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今回紹介いたしますのはこちら。

「うしおととら 完全版」第1・2巻 藤田和日郎先生 

小学館さんの少年サンデーコミックススペシャルより刊行です。

さて、本作は90年から96年にかけて、少年サンデーにて大好評連載された作品の完全版です。
藤田先生の連載デビュー作にして最大のヒット作と言っていい本作、ワイド版、文庫版と版型を変えてすでに幾度も刊行されています。
92~93年にかけてオリジナルビデオアニメ化もされているのですが、15年夏より待望のTVアニメ化が決定したこともあるのでしょう、完全版として三度目の再刊行が始まったのです!!

そんな本作、あまりご存じない方に説明いたしますと、いわゆる妖怪退治ものです。
押しも押されぬ少年漫画の大傑作、その内容は……


妖怪変化は、目には見えないがちゃんと存在している。
現にうちの寺に祀られている槍は、妖怪退治の名人のありがたい槍なんだからな!
真剣な顔で、実の息子であるうしおに力説する僧侶、紫雨。
それまで黙って聞いたいたうしおですが……ついにしびれを切らして口をはさみ始めます。
47歳の分別盛りでその上寺の住職という社会的地位もある、そんな大人が毎日毎朝息子にお化けの説教を垂れるんじゃない!
ありがたい槍があると言うが、見せたことないだろうが一回も!!
反論する余地もなく、うしおの糾弾を甘んじて受けるしかない紫雨でしたが、うしおが何気なく発した「ボケハゲ」という言葉は聞き捨てならなかったようです!
誰がハゲだって?このチビ!とやりかえし……毎朝恒例の親子げんかが始まるのでした!!

いつものように喧嘩に負けたうしお、紫雨の命令で蔵の中の本を虫干しすることになりました。
ぶつくさ言いながらも蔵の扉を開け、檀家さんからの寄贈品やらおはらいを頼まれたものやらと、ほこりがうずたかく積み上げられている中に入っていきます。
両腕で大量の本を抱え上げ、外に出ようとすると……何かに足が引っかかり、盛大にすッ転んでしまいました。
何に引っかかったのか、足元を見てみると……何やら床に大きな扉があるではありませんか。
今までこんなものがあることすら知らなかったうしお、興味がわいてその扉を開けてみようとします。
すると、蝶番の部分が壊れ、うしおは扉ごと落下してしまうのです!!
扉の下は、なんと広い地下室があるではないですか。
こんな部屋があるなんて、と周りを見渡そうとした瞬間、後ろに何かの気配を感じました。
恐る恐る振り向くと、そこにいたのは
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目を爛々と光らせた、金色の怪物!!
その怪物、大騒ぎするうしおを見て500年ぶりの人間はずいぶんやかましいなとつぶやきます。
右肩には「槍」がささっていて……どうやらそれによってこの地下室ではりつけになっているようで。
怪物は、この「獣の槍」を抜け!と潮にすごんでくるのです!
ですが、槍を抜いたら「己を喰らって、昔のようにこの辺の人間どもを地獄へ引きずり込んでくれる」と言い出す相手を解放してあげるほどうしおは考えなしではありません!
人の命が食い物にしか見えない妖怪を誰が野放しにするか!と吐き捨て地下室をあとにするのです!
命ってなんだ、動けるってことだろ?お前は動けるように食わないって、他の人間なんてお前に関係ないだろ?気に入らん奴でも何でも殺してやるから……と、必死で引き留めようとする妖怪!
うしおはそんな妖怪に、お前が自殺しろ!と返し、千佳への扉を板やら荷物やらで塞いでしまうのでした!!

さっそく家に戻り、槍はあったけど化け物つきじゃないか、と紫雨に文句を垂れようとするうしお。
ですがそこに父の姿はなく、ちょっと日本海のほうプラプラしてくるから一週間ほどテキトーにやってくれ、という書置きがあるだけ……
肝心な時に!!とやり場のない怒りの声を上げていますと……うしおに家に、二人の女子が尋ねてきました。
うしおの友人である、麻子と真由子です。
麻子は潮に化していたノートを返してもらおうとしてきたわけですが、うしおは借りていたことすら忘れていて……
麻子はいつものように、おおざっぱすぎるうしおにくどくどとお説教を暮れはじめるのですが……その時、うしおの目に何か妙なものがうつりました。
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周りを無数に飛ぶ、魚や虫のような奇妙な生物……!?
ところが、麻子や真由子二はこの奇妙な存在が見えていないようなのです!!
二人に注意を促すも、うしおの子供っぽいいたずらだと思い込んで信じる様子のない二人。
この奇妙な出来事のきっかけとして思い当たることは……ありました。
あの化け物が自分の目に何かをしたのに違いない!!
慌てて蔵にとんぼ返りし、地下室を開けて化け物を問い詰めます!!
すると化け物は笑い始めました。
それは自分の妖気が呼んだ魚妖や虫怪だ、500年この地下室にたまり込んでいた妖気が、お前が扉を開けたことによって流れ出し、低級な妖怪を呼んだんだ。
自分と接したお前はほかの奴より早くみられるだろうが、時期にアイツらは実体化して人を襲う!!
……その言葉は嘘ではありません。
ほどなく響き渡る、絹を裂くような叫び声……!!
麻子と、真由子でしょう。
焦るうしおに、化け物は語り続けます。
無駄だ、お前には助けられん、お前のせいだ、お前がここを開けなきゃよかったんだ。
わかってるな、わしならできるんだぜ!
……自分のせいで二人が棄権に巻き込まれてしまった。
そう考えたうしおがとる行動は……一つだけでした。
地下室に降り立ち、妖怪をやっつけてくれ、と約束を取り付けるうしお。
約束は守るさ、という化け物の言葉を信じて槍を引き抜くと……
瞬間、化物は潮を殴り飛ばしたのです!!
よくもコケにしてくれたな!と牙をむく化け物!!
約束は、アイツらはどうなる……?
自分の心配よりもまず、二人の身を案じてそう問ううしおですが、化物は誰が人間との約束なんて守るか!といやらしく笑うのです!!
うしおは引き抜いた槍を杖代わりに立ちあがり、怒りを爆発させます!
きたねえぞ、きさま!!
そう叫んだ瞬間のことです!!
獣のやりが奇妙に震え……
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うしおの髪の毛が一気に伸びたのは!
それを見た化け物は戦慄します!
あの時と一緒だ、500年前鷲をここに縫い付けたサムライと……同じだ!!
槍の「力」を体にみなぎらせたうしお。
この出会いが、これから始まる長い戦いの幕開けだったのです……!!


というわけで、待望の再刊行が始まった本作。
獣の槍に選ばれた運命の少年、うしおと、同じようにその槍に縛られた化け物、とらの出会いから物語は始まります。
獣の槍の目覚めが一つのきっかけとなったのか、この後うしおたちのまわりには怪しげな影が頻繁に付きまとうことに。
それにうしおととらのコンビが、徐々に絆を深めながら立ち向かっていくことになるのです!!
その道中は波瀾万丈、笑いあり涙あり、バトルもドラマも熱いものばかり!!
もはや説明不要の稀代の名作、ファンの方ならば必携、未読の方ならば必読の作品といえましょう!!

そして完全版の名に恥じず、連載時のカラーは完全再現!!
さらに連載終了後に週刊少年サンデーに掲載されていた企画ページ「風雲録」も掲載!!
さらにさらに第1巻には本作と原型となる作品のネームが収められた冊子が付いていまして、こちらも必見と言わざるを得ない内容です!!
気になるのは単行本は荷方の楽しみの一つだったはずのおまけページが収録されるかどうかですが……
そこも期待して、良いですよね!?


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!