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今回紹介いたしますのはこちら。

「奈落の羊」第1巻 きづきあきら先生+サトウナンキ先生 

双葉社さんのアクションコミックスより刊行です。

さて、きづき先生とサトウ先生のタッグによる最新作となる本作。
本作は、一組の男女が出会うことによって始まる物語になっています。
その二人が主役となるわけですが、その二人の立場は現代ならではの闇を抱えたもので……


自分の部屋で、パソコンに向かって何やら呟いている男、修二。
まず名乗り、あいさつをして、その日にあったことを枕にして……コンビニのロールケーキを取り出し、そのレポートをすると宣言します。
修二がやっているのは……そう、インターネットでの生配信です。
近頃は生配信も一般化してきて、それだけで生活をしている人もいるくらい。
ですがそれはごくごく一握りにすぎません。
この修二も御多分に漏れず、「その他大勢」の一人でして、今日の放送の視聴者は150人ほど。
まぁ一般人のケーキを食べる姿に150人もの人が注目している、というのはそれはそれですごいような気もしますが……
流れるコメントも、「最近修二はつまらない」などというものが目につきます。
修二は苛立ちを感じながらもそれを隠し、そのつまらねぇ配信を何もしないでただ眺めてるお前のほうがつまらねえよ、と内心毒づくのでした。

放送を終えて部屋を出ると、修二の姉が話しかけてきます。
独り言うるさいんだけど、という姉に、修二は配信で、リスナーに話しているんだと答えました。
ですが彼女は、それを聞いたとたん大笑い。
ネットで素人が人気者気取りか、リスナーとやらは何人いるのか?と扱き下ろすのです。
とはいえ彼女が辛辣な言葉を投げかけるのは修二を心配してのこと。
最近大学もあまり行かなくなった修二に、いいかげんごっこ遊びのようなことはやめて現実を見ろ、と諭します。
修二は、配信は金になるんだ、もっとリスナーが増えれば……と蚊の鳴くような声で反論するばかり。
その裏で、修二は打算的な考えばかりを巡らすのです。
俺の配信が見たくて支援してくれる奴らがいるんだ、もっと企画がはまればアイツらは喜んで金を出すはずだ。

場所は変わり、とあるネットカフェ。
個室のソファで膝を抱えるようにして眠っていた女性が、軋む体を起こしながら立ち上がりました。
使用料金を払うと、彼女に残されたお金は残りわずか。
スーパーで半額になったおにぎりを二つ購入して飢えをしのぎ……そして、彼女は虎の子であるスマートフォンをいじり始めました。
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今すぐあってくれる方募集です、とても困っています。
プチで0.5、ネカフェで短く済ませたい方お待ちしてます。
……彼女は、こうして男性に対しての「行為」をすることで日銭を稼ぎ、毎日をしのぐような生活をしているのです。
が、そんな生活がいつまでも続けられるはずがありません。
それでも簡単に脱却できるようなら苦労はないわけで……
募集の返事が来るまで、ハンバーガーショップで時間を潰そうとする彼女。
押し寄せる不安のせいか、コーヒー代を払おうとした際に小銭をこぼしてしまいます。
慌てて拾おうとしたところに、手伝ってあげようと男性がその小銭に手を伸ばしました。
ですが彼女は、まるで奪われそうになったものを守るかのようにおかねの上に覆いかぶさったではありませんか!
その異様な態度に戸惑う男性……ですが、その奇妙な態度を見てにやりと笑うのです。
その男性は、修二でした。
視聴者が飽きないためのネタを探し、街をうろついていた修二は、彼女を見て何かを思いついたようです……!!

女性は、残りの財産を前に考えていました。
残っているおかねは1000円弱。
ネットカフェ代を払って、一日一食にしても到底足りはしません。
あんなことまでしたのに、どうすればお金が手に入るんだ。
押し寄せる不安に、とうとう女性は我慢できずに大きな声を上げてしまいました。
大声を上げ、ぶつぶつとつぶやき、せわしなく体をゆすっている……
そんな様子を、周囲にいる人々は遠巻きに見ているだけ、だったはずなのですが。
「ヤバいのいるんですけど」。
そう言いながら、その様子をまじまじと見るどころか、配信している人物がいました。
修二です。
修二は、明らかに普通ではない状態の彼女を、「ネタ」の価値ありと見出したのです!!
視聴者のコメントに従うふりをして、そっと彼女に近づいて様子をうかがう修二。
その時の彼女のスマートフォンには、「すごく困っている、手or口で0.5、おねがい!!」という生々しい文章が打ち込まれていて……!!
そんな時、修二は話しかけました。
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お金欲しいの?
視聴者のコメントがどんどんと流れる様子を見て、修二は何を思っているのか?
突然話しかけられた彼女は当然警戒し、身を縮めます。
彼女の警戒を解くため、修二はやさしく話しかけました。
大丈夫、俺、かわいそうな人ほっとけないんだ。
君、家出か何か?いつからこんな生活してるの?
何か力になれるんじゃないかな。
その一見優しく聞こえる言葉の裏で、修二はこう考えていたのです!
ネタが、オモチャが必要だ。
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コイツらのオモチャ、ブッ壊しても大丈夫なオモチャが。


というわけで、いわゆる「生主」と、ネカフェ難民が出会い、大きく運命をゆがめていく本作。
この後物語は、悍ましい方向へと進んでいくことになります!!
その場しのぎの毎日を送っている彼女は、メイと名乗りました。
修二はメイに施しを与える代わりに、面白いことをやれと強いていくのです!!
本作の主人公の一人である修二は、きづき+サトウ先生が得意とする(?)どうしようもないクズ。
そのクズが、目先の人気のために彼女にすることはやはりとんでもないことばかり。
そして配信というものの性質上、徐々にそれはエスカレートしていくわけで……!!

この後、修二の友人である嘉門や、メイとあるつながりのある女性のユウキといったキャラクターも登場。
そのキャラクターたちも、一癖もふた癖もあるとんでもない人物ばかり!
歪んだ修二とメイの歪んだ関係を、彼らがさらにめちゃくちゃにかき回し、事態をさらにとんでもないものへと変えていってしまうのです!!
衝撃的な導入から始まった本作は、さらに衝撃的な展開へ。
謎に包まれたメイの背景や、修二の現在の状況を招いたモノなどのこれからの鍵となることがらも示唆され、混迷も強まっていき……!
おぞましい、という言葉がピタリとはまるドラマから、目が離せなくなることでしょう!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!