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今回紹介いたしますのはこちら。

「ぐらんば」 押切蓮介先生 

幻冬舎さんのバーズコミックスより刊行です。

さて、様々な作品を手掛けてきた押切先生ですが、つい先日発売された自身の母親の自伝的「HaHa」に続き、またまた最新作の単行本を刊行されました!
本作は、年老いたおばあさんが主役の作品となっています。
押切先生作品といえば、御老人でも油断ならないパワフルさを持っていることがほとんどなのですが、この作品では……?


山間の小さな村、幻冬村。
そこに住む老婆、山路八重はいつものように仏壇に手を合わせ、外へと出かけました。
するとそこに、独居高齢者の家を回って世話を焼いたりするボランティアの人が現れます。
お困りのことはないか、孤独を和らげる一番の薬は対話だ、肩でもお揉みまいたししょうか。
そう言っていろいろと声をかけてくるのですが、八重は結構でございます、ワシャ一人で大丈夫でございます、と取り合わないのです。
そして後ろを振り向きもせず歩いていく八重……
そんな後姿を見送りながら、ボランティアの人たちはつぶやくのです。
山路のおばあさんは哀れな方だ。
夫の両造さんが最近ヒグマに殺されてしまい、村では殺したのは彼女自身なのではないかと根も葉もないうわさまで流れて……
今ではすっかり村から迫害された存在となってしまっている。

実際、村人が八重を見る目は冷ややかです。
道端の一角に、山で採取した山菜を広げて路上販売をしている彼女を、住民たちは遠巻きに見るだけ。
それならばまだいいほうです。
八重をやたらと敵視している白川のおばあさんは、それを見るなり並んでいる山菜を蹴っ飛ばし、毒草を食わせてわしらを殺す気だろう、と因縁をつけ、挙句の果てに噛みついてきやがるのです!!
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八重は抵抗もせず、ひたすら耐え忍ぶばかり。
その場は先ほどのボランティアが駆け付けてきて白川を引き歯がしてくれて何とか収まったのですが……蹴り飛ばされた山菜は、無残に散らばり、踏みつぶされてしまっていたのでした……
それでも八重は一言の文句も言わないまま、いつも通り家に帰り、眠るのです。

翌日、朝早くから八重は山へ登ります。
いつものように、路上販売のための山菜を摘むために。
サワオグルマ、ヨモギ、ゼンマイ、アシタバ……
ヒョウタンボク、これは猛毒。
そうして山菜をとっているうちに日も高くなってきまして、八重は山の中で弁当を広げ、食事を始めました。
風の音以外ほとんど何も聞こえない静かな食事。
八重はゆっくりと握り飯を口にし、水筒のお茶を啜り、平穏の時に浸っていたのですが……
その時のことです。
木々の間に……腹をすかせたヒグマの姿が見えたのは!!
八重はいち早く身を隠そうとしましたが、すでにヒグマは八重の姿に気が付いてしまっています。
ヒグマの気を引くために握り飯を放った八重ですが、もうヒグマの目にはそんなものは入りません!!
一直線に突進してくるヒグマ!!
八重はヒグマから視線をはずさない様、バタバタと後ろある気で距離をとろうとするのですが……
背後に崖があることにまでは意識が言っていませんでした!!
真っ逆さまに断崖に落ちていってしまう八重……
うっそうと茂る木々の中に落下し、幾重にも折り重なった枝がクッションとなり、さらに落下した先は水深の深い川。
このままおぼれ死んでしまうかとも思われましたが、八重は何とか力を振り絞って川から這いあがります。
ですがそれだけでもう体力は限界。
体を動かすのもおっくうになるほどの疲れが彼女の体を襲い、いつの間にか日も暮れようとしています。
ここでおっ死ぬのか。
いやがおうにも、そんな考えが頭をよぎります。
ですが、八重はそれでもいいかもしれない、とも思いました。
老いをかみしめてみじめに生きるより、死んで楽になったほうがいいいいじゃろ。
もうええじゃろ、もうええじゃろ……
今まで、ただひたすらに耐え続けてきた彼女の人生。
晩年を迎えてもその我慢の日々は続き、それはこれから先も延々と続いていくのかもしれない。
そんなことを考えているうちに、もう彼女の体からは、涙とともに生きる気力すら流れ出てしまっていたのです。
孤独な老婆の孤独な死が訪れる。
そう思われたその瞬間のことです。
森の奥から……何か、やってきたのは。
何か、虫が鳴くような。奇妙な音。
それを耳にした八重が目を開き、上体を起こして
その音のほうを見てみると……
いたのです。
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今まで見たこともない、筆舌に尽くしがたいおぞましい姿をした怪物が!!
あの世からのお迎えか、とも考えました。
ですが……いくらなんでも、こんなのはお迎えなわけがありません!!
一遍の情け容赦もない、爪の一撃を振り下ろしてくる怪物!!
先ほどまでの死の覚悟は一瞬で消え去り、八重はそりゃもう必死で逃げ出し始めました!!
ところが……その逃げ出したほうにも、また別の怪物がいるではありませんか!!
それも一匹や二匹ではありません。
10匹以上はいようかと言う、とんでもない数のおぞましい怪物がひしめいているのです!!
一度は死んでもいいと思ったのは確かです。
ですが、こんな怪物に惨たらしく殺されてもいいとは、とてもじゃないが思えません!!
牙を剥き襲い掛かってくる怪物たち。
もう逃げ場なんてありません。
それならば……八重がとるべき道は……ただひとつ!
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生き残るには、倒すしか無え!!


というわけで、まさかの85歳の老婆VS13匹の巨大怪物の戦いが始まる本作!
最初こそ弱弱しい御老人だった八重ですが、このあまりにも理不尽な運命に直面し、徐々にその心の中にある感情を湧き上がらせることとなるのです。
それは……怒り!!
怒り一つをその胸に抱き、八重はこの正体不明の怪物軍団と戦っていきます。
その戦いの中で、様々な事実が明らかに。
この怪物の正体は何なのか。
八重が歩んできた、あまりにも辛い人生とはどんなものなのか。
そして、この山の中での戦いの規模はどんどんと拡大していき……やがて、とんでもないスケールへと変わっていくのです!!
本作が迎える怒涛のクライマックスは、もうなんていいますか……押切先生、ノリノリ!!
完全にある方向に振り切りまくった勢い任せのラストシーンは、いろいろな意味で必見と言わざるを得ませんよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!