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今回紹介いたしますのはこちら。

「うしおととら 完全版」第3巻 藤田和日郎先生 

小学館さんの少年サンデーコミックススペシャルより刊行です。

さて、死んだと思っていた母がまだ生きていて、妖怪たちに恨みを買っているらしいことを知ったうしお。
母の真実を知るために、相棒となったとらとともに旭川に向かうことになったのですが……?


空港にやってきたうしおととら。
北海道まで飛行機で一気に行こうというわけですが……槍を抱えたまま飛行機に乗ることはさすがにできません。
荷物として預けるしかないわけで、槍を手放したうしおにとらは嬉々として襲い掛かってくる野ではないか……と思われていたのですが。
とらは珍しいものだらけの空港に興味津々で、うしおの状況など構わずはしゃぎまわっているのでした。

空港のロビーのテレビに映し出されているニュース番組では、ちょっと嫌なニュースが流れています。
一か月前に起こった、飛行機事故。
札幌息の便が墜落し、200人もの死者を出した痛ましい事故で、墜落の原因は自衛隊の戦闘機とのニアミスとされていました。
その戦闘機を操縦していた張本人、厚沢二尉。
彼が今まさにこの空港のロビーにいたのです。
厚沢は、セーラー服の少女と一緒にいました。
その少女は、勇といいます。
墜落した飛行機のパイロットだった檜山の一人娘で、以前はこの厚沢と家族ぐるみの付き合いをしていたのです。
すでに母を亡くしていた勇はこの事故によって一人になってしまい、この飛行機で北海道のおじさんの家に行き、そこで新生活を送ることになっていました。
せめてもの償いの一つとして、厚沢が北海道まで勇を送ろうということになったんですが……当の勇は、父を殺した人間に送ってもらいたくなんてない!とすごい剣幕で当り散らしているのです。
ですがそんな勇に、厚沢はこんなことを言うのです。
勇ちゃんにだけは、お父さんの真だ本当の理由を知ってほしい。
確かに自分の機と事故機はニアミス状態だった、でも墜落したのはそのせいじゃない。
信じてもらえないことはわかっている、でも本当なんだ……
あれは……バケモノだった!

超高速の超高空で、厚沢が見たもの。
レーダーにも映っていないにもかかわらず、確かにそこに存在したそれは……飛行機を覆うように絡みつき、機体を溶かしていた……
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巨大な化け物だった!!
そんな話をされても、信じるはずはありません。
勇は、もうたくさんだ、大嫌いよおじさん!と耳を覆って拒絶……
ですが厚沢の態度は嘘を言っているようにも見えず、うしおはとらにドンな妖怪なのかと尋ねるのです。
とらによればその妖怪は……「衾(ふすま)」というのだとか。
昔とら自身も衾と戦ったことがあるのだというのですが、切っても殴っても、雷でも効果の薄いめんどくさい相手なんだとのこと。
弱点は、お歯黒を塗った歯と、大量の炎。
それがあれば衾を撃退できるというのですが……そんなものが空にあれば、という問題があるわけです!
どうにかしてその妖怪を退治したいと思ううしおですが……
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そんなとき、厚沢と揉めていた勇がバランスを崩して転び、うしおの上に倒れかかってきたのです!!
その時に足をひねってしまったうしお、そこまで大怪我ではないようですが、同じ便に乗るうえ席も近いことがわかり、厚沢が背負ってもらって飛行機に搭乗することになるのでした。

勇と隣の席になったうしお。
厚沢を人殺しのおじさんと呼んで冷たくあしらう勇を見て、人殺しとは尋常じゃないな、と漏らすのですが、勇は関係ないと冷たい一言。
取り付く島もないとはこのことですが……飛行機が動き出すと同時に、勇はカタカタと震えだしたのです。
その様子を見て、うしおはぎゅっと勇の手を握りしめました!!
赤面しながら、親父が、怖がってるやつはつかまる所を探してるから、つかまらせてやれって言っていた、俺の手を重しにして飛行機ぐらい怖がるな!といううしお。
ですが勇がおびえているのはそんなことではありません。
手をパッと引っ込めた勇は、そこでようやく自己紹介をし……身の上を語ってくれたのです。

飛行機がしばらく飛び、勇がすやすやと寝息を立てはじめたころ、後ろの席にいた厚沢が改めてうしおに挨拶にやってきました。
勇すら信じていないとっぴすぎる化け物の話を、うしおは最初から信じていたようにみえた。
そのことも気になり、うしおの横の席に腰掛け、話もしようとしてきたようです。
信心深い家に育ったから、おじさんの話も別におかしくないと笑ううしお。
そんな彼になら、今まで誰一人としてきちんと聞いてくれる者のいなかった化け物の話をしてもいいと考えたのでしょう、厚沢はその日のことを話し始めました。
本来の航路を飛んでいた自分に、檜山さんの旅客機のほうから異様な痕跡を飛んで近づいてきた。
歪んだ空間に旅客機がつつまれて、すごいスピードで引っ張られている感じだった……きっとあの化け物が……
そう話し始めた時のことです。
厚沢が何かに気が付き、窓に張り付いて外を見たのは!
この圧迫感は、あの時と同じ……!
と同時に、轟音が響き渡り、機内が大きく揺れて機体が傾きました!!
再び窓の外を覗くと、そこにいたのは……!!
空を飛ぶ醜怪な妖怪……
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衾だったのです!!
瞬く間にパニックになる機内!!
すかさず迎え撃とうとするうしおですが、槍は荷物として手放してしまっていて……
しかし、とらは全く慌てることなく、うしおを小ばかにしつつ、呼んでみろというのです。
忘れるな、あの槍は「獣の槍」なんだぜ。
……槍よ、来い!
うしおが念じたその瞬間、槍は地面を突き破って姿を現したのです!!
……ですが問題はまだあるのです。
衾は機体の外に張り付いています。
機体を破壊するわけにもいきませんし、窓から槍を伸ばしたところで手の届く範囲は知れています。
衾を倒すのならば、おびき寄せなければいけないわけですが……
衾は操縦士たちを殺害し、さらにエンジンに絡みついて期待を操縦不能にしてしまっています。
このままでは墜落は間近。
そうでなくとも、乗客たちが一度に200人も食らうという衾の餌食となってしまうでしょう……!
一体どうすればいいというのでしょうか!?
時間はあまり残されていません。
この厄介な相手に、選ぶべき戦法とは!?


というわけで、旭川への道行きが始まる今巻。
今巻ではこの衾と戦う「ヤツは空にいる」のほか、強大な法力と凶悪な戦意を備えた法力僧の凶羅と戦う「法力外道」、そしてかまいたち三兄弟との物語「風狂い」の3章が収録!
本作中屈指の気持ち悪さや恐ろしさを持った強敵、衾と戦う紹介のエピソードはもちろんのこと、他2編の物語も後の物語に影響を及ぼす非常に大事なエピソードとなっています!
そうでなくとも、凶羅のとんでもない強さに、かまいたち兄弟と潮の間で紡がれる感動の物語は必見!
心に響くエピソードとなっているのです!!

今巻もカラーページ完全再現はもちろんのこと、藤田先生のコメントもある雑誌掲載の企画ページが収録されていまして、当時単行本派だった方は必見!
さらに文庫版や、サンデーコミックス版、ワイド版などの表紙イラストをまとめたページもあり、資料的な面でも充実しております!
ぜいたくを言えばこちらもカラーで収録して欲しかった所ですが……!!

アニメ放映も15年7月からと迫ってきた本作。
未読の方ならばこの名作、ぜひともこれを機会に読んでいただきたいです!!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!