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今回紹介いたしますのはこちら。

「双子の帝国」第1巻 鬼頭莫宏先生 

新潮社さんのバンチコミックスより刊行です。

さて、15年に「のりりん」「なにかもちがってますか」と、相次いで連載作を終了させた鬼頭先生。
ですが数か月ほどで早くも、今度はコミック@バンチにて本作の連作を開始し単行本刊行となりました。
そんな本作は、戦時下のある男女にスポットライトを当てた作品になっているのです!


一人のくたびれた中年男性が、役場で手続きをしていました。
彼は、娘を「口入れ」に来ていたのです。
男性のその選択はやむなく選んだもので、娘の今後が心配でならないようです。
役場の人間は、どこかの街で働くか、大陸に送られて神聖娼婦になるか……私にはわからんと冷たい言葉を返します。
さらにそれに付け加えて、こういうのです。
それに、もうあんたの娘じゃないよ。

男性が外に出ると、空には
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海軍の軍艦が飛行していました。
それを見た男性は絞り出すように叫びます。
お前らが大陸なんぞに手を出すから、こんなことに!!
わしらは飢えて……!
それ以上の言葉が続くことはありませんでした。
それを聞いた軍人が、非国民が、と罵りながらうちのめしたからです。
口入れされた娘は、その様子を役場の中から窓越しに見つめることしかできません。
おとうちゃん。
娘の言葉は、おそらくもう父親に届くことはないのでしょう……


街の片隅に、老人が露店を開いています。
そこに一組の男女が現れ、ドウオはどこにいる、と尋ねてきました。
反応を見せない老人に、男はここら一体を仕切っている土豪のドウオだ、聞こえないのか、とさらに尊大に質問を繰り返すと……老人は言いました。
このあたりのモンじゃないな、どこかの山岳民か?自分の山に帰りな。
すると男は、少し間を開けた後、帰る所はないと返答。
老人もその男が来ている装束に刻まれた文様を見て、何かを悟ったようで……ドウオの屋敷を教えてくれました。
男はわかったとだけ言い残し、女はお礼を言ってその屋敷へ向かい始めます。
老人はそんな二人に、口の利き方に気を付けないと首をはねられるぞ、と彼らに忠告しました。
小さくなっていく二人の背中を見ながら、老人はつぶやきます。
空霞(コンシャア)か。

同じ町のある家に、数名の男が訪ねたのですが……そこで待っていたのは、天井からぶら下がって物言わぬ姿になった女でした。
この数名の男は、村上と言うリーダー格の男が指揮をとり、今週中に5人の女性を「納め」ようとしていたらしいのですが、その中の1人がこうして自ら命を絶ってしまいました。
光軍の軍艦が入港するとのことで、ただでさえ女が足りないと言っているらしいのですが……村上は、なんとしても埋めるしかない、と他の女を探すことにしました、
部下の一人は、ドウオに頼んではどうかと提案。
ドウオは何十人か娘を育てているから、うまく話をつければ都合してもらえるかもしれない、と考えのです。
が、村上はドウオのことを嫌っているようで、その提案には乗りません。
そこでまた別の部下が、こんなことを言い出したのです。
どこかの山岳民らしい見かけない娘が市場をうろついてるって話がある、と!

その頃、あの男女がドウオの屋敷の近くに来ていました。
男は、女性にこういいつけます。
フア、お前はここで待っていろ、そこを動くなよ。
フアと呼ばれた女性は、はいガウ様、と男をガウと呼び、命令を受け入れます。
……が、フアはガウの姿が見えなくなってしばらくたつと、どこかへ歩き始めてしまいます。
そんなことをしてしまったせいでしょうが、ほどなくあの村上の部下たちが彼女を見つけ……じわじわと追い込み、人気のない場所に追い詰められてしまいました。
一緒に来い、と手を伸ばしてくる村上の部下たち。
フアは伸びてくる男の手を前に、血相を変えて叫ぶのです。
駄目です、私に触らないでください!!
フアはそう言って壁に張り付くまで後ずさり。
村上の部下は、ドウオには話が付いているから騒いでも無駄だ、神聖娼婦になれるんだから感謝しろ、と直も女性に迫り……
フアはとにかくそれを断ります。
普通の女性ならば、見知らぬ男に連れ去られようとしているだけでも十分その反応は普通のものと言えるでしょう。
ですが、どうもフアはそれ以外にもどうしても「触れられたくない」理由があるようなのです。
私に触ると、皆さんに迷惑がかかるんです。
彼女がそんなことを言う理由とは一体……?

その頃、ガウはドウオと話をしていました。
どうやらドウオはガウ達の一族とつながりがあったようなのですが、二人の会話によればその一族は光軍に襲われ、全滅してしまったようなのです。
生き残ったのは、ガウとフアだけ……
それを聞いたドウオは、ガウに金を渡し、流れ者として生きろと言ってきました。
このあたりはもう光軍の勢力下で、ドウオも彼らと「うまくやっていく」しかないそうで。
ガウたちを受け入れるということは、そのうまくやっていくうえでの障害になるというわけです。
仇を討とうなどとは考えるな、とアドバイスを与え、話は終わるかとも思われたのですが……どうやらガウがここに来た目的は、ある質問をすることこそにあるようで。
ガウは尋ねるのです。
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魔法使いの生き残りはどこにいる?
……魔法使い。
それを探すことが、ガウの目的のようなのですが……
ドウオは、本来ガウたちのほうが魔法使いに関しては詳しいはず、自分が知るわけはないと言うばかり。
逆にガウたちの一族に、魔法使いはもう死滅したと聞かされているとか。
いまさら魔法使いを探して何をしようと言うのか?
逆にドウオは質問をしてきて……

村上の部下たちに襲われていたフアはと言うと……大変なことになっていました。
フアを強引に連れていこうとした男二人が、
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突然倒れ、こと切れたのです!!
これが彼女の言っていた「迷惑」なのでしょうか。
一体彼女は何者なのか?
フアとガウ、二人の目的は一体……?


というわけで、ガウとフアの魔法使いを探す旅を描いていく本作。
国同士の戦争と言うテーマに、さらに魔法使いと言ったオカルティックな要素も混ぜ込んだ作品になっています。
ガウとフアは空霞と呼ばれる一族のもので、空を飛ぶためのある道具に関して優れた能力を持っている種族。
そして、一年前に光軍に襲われて全滅してしまったそうです。
しかしガウの目的は、一族の他の生き残りを探すだとか、光軍に対しての復讐だとか、そう言うものではありません。
ガウの目的は、魔法使いに会うこと。
魔法使いにあって、フアの身に隠されたある問題を解決してもらうための旅をしているのです!
その目的のみならず、人物像も普通の漫画の主人公らしいものではなく……
このように本作は、鬼頭先生ならではの味付けが設定、ドラマ、人物像、様々に色濃く出ているわけです!!

本作は他国の占領下にある大陸で、抑圧されている民が暮らす大陸が舞台。
さらに何かを企んで戦果を広げる軍人たち、上に苦しむ光軍の国の民、光軍の暴虐に耐える大陸の民。
そしてガウとフア……
ガウとフアは、彼らの持っている不思議な力と、高い航空技術を使って光軍の追手を書きくぐりながら旅をしていきます。
その道中でまた別の存在に目を付けられるなど、紆余曲折を経つつ物語は進みます。
魔法使いにガウの目的を達してもらうことができるのか?
そもそも魔法使いの生き残りはいるのか?
好き勝手をしている光軍は、一層隆盛するのか、それとも崩壊するのか?
様々な興味が尽きない本作、怒涛の展開を予想させる状況で次巻へと続いていきます!!
人の様々な思惑、そして死が飛び交う本作……これからの先も目が離せませんね!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!