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今回紹介いたしますのはこちら。

「SHIORI EXPERIENCE(シオリエクスペリエンス) ジミなわたしとヘンなおじさん」第5巻 長田悠幸先生・町田一八先生 

スクウェア・エニックスさんのビッグガンガンコミックスより刊行です。

さて、初めてのライブで自分たちの未熟さをありありと実感することとなった本田達。
自分たちの未熟さを知った軽音部は、さらにお互いの思いをすれ違わせ、ケンカ別れも同然の状態になってしまったのですが……


取り残された形になったキーボードの川崎。
川崎は不安に駆られていました。
あの日以来、部室に誰も来ないのです。
……本田すらも。
井鈴も台場も学校にすら来ていないようですし、教師である本田までもが有休をとっているようで。
挙句の果てに自分が元々所属していて、その頃部長を務めていた超常現象研究部の一同が、戻ってきてくれとアプローチをしてくるのです。
もちろん川崎の気持ちが動いているわけではありません。
妖怪「卒塔婆みがき」という謎の妖怪の都市伝説が囁かれているから、調査しないか?
興味があるんだったら部に戻ってきてください
軽音部が「解散」してなくなった今、拒む理由はないでしょう!!!
……周囲が勝手に騒いでいるだけの、面白半分であろう解散の話。
ですが、今の状況のただなかにいる川崎にとって……この話は、あまりにもリアルに圧し掛かるのでした。

井鈴は橋の上でサックス用ケースを抱え、うなだれていました。
その胸中には何がよぎっているのか。
それが何にせよ、ネガティブな考えをしているのが見て取れたのでしょう。
サックス、捨てたりしないよね?と声をかけてくる人物が現れたのです。
それは、井鈴が以前所属していた吹奏楽部の部長、光岡でした。
いつもは夜遅くまで練習があるはずの吹奏楽部ですが、この日は顧問のすばるがブチ切れしてお開きになってしまったのだとのこと。
抱かれ家で個人練習しようとしていたのだそうですが……
そんな彼女の事情を聴いて、頑張り屋さんだねと寂し気に漏らす井鈴。
すると光岡は、突然井鈴にちょっと付き合ってくれと言い出して……

井鈴が連れてこられたのは、光岡の自宅でした。
光岡の物腰からなんとなくそんな気はしていましたが、彼女……ものすごいお嬢様!
豪邸に住んでいるだけでもすごいのに、なんと自宅に練習用のスタジオまであったのです!!
両親が二人とも音楽家で、生まれた時からこの環境だから何とも思わなかったという彼女、中学生時代はサックスをやっていたのだと言います。
高校で良いトランペット奏者がいなかったためコンバートしただけだというのですが……つまりそれは、あの超強豪の吹奏楽部の部長を務められるくらいの実力を、たった2年程で作り上げたということ!!
彼女のとんでもない実力に驚くばかりの井鈴に、光岡はサックスと合わせておきたい箇所があるから練習相手になってくれ、と楽譜を渡してくるのです。
井鈴は慌てて万年3軍の自分が光岡の相手なんてできない、と否定し……そのあと、今は自信を亡くしていて、何も吹く気になれないと打ち明けたのです。
軽音部で作った曲にうまくサックスが乗せられず、目黒にこの曲にサックス要らないと言われた、それがこのバンドにあなたはいらないと言われた気がした。
そんな本心を思わず吐露してしまった井鈴。
ですが光岡は言うのです。
それがどうしたの?
あなたがバンドに必要か否かは、人が、ましてやあなたが決めることじゃない。
「曲」が必然的にジャッジしてくれるものよ。
今回の曲はあなたを求めていなかった、でも次の曲は必要かもしれない。
私たちは、吹き続けるしかないの。
……井鈴は涙をぬぐいながら、その励ましの言葉へ感謝します。
が、この言葉も井鈴を立ち直らせるまでは至りませんでした。
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もし次の曲も私が必要じゃなかったら、どうしたらいいんだろ……
井鈴はうつむいたまま、つぶやくのでした。

台場は、バッティングセンターで汗を流し、モヤモヤを吹き飛ばそうとしていました。
が、やはりどうしても脳裏に浮かぶのはあの時の目黒の言葉がちらつくのです。
何もかも捨てて、バンドに打ち込む覚悟があるのかと言うことを問うその言葉……
やりたいことをやっている奴らがうらやましくて踏み出したものの、その先に待っていた「楽しいだけでは越えられない壁。
ただ楽しいからバンドやってる、じゃダメなのか!?
その時、レンタルスタジオを見かけた台場。
ドラムでもたたけば自分の気持ちが見えてくるかと中に入ってみると、そこには……目黒がいるではありませんか!
今から「香港卓球」の練習かよ、お忙しいこった、ととりあえず嫌味を言う台場。
ですが目黒は、無駄口をたたく暇があったらドラムでもやれ、と言って待合室に腰掛けると、あとは台場のことを徹底的に無視するのです。
香港卓球と言う自分が学校外で所属しているバンドのベースと、軽音部でのボーカル、ガッツリ二足の草鞋を履いている自分勝手なやつに、覚悟どうこういう刺客があるのか!?
そんな言葉すらも、涼しい顔で無視を決め込む目黒……
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台場は業を煮やし、その場からさっさと立ち去ってしまうのでした。

ゴールデンウィークが明けても、軽音部には誰も戻ってきません。
本気で気持ちをぶつけあわなければ、ここは嘘の場所になってしまう。
目黒はそれが言いたかったんだということを、川崎はよく分かっていました。
ですが口下手な彼女は、それを言って皆の怒りの奔流をせき止めることができなかったのです。
このまま本当に終わってしまうのか?
一人軽音部で涙をこぼしていた彼女のもとに、やってきたのは……超常現象研究部でした。
妖怪卒塔婆みがきが本当に出た!と言う彼ら、その必死の形相に押され、とうとう川崎は彼らについていくことになってしまいます。
その場所とは、とある廃工場。
いやいやながらついてきた川崎ですが……そこには、本当に「いた」のです!!
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驚き叫ぶ超常現象研究部員たち。
ですが、川崎は……!!

翌日。
台場のもとに一通の手紙が届きました。
「この手紙を見たものは、今日の放課後軽音楽部室に来なければ呪われる」
……こんな手紙を出す人物、あの人物しかいますまい。
一体彼女は、あそこで何を見たというのでしょうか!?


というわけで、心の折れかかったそれぞれのメンバーを描く今巻。
今巻ではたっぷり丸一巻を使い、それぞれのメンバーの苦悩と……そして、復活のさまが描かれていくことになります!!
サックスそのものを引く気力すら失ってしまった井鈴。
バンドを続ける理由を思い悩む台場。
あれだけの啖呵を切っておきながら、黙して何も語らずいつも通りの生活をしているように見える目黒。
ただただ悲観し、キーボードを弾き続ける川崎。
……そして、一向に姿を現さない本田。
それぞれバラバラになりかかっている5人が、再び一つの目標に向かって奮闘することはできるのでしょうか。
目標に掲げていたバンドコンテスト優勝と言う場所はあまりにも遠く、その道のりは険しいということがわかった今、立ち上がることすらも難しいかもしれません。
何かの驚くようなきっかけがあれば、もしかすれば。
そしてそのきっかけを作れるとしたら、やはりそれは……!
それぞれの濃密な2週間が、じっくりと、そして熱く描かれるのです!!

さらに最後には、新たな展開を予感させる人物も。
彼が登場したことにより、また物語に新たな渦が起こりそう……?
前巻のカートやフォード、丈二もそう遠くないうちに物語にかかわってくるでしょうし……
本田達のバンド活動だけでなく、ジミヘン周りの動向からも目が離せませんよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!