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今回紹介いたしますのはこちら。

「累」第7巻 松浦だるま先生 

講談社さんのイブニングKCより刊行です。

さて、野菊の手によってニナの命が絶たれた前巻。
女優として確固たる地位を築きつつあった状態から、一気にすべてを失った形になった累はぜつぼうし、悲観に暮れていたのですが……そのとき脳裏に浮かんだのは、かけがえのない友人だと思っていた野菊の姿。
累はついに親友までもその手にかけるのでしょうか!?


ニナが死んだ翌日。
その日にかかってきた電話を、累は思い出していました。
きっともう二度と聞くことはできないと思っていた野菊の声が効けただけで感極まってしまった累ですが、むしろ野菊のほうがなにやら重苦しい雰囲気です。
仕事も生活もうまくいかず、疲れてしまった。
今の私をすべて捨てて、遠くに逃げてしまいたい。
あなたにはいつも助けられてばかり、これからもし私にできることがあれば言って。
心を許せる友達って、あなたしかいないの。
私、最近なかなか会えないけど、辛いときはあの海によくいくの。
浜辺を歩いて、あなたと笑いあったことを思い出すだけで、心が安らぐ気がして……
そんな会話を思い出した累は、縋るような気持ちで「あの海」に向かってしまいました。
もう今の自分は、丹沢ニナの顔をしてはいません。
この顔のまま野菊に会ったところで何ができるのか……?
そんなことに考えも及ばないまま、ただただ海を目指す累。
もしかしたら、野菊だけは醜い自分を見下し、優越感に浸ることはないのではないか?
自分が野菊を求めるのは、友人としてなのか、それとも……
とりとめもなく、祈るような気持ちでたどり着いた海。
そこには……いたのです。
求めてやまなかった、野菊が!!

野菊は、その場にやってきた累を見るや、すっくと立ち上がって駆け寄ろうとします。
が、すぐに目を伏せ、たたずまいが大事な人によく似ていた、と謝るのです。
そのまま立ち去ろうとする野菊に、累は思わず声をかけてしまいました。
もう自分は、顔も超えも丹沢ニナではないのに……「野菊!!」と!
……その声こそが、野菊が待っていたもの。
累を破滅に導くための、第一歩に導くために……野菊はひそかに目の奥に鋭い光を走らせ……何も知らない顔をして、
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どうして私の名前を?と、返事したのです。

どうしても人目が気になる累に配慮し、二人は人気のないところに移動しようということになりました。

自分の後ろを、身を地ぢ個ませ、おびえながらついてくるその姿は、まるであの丹沢ニナと同じ人物だとは思えません。
自分の隣を一緒に歩いてくれたニナは、本当に幻でしかなかったのか、と複雑な感情を抱く野菊。
やがて二人は依然立ち寄ったこともある神社にたどり着き、そこで話をすることにしました。
そこにつくと、今度は累のほうから話しかけてきます。
ニナは私の恩人だ、もともと私は彼女のマネージャーをしていたが、個人的なことで思い詰めて飛び降りをしてしまった。
結果植物状態となった自分が目を覚ますとそれから1年経過していて……その間、ずっと彼女が看病していてくれたことを知った。
身寄りがないも同然の自分を看病してくれた彼女は、目覚めた数日後にいなくなってしまった。
一体今、どうしているのか……
涙ながらにそう語る累。
その言葉は、ほとんどが嘘です。
それは、ニナからすべてを聞き、その命を絶った野菊もよく分かっているはず。
だというのに、まるで類が語ったことが真実であるかのように、引き込まれてしまうのです!!
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これこそが累の持つ魔性の演技力……
野菊は必死にそれに惹きこまれないようにして、どうして自分のことを知っていたのかと尋ね返します。
すると累は、野菊はとても美しい、淵透世に生き写しの女性だと聞いていた、と答えました。
透世に似ていると言われることは、野菊にとって最も忌まわしい言葉……ですが、そこで野菊は必死にそのおぞましき感情をかみ殺して演技をします。
ニナは私の心の支え、私を苦しみのない場所に連れだしてくれたのは彼女だけ。
私は体も顔も境遇も嫌いでならない、「全てを捨てて別の誰かになって」、全く違う人生を生きられたらいいのに。
……その言葉こそが、二人が求めるものへの最大のカギとなる言葉でした。
それを聞いて、累は今まで深々とかぶっていたフードを脱ぎ、マスクをはずしました。
そこから出てきたのは、累の醜い顔……
野菊は思わず顔を背けてしまいます。
それは、累の醜さゆえではありません。
死んでいた母の顔にそっくりなその顔は、野菊の心に深い傷をつけた思い出を思い起こさせるから……
ですが累からすれば、自分の醜さが直視できなかったとしか思えません。
顔を背けるほど醜い女となんて、もうかかわらないほうがいいと言って立ち去ろうとする累。
ですが野菊は必死に彼女の肩を掴み、違う、醜いなんて思っていない、ただ私の知る人に似ていたから……と、累を引き留めたのです。
それを聞いた類の胸に、どんな思いがよぎったのでしょうか。
累はゆっくりと野菊を振り向き、言うのです。
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あなたは本当に、自分を捨てて別の誰かになりたい?
……野菊は、累を破滅に導くために。
累は、新たな光あふれる道を歩むために。
その二人の願いをかなえるための……鋭い牙が、お互いを捕えたのです……


というわけで、新展開となる本作。
累はとうとう野菊を手に入れ、また野菊も累の懐に入ることができました。
新たな、透世に生き写しの顔を手に入れ樽井。
そんな彼女が歩みだす新たな道は、果たしてどのようなものになるのでしょうか。
ニナの成功を超えるのか、世紀の大女優である母・透世の上を行くのか、それとも……
もちろん彼女の進む道が、順風満帆であるはずがありません。
彼女を待つ運命はいかなるものなのでしょうか……

そして、野菊の動向にも注目したいところ。
彼女の狙いは累の破滅、すなわち彼女が絶頂に立った時にすべてをぶち壊すことなのでしょう。
ですが、そんな彼女の身にも様々な出来事が巻き起こり……
累、野菊、彼女たちを取り巻く男たち。
このすぐ後ろに奈落が口を開ける輝かしい舞台は、どのようなシナリオが紡がれるのか?
目の離せない展開となることは間違いなさそうです!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!