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今回紹介いたしますのはこちら。

「クミカのミカク」第1巻 小野中彰大先生 

徳間書店さんのリュウコミックスより刊行です。

小野中先生は14年にコミックリュウの漫画賞を受賞しデビューした新人の漫画家さん。
15年よりその受賞作と同名タイトルの本作を連載開始。
この度めでたく単行本刊行となりました。

さて、本作は昨今はやりの食事漫画です。
いまや食事漫画も多種多様、何らかに特化した作品も珍しくはありません。
そんなご時世ですから、本作ももちろんある要素が目玉になっています。
その要素とは……


とあるデザイン会社。
難航した仕事がようやく納品にこぎつけ、オフィスの一同は安堵しておりました。
夜も更けてまいりましたが、仕事終わりといえばやっぱり打ち上げをしないと終われません!
じゃあ行こう!とみんな立ち上がり始めるのですが、そんな中で一人だけ、打ち上げを断る女性がいるのです。
その女性、クミカはきっぱりとこういいました。
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私、食事は必要ありませんので。

結局、クミカを除いた4名のメンバーで打ち上げにやってきました。
今回の仕事が無事終わったのも、そのクミカが活躍してくれたおかげ。
打ち上げの最中も残った雑事のために残業をしてくれていて、付き合いが悪いと怒るなんてとんでもないことです。
ありがたいありがたくないはおいておきまして、それにしてもクミカは珍しい「外星人」です。
様々な外の惑星の人々、外星人がこの星にやってくるようになって、いまや珍しくもなくなりました。
あちこちで外星人を見かけはしますが、クミカのように食事を必要としないという種族はレア。
なんでも大気中の水分や微生物、花粉といった様々な細かな物質を呼吸とともに吸い込んで栄養とするのだそうです。
食事代がかからないというのは羨ましいような気もしないではありませんが……
運ばれてきただし巻き卵のふわふわの食感や、絶妙の味。
これを味わえないなんてもったいない、とも思えます。
そんな話をしているうちに打ち上げは盛り上がっていき、2軒目に行こうか、となったのです。
が、その時、眼鏡の男性社員、チヒロが会社に忘れ物をしてしまったからと飲み会を抜けていきます。
僕を気にせず続けていて、と言い残して去っていくチヒロ。
ですが、その本当の目的は忘れ物なんかではないのです。
チヒロの目的は……そう、クミカです!

伝記も暖房もつけずに仕事をしていたクミカ。
寒さなんて我慢すればどうにでもなる、節電だという彼女に、チヒロは肉まんとピザまんを差し出します。
どっち食べる?どっちも食べる?とにこやかに問いかけるのですが、クミカはどっちもいりません、と取り付く島なし。
残業代さえ出ればいい、と黙々と仕事をつづけるのです。
チヒロはふと疑問に思ったことを尋ねてみます。
クミカの星では誰も食事をしないのか、という。
なんでもクミカの星は貧しい星なんだそうで、食事と言う生命維持に不必要なものは一握りの裕福な層のし好品でしかないのだとか。
クミカの両親も御多分に漏れず貧しく、頑張ってためたお金でクミカを送り出してくれたのだとのこと。
そんな両親に恩返しするため、もっと働かなければならないと考えているのです。
とはいえ、チヒロの親切心が分からないわけではありません。
残業を終えた後、今日はありがとうございました、と頭をさげて別れるのですが……
その日は雪も降り始める冷え込みを見せていまして。
クミカは体を襲う悪寒を感じたのでした!

翌日、ガッツリ風邪を引いてしまったクミカ。
心配した社長はマスクを手渡すのですが、もうそう言う段階ではありませんでした。
それでも働こうとする彼女の心とは裏腹に、体は自然と意識を失ってしまうのです。
その日はチヒロがクミカを家まで送り届けたのですが、その後3日も彼女は会社を休んでしまいます。
母星では風邪を引いたことがなかったという彼女ですが……そんな彼女から電話がかかってきます。
チヒロがその電話にでると、何とその電話口からは、助けて、死んじゃう、という弱弱しい声が聞こえてくるではありませんか!!
あわててチヒロが彼女の家に飛んでいき、大家さんに鍵を開けてもらいますと……
クミカは布団の中で苦しそうに震えているではありませんか!!
体はものすごい高熱を発し、汗もかいていません。
薄い布団一枚しかかけていない彼女に、大家さんから借りた熱い布団をかけてあげるチヒロ、これでもう少し様子を見て悪化するようなら病院だ、と考えていますと、その間もクミカは仕事を休んですみません、とうわごとのように呟いていて……
周りを見回せば、布団意外なにもないこの部屋、ガスも契約していないようで尽きませんし、エアコンはコンセントが抜かれていて……徹底した節約がされていることがわかります。
その時、突然クミカのおなかが鳴りました。
おなかがすいたのかな?と考えたチヒロですが、呼吸から栄養を得るはずのクミカのおなかがなぜ減るのでしょうか?
少し考えて気が付きます。
それは……律儀に装着しているマスクのせいだ!
最近のウィルスすら通さない高性能なマスクをしているせいで栄養が取れず、そのため体力が回復しないで衰弱していく一方だったということなのでしょう!!
2日以上お腹をすかせていたなんて!!
チヒロはクミカに少し待っててね、と声をかけ、外に出ていったのでした!!

やがてクミカは、今まで嗅いだことのないにおいで目を覚まします。
目を開いて目の前に現れたのは……チヒロでした。
そしてチヒロは、
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ぐつぐつと音を立てる鍋焼きうどんを差し出し、召し上がれ、と声をかけたのです!!
弱った体に絶対に効くはずの暖かな食事。
クミカは、私には必要ないからと断ろうとするのですが、その意に反して
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彼女の触手はうどんをひとすくいしたレンゲを持ったチヒロの腕をつかんでいて!?
今まで食事というもの事態を体験したことのないクミカ。
彼女の、素晴らしい食の世界への第一歩は……間もなく踏み出されることとなります!!


というわけで、今まで食べ物を口にしたことのない異星の人が、食事に目覚めていく物語となっていく本作。
他の食事漫画との最大の違いは、他の食事漫画……と言うよりも、ほとんどの人が行っている「以前食べたものとの比較」をしないことにあります!!
それどころか、甘いとか塩辛いとか、苦いとか酸っぱいとか、そう言った味の種類すら知らないわけですから……彼女の様々な料理との出会いは、たいへん刺激的なものになるわけです!!
ということは、当然自分の苦手な味というものも知らないわけで。
ただただおいしいものを食べて幸せになるだけではない、新たな食事漫画の形を作り出しているのです!!

そして本作のもう一つの目玉は、チヒロとクミカの恋愛模様。
チヒロのほうはクミカに気がありまくりなわけですが、クミカのほうは単なる上司の一人としか見ていません。
……あくまで、これまでは。
餌付けされる鳥のように……と言えば聞こえは悪いですが、とにかく親孝行にだけしか目を向けていなかった彼女に、チヒロは違う世界を見せてくれた相手になるわけです。
そうなれば、今までと同じ目では見られなくなるのも当然ではないでしょうか!?
果たして二人の関係がどうなるのか。
そこも注目ですよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!





どうでもいいことなんですけど、チヒロさんガスの止まっているおそらく電子レンジもないクミカさんの家にどうやってぐつぐつしている状態の鍋焼きうどんを持っていったのでしょうか……
カセットコンロ持参!?
愛のなす業ですなぁ!