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今回紹介いたしますのはこちら。

「辺獄のシュヴェスタ」第1巻 竹良実先生 

小学館さんのビッグコミックスより刊行です。

竹良先生は13年にスピリッツ賞大賞を受賞し、デビューした新人漫画家さんです。
受賞作は大反響を呼び、その後14年より本作の連載を開始、この度めでたく単行本発売となりました。

さて、本作は中世を舞台にした物語です。
忠誠と言えば剣や魔法なんかが登場する作品が多いイメージですが、本作は中世のもう一つの顔、忌むべき因習が支配する闇の部分を描いた作品です。
果たして本作、その闇の時代でどのような事件が起きるのでしょうか……?


1542年、ザールブルグ近郊の村。
その村では、まだ幼い少年が埋葬されようとしていました。
幼い我が子を失った悲しみに泣き崩れる母親。
ですが同時に、腹をすかせた子供が一人減ったことに、どこか安堵もしていました……
そんな悲壮な場に、一人の少女が現れました。
松葉づえを入れなくていいの?その子は杖がないと歩けないのだけど。
そう語りかけてきた少女は、エラ。
神様の国に行った彼は、脚も何もかもよくなるんだ、と司祭は返答するのですが……エラはこういうのです。
じゃあ、この子はもっと早くこうなったほうがよかったのね、と。

どこか底知れぬところのあるエラ。
そんな彼女が、心の中に火を飼っているという村の老婆は、エラが何かとんでもないことをする前に売ってしまうほうがいいと彼女の両親に囁きます。
その言葉に思い当るものがないではない両親なのですが、なんといっても我が子です。
考えさせてください、とその場を去るのですが……家に帰ると、エラはとんでもないものを両親に差し出してきたのです。
火を起こすなら
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これをくべてほしいの!
……それは、罠にかかった大量の鼠でした。
亡くなった子がネズミに足をかじられていたのを見ていたエラは、鼠を狩るための罠を自分で作成。
エラは、敵討ちをしたのです!!
……が。
自分で鼠を容赦なく殺める罠を作り、それを差し出してくる姿を見てどう思うでしょうか?
結果としては……この敵討ちこそが決め手となってしまったのでしょう。
エラは売られてしまうこととなったのです。

アンゲーリカは、ロバを買いに来ていました。
なんでも、出がけに聖書を落としてしまったら、偶然「村に入ってすぐまだだれも乗ったことのない子ロバがいる、それを連れてきなさい」というページが開かれたそうで、それをお告げと考えた彼女はここにやってきたのです。
小ロバを眺めていますと、何かロバの足元で蠢くものが……
よくよくそれを見てみますと、それはおびえたまなざしをこちらに向け、縮こまったガタガタと震えている少女……エラだったのです!
彼女は一階に連れられていたところを、機転と運によって逃げ出すことに成功し、ここに隠れていたようです!
おびえる彼女を優しく迎え入れるアンゲーリカ。
彼女は窃盗犯の疑いを向けられていたエラを、自分がその罰を受けてまで引き取ってくれることになりました。
アンゲーリカは賢い女性で、豊富に持った薬草の知識を使い、村人に薬を作って売っていました。
ですがこの時代、司祭による祈りこそが正しい治療行為で、こういった医療行為は一般的ではないもの。
しかもその普通では持ちえない薬草の知識ゆえ、施術するものは魔女と呼ばれて迫害されることも多くなかったのです。
アンゲーリカもまた、あまりおおっぴらにはできないものの、病気に苦しむ子供などを持つ親には重宝されていたりもしたのでした。

ある日のこと、エラは村の子供に、自分もろともアンゲーリカを侮辱されてしまいます。
その一言で心の中の火が暴れ出したエラ、はその少年をひもで縛り上げながら引きずり、その挙句力任せに馬の水飲み桶の中に少年の頭を突っ込んだのです!!
こういうやつが一人いると、みんなによくない影響を与える。
だから、いなくなったほうがいい。
激情が、命ずるままに凶行を働くエラですが、そこに大人が駆け付けて少年は窮地に一生を得ることに。
エラは、何故あの少年がいなくなればみんな仲良くできるのに、自分のしたことが咎められるのだと泣きじゃくるのです。
そんな彼女を見たアンゲーリカ、しばらく友達と遊ぶことは禁止するが、自分が遊んであげると言い出します。
仕事が忙しいアンゲーリカが遊んでくれることはなく、この申し出はエラにとって夢のようなもの。
アンゲーリカは、エラに卵の殻にロウと染料で美しい模様をつける、イースターエッグのようなものの作り方を教えてくれました。
その美しさに驚いたエラは、一生懸命コツコツ政策に打ち込み、2週間後にようやく会心の出来となるエッグを完成させました!
王様だって教皇様だってこんな素敵なの持っていない!と喜ぶエラなのですが……その喜ぶ顔を確認したアンゲーリカは
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そのすべてのエッグを打ち壊してしまったのです!!
当然そうなってしまえば、もう元に戻すことなんて不可能。
泣きわめき、床でじたばたと暴れまわるエラ……
そんな彼女の顔をぐっと自分に向け、アンゲーリカは言うのです。
これがあなたのしようとしたことよ。
この卵はもうどんなに頑張っても戻せない。
あんなに時間をかけて大切に作ったのに!!
あの子もそれと同じ、一度死んでしまったら絶対もとに戻せない。
誰でもよ、どんなに悪い人でもそう。
あなたが今感じているその痛みだけが、人が死ぬということの真実よ。
あなたには、それがわかる人になってほしいの。
今にきっと、誰もがそれを忘れてしまう世の中になる。
だけどあなたは、それを覚えている人でいて……

それ以来、エラは激情に駆られることなく、怒りを抑えて行動するようになります。
アンゲーリカの仕事も手伝い、どんどんとアンゲーリカとエラの心も通じ合っていきました。
こうして「母娘」となった二人。
しあわせな毎日を過ごしていたのですが……その日はやってきてしまったのです。
アンゲーリカを訪ねて、武装した数名の男がやってきて……こう告げてきた……忌むべき運命の日が。
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アンゲーリカ、君、魔女なんだって?
その男たちは……異端尋問官。
真実であろうとなかろうと、魔女と呼ばれるものを捕え……無慈悲な拷問と、容赦ない懲罰を与える存在です……


というわけで、つかの間の平穏が破られてしまうこととなる本作。
本作はここからが本番!
魔女と疑われてしまったアンゲーリカはどんな仕打ちを受けることとなってしまうのか?
そして、心の中に燃え盛る火を飼うエラがどんな行動をとるのか!?
激動の物語は、さらなる急展開へ。
エラは、あまりにも残酷な運命に翻弄されることとなるのです!!
彼女の中で燃えたぎる、激情の火。
その火が向けられる対象は……!!
エラの辛く、厳しく、先の見えない戦いは幕を開けたばかり。
果たして、物語はこれからどんな展開を迎えるのか?
ただ一つ分かっているのは、その戦いには残酷な運命が寄り添っているということだけ……
とにかく見守っていくしかなさそうですね!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!