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今回紹介いたしますのはこちら。

「忘却のサチコ」第3巻 阿部潤先生 

小学館さんのビッグコミックスより刊行です。

さて、結婚式当日に失踪した恋人、俊吾のことをいっとき忘れられる「おいしい食事」を求める日々を過ごしているサチコ。
油断するとよぎってしまう俊吾との思い出に浸ったり振り払ったりしながら、サチコは仕事に食事にとがんばるのですが……?


名古屋駅。
サチコはそこに、大学卒業以来あっていない、久しぶりに出会う友人の迎えに行っていました。
ほどなくして姿を現すその友人……
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なんと、金髪の外人さん!
彼女の名はジョゼと言いまして、どうやらサチコと相当気のあう人物だったようです。
片言ながら、丁寧な言葉づかい、そしてぺっこり90度のお辞儀をするサチコと全く同じ角度のお辞儀、さらに待ち合わせ時間10分前にこうしてきっちり待っていてくれる感じ……それらを見れば一目瞭然でしょう!!
お互い礼儀正しいお辞儀をしながらも、再会を喜び合う二人。
そしてそれが終わると、すぐ小走りでジョゼの目的地へと向かうのです!!

日本の大学に留学していたジョゼですが、帰国後大学院に進み、研究の日々を送っていたのだと言います。
今回は長期休暇をとり、日本各地を回る旅行をしているのだと言います。
その旅の途中であるジョゼから、一緒に飛騨高山に行かないかと誘われたサチコなのですが……
気の合う友人との久しぶりの再会、ここで貼り切らないサチコさんではありません!!
喜んでもらえるように完璧なおもてなしをしなくては!と意気込み、徹底的な下準備をしてきていたのでした!!

まずそのおもてなしは最初に乗り込む電車から始まっています。
乗り込んだのは特急「ひだ」でして、鉄道マニアの同僚のアドバイスによって先頭車両最前列をゲットすることに成功。
自然豊かな風景を満喫できる電車の旅に、さっそくジョゼは喜んでくれるのです!
そしてたどり着きました、高山。
荷物をロッカーに預け、まるで江戸時代の日本かのような高山の街並みを歩きます。
またまた感激し、風景の写真を撮影しまくっているジョゼに、サチコはあるものを差し出しました。
それは肉汁滴る、飛騨牛の串焼きです!!
ちょうど小腹がすいてたんですよと、それもまた大喜びしてくれるジョゼ。
これぞウェルカムドリンクならぬ、ウェルカムスナック!と内心してやったりのサチコさん……ジョゼに続き、自分も牛串を口にします。
するとびっくり、なんというおいしさでしょう!
表面はほんのり香ばしさがあり、中は食べた瞬間にジューシーな肉のうまみが広がるのに後味はさっぱりしている……
絶妙な焼き加減の、上質なお肉。
こんな素晴らしいものが手軽に歩きながら食べられるなんて、恐るべし飛騨高山!!
ひそかに飛騨高山初訪問のサチコも感動するのでした。

その後も二人は観光を楽しみます。
人力車や屋台を見物したり、さるぼぼやらのお土産を見たり……
高山は見るものがたくさんあって退屈しない、とご満悦のジョゼ。
ですが……ここでいよいよ本格的におなかがすいてきたようです。
もちろんそのことについてもサチコは想定済み!
近くのお店を予約してありまして、すぐにそのお店に向かいます。
学生時代もよくこうやって二人で昼食を食べてね、などと昔話に花を咲かせていますと……やってきました、朴葉味噌焼き定食!!
味噌をネギや山菜やキノコと一緒に朴の木の葉に乗せて焼き、ご飯にのせて食べる、飛騨高山の郷土料理……
飛騨牛と並んでメジャーな名物ですが、ジョゼはもちろん、実はサチコも初体験。
朴葉の上で煮込まれた野菜と味噌を、ご飯と一緒に口に運ぶ。
すると口の中に広がるのは、絶妙のハーモニー!
味噌の絡みがネギやキノコで中和されで塩加減はばっちり。
焦げた味噌の香りがさらに食欲をそそらせるこれが、ご飯にあわないはずもなし!!
ごはんwith朴葉味噌を口に運ぶ手は止まることなく……
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その味わいに、サチコは再び忘却の境地に至るのでした……
が。
その直後、ジョゼの言った一言にサチコは凍り付くことになるのです。
サチコ、ありがとうございます。
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全て、予想通りですね。
サチコならきっと私に飛騨高山の古い街並みを見せてくれ、飛騨牛や郷土料理を食べさせてくれると思っていました。
サチコにはとても感謝であります。
……予想通り、ということは……予想を上回っていない、ということ。
サチコの思うおもてなしとは、奉仕の精神に基づいて、気配り心配りで相手の期待を上回った満足や感動を与えること。
期待通りの範疇に収まっているというのは、おもてなしができていない、ということではないか!!!
おまけにこの後予定していた、おやつの飛騨牛乳ソフトクリームも予想されている始末で……
友人との楽しいひと時、そして忘却の極地という幸せな時間から、一気に(勝手に)どん底に突き落とされてしまったかのような状況に陥ってしまったサチコ……
果たしてこの後に一発逆転、必殺のおもてなしをすることができるのでしょうか!?
良くも悪くも真面目一直線な彼女が、そんなどんでん返しができるとは思えないのですが……


というわけで、久しぶりの友人との再会で窮地に追い込まれてしまうエピソードを収録した今巻。
サチコが勝手に追い込まれたピンチの顛末が気になる所ですが、それ以外にも見所はいっぱい!
飛騨高山の観光ガイドのような内容もさることながら、今や懐かしい領域に入ってきた「おもてなし」ネタの活用され方、そしてジョゼに隠されていたある事情などなど、盛りだくさんの内容なのです!!

そして他のエピソードももちろん必見です!
今回サチコが食すラインナップも実にバラエティ豊か。
「揚げパン」といった庶民的なものから、京都名店の「すき焼き」といったちょっと手が届きづらい高級なものまで取り揃え、「焼き牡蠣」や「寿司」と言った、言うまでもなくおいしさのわかるもの、「特別牛乳」という変化球気味なものまでずらり!
さらにマニア垂涎の寝台列車にまで乗るサチコさん、今回も様々な場所で、様々なものを食べ……素敵な表情を見せてくださいます!!
しかも今回、俊吾がらみのお話はありませんが、代わりに意外な男性関係のお話が……?
サチコの心の整理も幾分進む……かもしれません!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!