きく違い、もちもちのうどんに濃厚な卵がこってりとからんだまろやかなうまみが広がるのです!!
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思わず満面の笑みを浮かべてしまうサチコ……
ですがやはり……まだ祝辞を読み上げる段階にまではいかないのです。

その後もう2軒めぐってみても、やはり祝辞は読み上げられません。
そんなふがいなさも合わさって今までの様々の自分の至らなかった人生をおもいだしてしまい、すっかりテンションダウン。
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自分には面と向かって祝福する資格がない、と完全に心が折れてしまったのです。
そんなサチコを見て、タクシーの運転手さんはたまりかねてこんなアドバイスをしてくれました。
せっかく香川まで来たんだから、こんぴらさんにで幸せの祈願だけでもされてはどうだ、と。
至らない自分でも、それぐらいはできるだろう。
サチコもそう考え、こんぴらさんに向かったのですが……
このままサチコはとんぼ返りしてしまうのでしょうか?
それとも、何かをつかんで心よりの祝福をすることはできるのでしょうか!!


というわけで、友人への祝福と自分のトラウマを乗り越えるための、香川うどん旅を敢行する今巻。
さすがはうどんの国と言うだけのことはあり、「うどん」一つとっても実に様々な食べ方があることを思い知らされます!!
サチコとともに読者の皆さんも驚き、味を想像し、そしてその幸せそうな顔を拝む……
いつもの展開に加え、トラウマ克服という大きな山もあるこのエピソード、必見です!!

この他にも今回も様々な料理が登場します。
こちらもドラマチックな長編となる串カツ編、あのサチコさんがダイエットに挑むことになる中華粥のエピソード、シンプルながら奥の深いチャーハン……
どれをとっても美味しそうなのはもちろんのこと、サチコさんのみならず、個性豊かなキャラクターも続々登場する本作、今回も最後まで楽しめること間違いなしですよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!