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今回紹介いたしますのはこちら。

「アースロコロッサス」第1巻 東裏友希先生 

メディアファクトリーさんのMFコミックスより刊行です。

東裏先生は09年にちばてつや賞を受賞し、11年にモーニングでデビューした漫画家さんです。
その後14年にスピリッツで原作付きの作品「ナイチンゲールの市街戦」で初連載。
15年から活躍の場をコミックフラッパーに移し、本作の連載を始められました。

さて、本作は主人公が突然とんでもない運命に巻き込まれるタイプの作品です。
ですがその巻きこまれる主人公が、ちょっと変わったタイプの人物でして……


誰にでもよく見る白日夢はあると思う。
でも自分の場合はたまにごっちゃになって、夢なのか現実なのかわからなくなる。
そんな時の僕なりの解決法……
目をつぶる、3つ数える、目を開く。
そして前にある世界が僕の現実だ。
そう言う彼の名は、丹波千尋。
ですが今回、彼の目の前にある現実は非情なものでした。
友人がパンツ一枚にされて数名のクラスメイトに囲まれ、鼻血をだし、彼が熱心に描いている漫画を音読させられて……
いじめです。
物陰に隠れ、そのいじめのやり取りを聞き、頬に汗をつたわせる千尋。
そして千尋は……

その後数日、友人、堀川は学校を欠席しました。
もしかして昨日の件が原因で……?
そう考えている千尋ですが、彼はなぜかそれを喜んでいます。
子の調子じゃ明日からの修学旅行も休みか、などと考えていますと、先生が千尋に、堀川にプリントを届けて、明日の旅行も体調がよさそうなら誘ってみてくれ、と声をかけてきたのです。
それを見たあのいじめていたクラスメイトも、俺たちも来てほしいていって他と伝えてくれ、アイツがいないと夜がつまらない、とニヤニヤ。
千尋は基本的に、堀川が唯一の友人です。
いつも一緒にいるけど、君も描くの、漫画?
そう聞かれてしまった千尋は、愛想笑いをしながら、そんなの描いてないよ、堀川が描いたの魅せられただけで……と、その場をやり過ごそうとするのでした。

プリントを持っていくと、堀川は本当に風邪を引いて休んでいたようでした。
ほとんど治っているとのことですが、ぶり返すとよくないからとお母さんに明日の旅行はやめておけと言われているのだそうです。
千尋はどう思う、と聞いてくる堀川に……こう答えました。
残念だけど、風邪なら仕方ないよ、うん。
その顔には、ひきつった笑顔が張り付いていて……
短い沈黙の後、なんかごめんな、という堀川に、お前が謝るなよ、と言い残して去っていく千尋……
堀川から姿が見えない場所まで来ると自然に足は駆けだし、何がしっかり治せたよ内心ほっとしたくせに、プリントを渡したし声もかけた、その上で来られないんだから仕方ない、僕は悪くない!といつの間にか叫び始めていたのです。
そんな時のこと。
千尋の目の前に、突然何かが現れました。
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見たことのない、まるで漫画に出てくるようなスーツを着た、女性が……何もない空間から、突然!!
その女性に抱き付き、押し倒してしまう形になった千尋ですが、女性はなんとそんな千尋の背中に腕を回し、もう少しこのまま、チヒロ、と声までかけてきたではありませんか!!
これは白日夢に違いない、といつものように目を閉じて3つ数えると……その女性は、忽然と消えていたのです。
いつもの白日夢にしては、妙に現実的でしたが……

千尋は祖母と二人暮らしです。
高校くらいは出してやるとは言っている祖母ですが、千尋はまだ中学生。
毎日息を潜め、その場しのぎで生きている彼に取って、5年後の未来などまだ何も見えない、真っ暗闇も同然なのです。

そんな鬱々とした思いを抱えながらやってきた修学旅行。
そこで、堀川は同じ行動班になった女子に邪険に扱われます。
元々女子だけのはずだったのが、余っているからと勝手に千尋をくっつけられたんだから、そっちは一人で行動しろ。
……それだけならまだしも、あの日のことまで言われてしまうのです。
堀川がいじめられている姿を発見し……そして、何もできないまま見捨てて逃げた日のことを!!
いじめられている堀川に取って、千尋だけは味方だと思っていたのに、あんなことをしてのこのこ一人で旅行に来るなんて。
そう言われた千尋は、苦し紛れに言うのです。
ちょっと待って、勝手なこと言わないでくれる?
味方?何それちょっと意味わからないんだけど……

完全に班のメンバーから見捨てられた千尋は、一人京都の町を歩きます。
いつもの白日夢か、頭が土偶のようになった犬を見かけ、困惑する千尋ですが、その直後にもっと困惑することになるのです。
なんと、堀川が旅行とは別口で、一人で京都に千尋を訪ねてきていたのです!!
堀川は、なんと雑誌の漫画賞で大賞をとったのだそうで!!
千尋はいろいろアドバイスくれたから、どうしても一番に受賞の知らせを見せたくって、本当にありがとう。
それだけ言って、堀川は帰ろうとするのです!!
いままで保身のことばかり考えていた千尋ですが、そんな堀川の友情に胸が熱くなり……
クラスの奴らなんかほっといていいんだ、せっかく来たんだし、一緒に回らないか?
そう声をかけたのでした!!

二人は仏像なんかを見て回り、千尋はそんな仏像の夢をよく見るんだなどと会話をしながら楽しみます。
ですが、そんな楽しさもつかのまでした。
いじめていたクラスメイトをはじめとした、クラスの皆と鉢合わせしてしまったのです!
しかも千尋はその瞬間、堀川を突き飛ばしてしまったのです。
そしていじめのターゲットにならないため、僕を巻きこむなと心ないことまで言って……
なぜ堀川がいるのか、どうなっているんだ、説明しろ。
先生が千尋に尋ねるのですが、口を開いたのは堀川でした。
僕、千尋に来るなって言われたんです。
……それは100%真実ではありません。
嘘だといいわけしようとする千尋ですが、堀川はさらに続けます。
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全部知ってるよ、いじめられてたボクを見捨てたことも、旅行に行かないとわかってあからさまにほっとした顔をした意味も。
気づいていないバカな堀川を演じたら、昨日までのことなんかまるでなかったみたいにへらへらついてくるんだもん、キモいよ。
千尋も漫画の受賞を見てわかったでしょ。
僕はお前とは違う。
……漫画の受賞を知り、いじめっ子たちも堀川が一目置くべき存在であると認識。
そして、友達いじめるとか陰険だな、と自分たちのことを棚に上げて千尋を槍玉にあげ、今日からお前、敵認定な、といじめを始めると同然の宣言をしてきて……!!
千尋の脳内で繰り広げられる、自分がいじめられる白日夢……
ですが今回の千尋は、いつもの儀式をやる前に……手にしていたリンゴ飴を投げ捨て、キレました。
敵認定だ?上等だ。
お前らこそ全員俺の敵だ!
そもそも元凶はお前らだ、身体能力が高きゃ偉いのか、一人じゃ何もできない無能のくせに!
悔しかったらかかってこい、でも無理だ、何故なら僕は今日死ぬから!
遺書にはお前ら全員個人情報をさらして、社会的に抹殺してやる!!
女子共も自分じゃ何もしないくせにねちねち文句だけはいて、同調圧力かましてきやがって!!
先生も、クラスの不和に気づいてもデリケートゾーンは当人任せで知らんぷり、生徒のケアも教師の役目だろ!!
……そして、最後に堀川に対して思いの丈をぶちまけます。
僕はな、お前のことがすごいうらやましいよ。
僕は怖いんだ、何かして評価されるのも、恥をかくのも、自分の底を知るのも。
でも本当はそんなことどうだって言い、僕は普通に生きたいだけなのになんでみんな邪魔するんだ。
こんなんじゃ5年どころか明日だって見えない、見たくない。
僕は死んで、こんな世界とはとっとと決別してやる、お前らはこの下らない現実で生き続けるがいい!!
……そこまで吐きだしきって……千尋は少し落ち着きます。
白日夢だ。
目をつぶる、3つ数える、目を開く。
そして前にある世界が、僕の現実。
その現実は
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クラスメイト達が突然現れたそいつが巻き起こした何かに、バラバラにされていると言うとんでもないものだったのです!!


というわけで、最低の主人公の前に起きた異常から始まる本作。
紹介した部分の、主人公の暗く沈んだ、姑息な日々もグイグイ読ませるものがありました。
爆発の後何が変わるか、と思った直後、物語の毛色は一変!
突然現れ、未曾有の災害を起こす巨大な土偶のようなそれに、主人公は立ち向かうことになる、という物語の転調に驚かされることでしょう!!
が、本作の主人公はここまででもわかるように、ちょっと主人公には向かない性格。
果たしてそんな彼が、人々を無慈悲に、いともたやすく殺めるような相手に立ち向かうことができるのでしょうか?
ある人物との出会いをきっかけに、千尋は苛烈ない運命にいざなわれることに。
絵に描いたようなクズである千尋は、この出会いと衝撃の事件から成長をし、戦うことができるのでしょうか。
そして、堀川との関係は……?
運命の戦いは、目前にまで迫っているのです!!

さらに巻末には描き下ろしのおまけ漫画が。
そのおまけ漫画を読むと、本編の味わいがより一層深まること必至!
最後まで見逃せない内容になっていますよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!