wh0
今回紹介いたしますのはこちら。

「わたしの日々」 水木しげる先生 

小学館さんのビッグコミックススペシャルより刊行です。

さて、15年現在で御年93歳になる水木先生。
本作はそんな水木先生が92歳になる直前から、93歳になった直後くらいまでにかけて連載されていた日常漫画です。
(おそらく)プロダクション制作といっても、90歳を超える漫画家さんが隔週で、しかも4ページフルカラーで連載するというとんでもない作品である本作、その内容は水木先生の日常や、思い出を徒然なるままに書いていくというもの。
水木先生の日常を垣間見れる本作、中身はと言いますと……


ある日のことです。
大きな椅子にもたれかかり、机の上にどっかと足を乗せていた水木先生。
どこを見るでもなく上をむき、そして鼻をほじりながらこんなことを考えていました。
水木さんはもうじき92歳になるが、このまま静かに死んでいきたいものだ。
いよいよ、無為に過ごす時が来たのだ。
怠けることを決心した水木さんですが、そんなところに娘さんの悦子さんがやってきました。
お父ちゃん、ビックリコミックからの連載の話だよ。
その言葉を聞いた瞬間、水木先生はこう大声で叫ぶのです。
wh1
断れっ!!
そのあまりの勢いに、思わず放屁する水木先生。
頼むからもう静かに死なせてくれと言うのですが、そう簡単には行きません。
水木プロで幹部をやってらっしゃる弟さんは、電話を片手にこういうのです。
でも兄貴、ビックリコミックの編集長が、巻末を飾るのは水木しげるしかいないと言ってるぜ、と!
そこまで言われれば悪い気はしません。
ふんっと鼻息を噴出しながら、しょうがないなぁ、やってもいいよと連載を引き受けた水木先生。
なんだかんだと言っておきながら、そのお顔には微笑みが湛えられております。
世間はまだまだ水木サンをほっとかないらしい。
水木先生の連載は、そうやって始まったのでした!!

そんな出だしとなった本作。
一回4ページということもありまして、実に様々な内容が収められております。
丸っきり散歩をするだけの話、相撲観戦に行く話、遠い戦争の記憶を思い起こすお話などなど、水木先生の日常だけではなく、考えていることや思い出なんかも知ることができます。
そんな中で目を引くのが、「食」に関してのお話。
水木先生のご兄弟はお兄さんも弟さんもご健在なのですが、三人兄弟そろってよくものをお食べになるようで。
お三人がもりもりオヤツを食べるお話なんかも収録されています。
そんな食のお話の中で特に目を惹くのが、ネットでもちょくちょく話題になる水木先生のおとしからはあまりイメージできないものを食すお話。
本作では「ハンバーガー」のお話が特に注目したいところです!!
いつものように悦子さんと水木先生がお散歩に行くのですが、その日の水木先生は妙に機嫌の悪い感じ。
こういう時は黙っていたほうがいい、と悦子さんは黙って水木先生の後ろを歩いていたのですが、急に水木先生は某Mのハンバーガー屋さんの前で泊まったのです。
水木先生は急にシリアスな顔で、お父ちゃんの願望をかなえてくれ、と悦子さんに言い出しました。
その願望とは……単にハンバーガーを食べてみたいというものでした!
ここに入るのを今まで我慢してたのっ!と叫ぶ水木先生……
さっそく悦子さんと一緒にハンバーガー屋さんに入り、注文をすませ……
wh2
鼻息も荒くハンバーガーにかぶりつくのです!!
その模様はネットでも検索すればすぐに出てきますので、水木先生の食への情念の強さをその目でご覧になるのもよろしいのではないでしょうか……!!
ちなみに水木先生はすっかりハンバーガーが気にいったようで、もう一個買ってきて、と悦子さんにお願いした挙句、その後しばらくはハンバーガー屋さんに通ったそうな……


というわけで、水木先生の様々な模様を目撃で切る本作。
今まで上げたような様々な日常、水木先生節あふれる擬音や表情、時折顔をみせるものがなしいエピソードなどなどの他にも、京極先生がゲスト出演をするお話やら、自身の格言を振り返るお話と言った一風変わったお話も収録されています。
そんなお話とは別に、水木先生が漫画化になる以前の絵画作品や、童話なんかといった、非常に貴重な、大全集に収録されるかどうかもわからないレアな作品も掲載されていたり。
wh3
おまけに悦子さんによる、本作の補足的な「『わたしの日々』目撃談」なるあとがきがわりの文章&水木先生の写真なんかも載っているなど、資料的な要素からも目が離せませんよ!!

本作の「目撃談」でもちらりと触れられておりますが、水木先生は14年末ごろに心筋梗塞で2か月も入院されていたそうで。
本作の連載が突然終了した時はそのことがわかっておらず、様々な憶測が飛び交いましたが……この入院の影響がゼロだったとは考えづらいところ!
鬼太郎をはじめとした水木先生作品は、もはや水木先生自身の手から離れて羽ばたいているといっても過言ではないのですが……やはり水木先生と言う現代を生きる半妖怪の存在感と言うのはなくてはならないもの。
健康に気を付けて、長生きしてほしいもんです!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!