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今回紹介いたしますのはこちら。

「真マジンガーZERO VS 暗黒大将軍」第8巻 脚本・田畑由秋先生 作画・余湖結輝先生 

秋田書店さんのチャンピオンREDコミックスより刊行です。

さて、Drヘルとの因縁の戦いに決着をつけた甲児。
これによって世界は平和になりました。
ですが、その平和はかりそめのものにすぎません。
世界を作り変えるほどの力を持っているマジンガーZEROは、やがて平和になったこの世界も飲み込もうとするはず。
甲児はZEROとの最後の決戦を挑むために、新たな世界へ向かったのですが……


圧倒的なZEROの力の前に、なすすべなく敗北を喫してしまった甲児。
俺は絶対に負けない、という意思もむなしくその意識は途絶えてしまいました。
これで一巻のおわり……と思いきや。
気が付けば……甲児は、学校の教室にいました。
しかも授業の真っ最中。
先生には注意されますし、クラスメイトには大笑いされてしまいます。
どこからどう見ても、平和な日常生活の一コマ。
……まさか、今まで繰り返してきた壮絶な戦いは……
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すべて夢だった、とでもいうのでしょうか!?

この世界は、今まで甲児が繰り返してきたどの世界とも違いました。
この世界のマジンガーZは、あくまで想像の産物。
甲児がパイロットとして乗り込み、Drヘルと対決した……どころか、そもそも実在すらしていないのです。
ですがその代わりに、その人気は絶大!!
1972年に生まれたパイロット搭乗型ロボットの元祖であるマジンガーZは、誕生するや否や大人気。
縮小仕掛けたアニメ界を好転させ、グッズなどの商品もあって爆発的な売り上げを記録、制作していた光子力動画株式会社は大儲け。
アニメは現在も続き、40年以上、2500回以上放送を重ねているのだとか。
関連作品も「帰ってきたマジンガーZ」「マジンガーZジェネレーションズ」「マジンガーZヴォイジャー」などなど、数え切れないほど生み出され、何と世界124か国で放送中!
マジンガーは世界の書籍・映像・経済を支配しているといっても過言ではない、というのです!!
ちなみに甲児も、たまたま兜姓だったため、マジンガーにあやかって名付けられただけの同姓同名なんだそうです。
この世界では、甲児の家族は誰もかけることなく、楽しそうに、平穏に暮らしています。
何度も愛を誓い合った弓さやかは、同じクラスながらロボット工学の論文を高校生にしていくつも書いている天才で、ほとんど交流すらない高嶺の花的な存在。
親友だったボス……は、ボスにビジュアルがそっくりなだけの棒田という普通の、光子力動画に就職を目指す高校生にすぎないのです。

何もないまま、時間は過ぎていきました。
マジンガーが永遠に勝利をつづけ、永遠に続いていく世界。
確かにこれは、甲児が思い描いた世界かもしれません。
毎日を過ごしていく中で、あの思い出は完全に夢の中の記憶になっていき、薄れていってしまいました。
ですが、甲児の脳裏にはあんパンを食べるたびに、いや、あんこを食う浴びに何かがよぎります。
あんこを食う、あんこをくう……
ですがその何かが形を成すことはありません。
やがて甲児は、光子力動画にはいるためにもう勉強を始めます。
学校の勉強はもちろんのこと、マジンガーZの膨大な数の漫画、アニメ、スピンオフのデータを完全に頭の中にたたき込みました。
これで憧れの光子力動画入社も近づいたか、というある日のこと。
勉強の息抜きにコンビニに買い出しに行くと……その帰り道に、奇妙な人物に出会ったのです。
マジンガーのお面をかぶったままたたずむ男。
ですがそのお面は、この世界での絶対的なアイドルであるマジンガーとはフォルムが違うようで……?
なんだか気になった甲児、急に逃げ出すように走り始めたその男をおもわず追いかけてしまいます。
散々追いかけた先の袋小路でようやく追いついた甲児。
男もようやく観念したようで、足を止めました。
どうして逃げるんだ、と問いかけると、男はお面をとってこういいました。
デリートされるからだ、と。
甲児は、その男の顔に……見覚えがあるような気がするのですが……絞り出すように、あんたは誰だと聞くのが精いっぱい。
彼がだれかは分からないものの……なぜか甲児にはわかるのです。
この男が、ここにいてはいけない存在だということを!!
男は笑います。
ここはマジンガーZ最強と選択された世界だ。
世界はいくつもの可能性を持って分岐するはずだった。
だが今はその可能性が完全に失われた。
俺はマジンガー最強のために不必要な、マジンガーに出ていないキャラクター。
だから、この世界にいるわけないんだ、この世界に存在してはいけない。
そこまで話すと、男は急に苦しみだします。
そして、激しい光を発しながら、男は消え去っていってしまうではないですか!!
この夢の世界に俺がイレギュラーとして出現する旅デリートされてきた!
思い出せ、あんこ……あんこく……あんこくだ……
そのセリフを最後に、チリ一つ残さず消えた男。
その出会いは、甲児の脳裏に雷鳴のように記憶を思い起こさせます。
マジンガZが勝つことしか許されない世界、それが選択されたというのか。
そしてその選択は……俺がしたのか!?
気を落ち着かせるために、先ほどのコンビニで購入したあんパンを口に運ぶ甲児。
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あんこをくう……あんこくう、あんこく。
暗黒……
暗黒大将軍!!
その言葉を思い出した甲児は、鮮烈な映像を思い浮かべます。
それは……マジンガーZが完膚なきまでの敗北を喫するイメージ!!
こんなことを考えてはいけない……でも、何故考えてはいけないんだ!?
そんなことがよぎった直後。
あのお面の男が、どこからともなく再び姿を現したではありませんか!
そして、甲児は彼の名をはっきりと思いだしたのです!
あんたは、剣鉄也!!
鉄也は言います。
お前が思い出したから復活したのさ、兜甲児。
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お前の思いは、この世界を統べる神より強い!!

マジンガーZの敗北するイメージ、そして剣鉄也。
二つのものを得た甲児は、夏休み返上であるものを作り上げます。
それは、オリジナルのマジンガーZのストーリー。
そして、そのタイトルは……「マジンガーZVS暗黒大将軍」!!
そしてそのストーリーは、今まで子の世界では絶対に、決して負けることのなかったマジンガーZがボロボロにされ……そして、それを救うべくグレートマジンガーが現れる、というこの世界では衝撃的なものだったのです!!
絶対に許されない、マジンガーZの敗北。
甲児はそのストーリーを動画にし、そして世界中から見られる動画共有サイトにアップロードします。
当然、とんでもない反響を呼び……世界中に飛び交うのです。
マジンガーが負けるなんてありえない。
自分だったらこうするのに。
だったら俺が作ってやる。
そうだ、創ってもいいんだ!!
世界を駆け巡る創造、想像の思い。
それが光となって……甲児へと集まって……!!!
その瞬間、世界はその真実の姿を現すのです!!


というわけで、いよいよクライマックスを迎える本作。
マジンガーが勝利し続ける平和な世界、というある意味でのハッピーエンドにたどり着いた甲児。
ですが甲児にもわかっているのです。
この平和が作られた、かりそめのものであるということを。
そして甲児は、創造力というものを集めて蘇ることとなります。
その先に待っているのは、この平和とは対極にある、絶望を体現したマジンガーZEROとの対峙。
果たして甲児は、そして鉄也は、絶対にかなうはずがないと言いきってもいいほどの戦力差があるZEROとどうやって戦うのでしょうか。
やってくる結末は……?
その戦いは、思いもよらない援軍によって予想だにしない展開となります。
ロボット漫画、アニメのファンならば思わず打ち震えてしまうその驚愕のラスト……まさに必見!!
マジンガーを超越したマジンガーを倒せるものは何なのか?
壮絶な始まり方をした本作の、圧巻のラスト。
これを見逃す手はありません!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!