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今回紹介いたしますのはこちら。

「忘却のサチコ」第5巻 阿部潤先生 

小学館さんのビッグコミックスより刊行です。

さて、トラウマをつかの間忘れることのできる幸せの時間、美味しい食事を求めながら、今日も編集の仕事に精を出すサチコさん。
俗に言うゆとり新入社員の小林などの登場もあり、サチコさんもトラウマで呆然とする暇もなくなってきました。
果たして今回のサチコさんはどんなトラブルと、美味しいご飯に巡り合うのでしょうか!?


サチコさんは、福岡にやってきていました。
今回の出張の目的は、担当している姫村先生の対談のお仕事の付き添いです。
姫村先生に今日のスケジュールは把握なさっていますでしょうか、と尋ねてみますと、そりゃもちろんですよ、といいお返事が返ってきました。
が、その中身は「午後6時から中洲のお店でお坊さんと対談」というものすごくざっくりした内容でした。
そのお坊さんは、道玄と言う名前の、元タレントで出家されたというちょっと変わった経歴の人。
しかも、この大段のきっかけは以前福岡の新聞のインタビューを受けた姫村先生が、道玄のファンだと公言していたと言うことで、わざわざセッティングしてくれた、と言う……言うなれば姫村先生がきっかけの対面なわけです。
だというのに、姫村先生はそのことは「そんなことを言った気もしますけど……あんまり覚えてないな」などと言う始末!!
ものすごい勢いで不安の湧き上がってくるサチコさん。
この姫村先生、ひょうひょうとした雰囲気の大人の男性、と言う風貌に反して、意外にも天然な人物。
気を付けねば、と気を引き締めるのですが……実はもう一つ姫村先生には気を付けなければいけない癖があるのです。

対談まで大分時間ありますよね、と急に言い出した姫村先生。
そんな姫村先生に、サチコさんは血相を変えてこういうのです!
確かに時間は余裕がありますが、あまり油断されないほうがいいかと思います!!
サチコさんがこれだけ必死になるのは、ひとえにその姫村先生の癖のせい。
姫村先生は……ちょっと目を離したすきに、一人でどこかに消えてしまう、逃亡癖があるのです!!
今日はどこにもいかないように身張っていなくては、と気を張るサチコさん。
ですが、お昼ご飯も行かせない!!とまでは言えません。
せっかくだし、と姫村先生が選んでやってきたのは……とんこつラーメンのお店でした。
福岡といえばおいしいもののたくさんある土地ですが、真っ先に思い浮かぶものの一つがこれでしょう!!
姫村先生がチョイスしたお店は、もともと屋台のお店で、近くの魚市場の競りの合間に、市場関係者が差さっと食べていた、と言うのが元々の、老舗のラーメン屋さんなんだそうです。
メニューは「ラーメン」「替玉」、そしていくつかの飲み物とトッピングだけというシンプルさ。
一杯500円とリーズナブルなラーメンの食券を2枚購入し、中に入っていきますと……受け取った店員さんが、「かたさ」を尋ねてきました。
戸惑うサチコさんですが、下調べばっちりの姫村先生は慌てずそれが麺の硬さであることをサチコさんに教えてあげました。
なるほど、とうなずくサチコさんはとりあえずとばかりに「ふつう」で注文。
姫村先生もそれに乗っかりました。
何でもこのお店は、麺の硬さだけでなく、油の量やネギの量なんかも細かくオーダーできるのだとか。
そうなんだと感心しているうちに……やってきました、
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豚骨ラーメン!
目の前に現れるなり鼻に飛び込んでくる豚骨の良い香り。
さっそくいただきますをして、麺を持ち上げ……一気に口に運びました!!
見た目はかなり油ギッシュな印象のある豚骨ラーメンですが、いざ食べてみれば油のしつこさはそれほど感じません。
それどころかむしろ、ちょっとあっさり目の味わいです。
そしてそのスープがよく絡み、なじむ細麺……!
それがつるつると、口の中にどんどんと吸い込まれていくのです!!
次は、ほぐした肉と一緒に麺を口の中へ。
肉は少し塩から目の味付けがされておりまして、まろやかな味わいのスープの絡んだ麺と合わせると、それが丁度よいアクセントとなってまた別の味わいが楽しめます!!
パンチの効いたわけではない、働く人たちが毎日食べるからこその飽きの来ないその味わい……
サチコさんは無事今回も
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忘我の領域に到達することができたのでした……

その味わいに没頭するがあまり、すっかり周りが見えなくなってしまっていたサチコさん。
ふと我に帰り、慌てて姫村先生のほうを振り返るのですが……そこに姫村先生の姿はありませんでした!!
店員さんに隣に座っていた人を知らないかと尋ねてみると、やっぱり一人でどこかに出ていってしまったとのこと!!
大慌てのサチコさん、出ないとは思いながら携帯電話に出てみますと……意外にもあっさり電話に出てくれました。
姪っ子さんが今年受験とのことで、太宰府天満宮にお守りを買いに行ったとのこと。
サチコさんはものすごい勢いで大宰府に向かい、何とか合流することができたのでした。

そんなトラブルがあったものの、とりあえず無事たどり着いた打ち合わせのお店。
入るなりサチコさんの目を引いたのは、大きな大きないけすでした!
そしてそこには、とっても新鮮なイカが泳いでいるではありませんか!!
そのイカこそがこのお店の売りだとのことで……イカの活け造りと言うのも博多の名物の一つですし、これはぜひ食べなければならないところでしょう!!
ところがそこで、対談をセッティングしてくれた新聞社の方がこんなことを言い出したのです。
でも今回は、道玄さんがイカがダメだからイカ抜きのコースにしたんですよ。
……イカ、抜き!?
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サチコさんに、ひょっとしたら今日イチかもしれない衝撃が襲い掛かったのでした!!


というわけで、福岡に出張したお話を収録した今巻。
果たしてサチコさんは絶品のイカを口にすることができるのか?
あと、姫村先生の対談は無事に済むのか?
気になるこのお話の他にも、様々な料理をサチコさんは堪能することとなります!
キャンプに行ってのニジマスの塩焼き&燻製、高知に行っての鰹のたたき、鍋焼きラーメン、ツガニうどんといったメジャーマイナー混合グルメ弾丸ツアー……
さらに、新人の小林がらみのエピソードも2編収録されていまして……美味しいお食事のみならず、小林の感情に動きが見えたりもします!!
サチコさんのほうは相変わらずですが、彼女を取り巻く男性陣はいろいろ動きを見せそう……!?

今巻もサチコさんの奮闘ぶりと、食事の時の安らぎをおなかいっぱい堪能できる仕上がりになっている本作。
今回は仕事の忙しさもあってか、俊吾さんのことが頭をちらつかなかったようで、俊吾さんがらみのストーリーは進展しませんでした!!
とはいえ前述の通り、サチコさんの周りの男性陣は動き始めておりますので、これからも料理だけでなくそちらも見逃せなさそうですよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!