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今回紹介いたしますのはこちら。

「HaHa〔はは〕」 押切蓮介先生 

講談社さんのモーニングKCより刊行です。

さて、一年弱ぶりの押切先生の新作単行本となる本作。
今まで実に様々なジャンルの作品を描いてきた押切先生ですが、本作はなんとそのタイトル通り、押切先生のお母さんの伝記的作品になっているのです!!


1963年、下関。
その海辺に建つ、大きな旅館にはお客さんが次々とやってきていまして、それを大勢の仲居さんが出迎えます。
そんな旅館の一室で、窓枠に腰をかけて大あくびをしているセーラー服姿の少女がいました。
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少女が考えていたのは、とんでもないことです。
ビールが飲みたいわ、地下室から一本頂戴するか。
そう言いながら、部屋を出て旅館内を闊歩するのです。
すると、仲居さんの一人が彼女に声をかけてきます。
あら、のぶちゃん、制服のままうろうろしてるとおかみさんにまた怒られるわよ。
そう言われた彼女、亘江はどこ吹く風といった様子で反論。
お虎ババアに見つかんなきゃ問題なしだわよ、と。
亘江はこの旅館の女将の娘です。
ですが、旅館の跡を継ごうとかそう言った気持はほとんどないようで、旅館の手伝いもきがむいたときにちょこっとやる程度。
おまけに未成年の身空で飲酒を目論もうとするわけですから、まあなんといいますか……不良というやつなわけです。
ですがこの旅館のおかみさんは、そんな娘に戦々恐々としてのさばらせておくタマではありません。
亘江を呼びだし、ビールを盗みなさんな、制服でうろつくのをやめなさいと静かに諭すのです。
当然亘江もそう言われるのは重々承知のこと、ビールの一本や二本くらいでなんだ、制服だってお客に見られなきゃ問題ないでしょう、と悪びれません。
そんな亘江を見て女将は、強情なところがお父さんにそっくりだ、とぼやくのですが、そこに関しては露骨に嫌な顔をする亘江。
あんな傲慢な人と一緒にしないでよ、といらだちをあらわにするのです。
ここぞとばかりに女将は攻め込んできます。
自分本位に生きると大人になって損をする。
爪切りやハサミ、使ったら元の位置に戻す。
いつまでも制服のままじゃなく、帰ったら家でのけじめをつけて……
説教が本格的に始まりますと、亘江はさっさととんずら。
お母さんの説教は絡みつく蛇のようで、聞けば聞くほどお肌も心も荒れていく気がする、と毒づきながら地下室へ。
そしてビールを豪快に1ケースゲットし、私はまだうら若い18の乙女なんだから、気ままに生きて酒をかっ喰らう……何にも縛られない生き方をするんだ!と手前勝手な言いぐさで自分を肯定するのでした。

時と場所は変わり、1998年の川崎。
そこで、惰眠を貪る愛息子・良太に起きろと声をかける、すっかり「お母さん」になった亘江がありました。
あれだけ自由を愛し、母の小言を受け流していた彼女ですが、
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グーグー寝てないでパッと起きる、カーテンも開けて布団もあげなさい!と良太に口うるさく言っております。
かと思えば、食卓で見るテレビから流れる下ネタに大爆笑するなど、当時の面影もまだあったり。
そして食事の後、いまだ良太が布団を上げていなかったのを発見しますと、
布団を上げないと運気が下がる、何でも習慣にして面倒くさがるとこういうことが後跡悪条件につながっていくんだ、とくどくどと説教するのです。
良太は、うちの母親は一に説教二に説教、俺はまだ18の小僧なんだからのびのびと生きたいよ、などとどこかで聞いたような理屈を胸の中で繰り返すのです。
この説教は誰かに伝授されたのか、と考えながらスーパーのバイトに向かおうとしますと、そこで自転車の鍵がないことに気が付きます。
自転車にもつけっぱなしにはなっていないですし、鞄のどこを探してもありません。
ちゃんともとに戻さないからこうなるんだ、鬼の首をとったように言いだす亘江。
これはもう走って行けってことなのよ、運動して運機を動かせってこと!と独自の持論まで展開し……
自転車も運動ですよとささやかな抵抗をする良太ですが、そんなことを言っている場合じゃありません。
結局良太はダッシュでバイト先に行き、ひとしきり働いた後ダッシュで帰ってくることとなるのです。
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……帰ってきた後、自転車の鍵、お母さんの鞄にあったわ、今回は私がうっかりしてたけど、良太にとっては良い機会だったはずよ、と悪びれずに打ち明けられることとなるのですが!!

そんないろいろと……個性の強い母親は、どうやって育ったのだろうか。
ふとよぎったそんな考えを、良太は口に出して尋ねてみることにしました。
すると亘江は、青春時代思い出を打ち明けてくれます。
お母さん昔スケバンだったのよ、町で極道の殿方と喧嘩に花を咲かせたっけ、と……いきなりけっこう衝撃的な言葉を吐いてきたじゃありませんか。
それを聞いた良太、冷静に考えると母親のことを何も知らないし、聞いては行きないような気がしていた、と気が付きます。
自分を生んだ人間の半生には、必ず物語があるはず。
それが子にとってつまらないはずがない。
いつか母が死んでしまった時、もっと峩々のことを着糸置けばよかったと後悔するのはイヤだ。
そう考え、良太は決めたのです。
母の人生に耳を傾けることを……!!


というわけで、押切先生のお母さんの青春時代を描く本作。
ただ時系列を追うように物語が進んでいくのではなく、青春時代の出来事と、現代のアレコレをセットにして進んでいきます。
今まで押切先生作品のおまけ漫画やら、自伝的作品にはちょくちょく顔を出していたお母さん、現代パートではそのイメージのままの豪快でコミカルな日常を見せてくれます。
それでいて、時として心にジンとくる言葉を紡いでくれるなど、決めるときは決めてくれるのです!
そしてそんなお母さんがどんな生い立ちなのかというところを描いていくのが青春パート。
押切先生のおまけ漫画から受けるイメージとはかけ離れた、かなりドラマチックな出来事が描かれております!!
亘江が選ぶ将来とは?
そんな彼女が忌避する父親とは?
ただ者ではないオーラをプンプンにおわすおかみはどんな人物なのか?
そして、そんな一家に降りかかる過酷な運命とは!?
青春パートと現代パート、それぞれ違った味わいで楽しめる内容の一冊になっております!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!