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今回紹介いたしますのはこちら。

「兄妹 少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿」第7巻 木々津克久先生 

秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックスより刊行です。

さて、十二人委員会と兄の死の真相を探るために奮闘する蛍。
幽霊である兄、圭一の力や、彼女の特技である世渡りを駆使して徐々に情報を集め、緑川や黄多川、桃園という一芸を持つ知人もでき、真実にいよいよ近づいてきたのですが……


蛍の作戦によって、病魔に取り付かれていた黄多川の伯父、達也の体調は回復。
十二人委員に関係があると思われる達也ですが、それをズバッと聞くのはさすがに危険そうですし、圭一が病室で達也に張り付いて情報を入手することにしました。
くれぐれも慎重に捜査をしようとしていたのですが、詳しい事情までは知らない黄多川は達也に度ストレートにこんなことを聞いてしまうのです。
この赤木蛍って子の兄は警察らしい、知ってる?と。
警察に指導もしている武術の達人である達也。
達也は赤木、という名字から……すぐに赤木圭一、という名前を導き出しました。
と言っても、直接は知らない、優秀な警官らしいから一度会ってみたい、とのこと。
怪しい態度はそれほど見て取れませんし、見舞いに来る人々からも人格者と慕われているようですし、十二人委員会のような怪しい組織とのつながりはな粗相に見えるのですが……

圭一に見張りを任せ、黄多川とともに病院から帰ろうとした蛍。
ですがそこで、思いもよらない人物を発見することとなるのです。
十二人委員会とのつながりが確実に存在する謎多き男、「フードの男」を!!
圭一に後をつけてもらうのが一番安全かつ確実な方法なのでしょうが、今圭一は達也の病室。
呼びに行っていては間に合いませんから、やむなく蛍は北側に別れを告げ、自分であとを追うことにしました。
が、フードの男はどんどん寂しいところへ進んでいってしまいます。
そして袋小路になっている工事現場にやってきたところで、フードの男を見失ってしまったのです。
きょろきょろとあたりをうかがっている蛍の背後から……こっそりと近づくフードの男。
その手が蛍にかかろうとしたところで、誰かの伏せろという声が響き渡りました!!
とっさに蛍が伏せると、飛んできたのは大きなレンガ。
フードの男にそのレンガがあたり、とりあえずの危機は避けられました!
それを投げたのは……黄多川です!!
突然別れを告げて駆け出していった蛍の態度が明らかに怪しかったため、フードの男の後をつける蛍を、さらに付けたのだとか。
事情なんて何も知らない黄多川ですが、フードの男が蛍に敵意らしきものを持っている、ということはわかります。
黄多川はおなじみのオープンフィンガーグローブを装着し、こいつをぶっ倒してから詳しい話を聞く、と構えたのですが……
大勢の男を相手にしても一歩も引かなかった黄多川をして、強者だと感じさせるフードの男。
それでもひるまず、黄多川は左の肘から右ストレートという連携でつっかけていくのですが、やはりフードの男はただものではありません。
黄多川の右腕をキャッチし背中のほうに折り曲げて極めようとしたのですが、黄多川も負けじと自分から回転してその立ち関節から脱出!
すかさず足払いを敢行するのですが、フードの男はジャンプして避け、黄多川の頭を抑えにかかりました!
その腕を捕まえて関節を決めようとする黄多川、男はその腕を強引に引き抜いて脱出したのですが、生まれたわずかな隙に黄多川の左ストレートが直撃したのです……が!
そのさく裂した先には、先ほどのレンガが構えられていたのです。
それでもパンチを連打して攻める黄多川。
しかし男は、そのパンチをすべてレンガで受け止めてしまい……
その様子を見て、蛍はとっさにアッパーを撃てとアドバイス。
ハッとした黄多川は、足を跳ね上げてレンガを男の手から弾き飛ばすことに成功!!
そのまま一気に攻め倒す……と思いきや、男は黄多川をがっちりとつかんで動きを封じ、上空に飛んでいたレンガの落下先へ黄多川を誘導。
黄多川は脳天にレンガの直撃を受け、昏倒してしまうのでした。

……そしてフードの男は、ゆっくりと蛍の前へと足を進めます。
黄多川の解放をしようとした蛍に、フードの男はこんなことを言うのです。
その子なら大丈夫、念のため救急車を呼んでやれ。
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……あまり詮索するな、蛍。

翌日のこと。
結局黄多川は軽い脳震盪だけで済んだようで、当たり前のように学校に来ています。
その頑丈さに安堵しながらも、昨日の出来事に蛍は混乱を隠し切れません。
あのフードの男は、蛍のことを知っている。
さらに優しく語りかけてきたあの声には、聞き覚えがあるような……
そう悩んでおりますと、件の黄多川のほうから蛍を訪ねてきました。
黄多川に強引につれられて、やってきたのは理科室。
ここなら誰もいない、と言って黄多川は、いきなり本題を切り出してきたのです。
あのフードの男は何者だ、と。
あれだけ腕つの立つ男を尾行していた理由は何なのか、あんな男を放ってはおけない。
そう問い詰められると、蛍は緑川の追っている事件の手伝いをしているんだ、と言い訳をしようとしたものの、そこに当の緑川が現れてしまうのです!
蛍の様子のおかしさを見つけて後をつけたのだそうですが、これでその場しのぎの嘘はばれてしまいました。
緑川と黄多川がフードの男について何やら議論している隙をついて、いったん逃げ出そうとする蛍ですが、その前にある人物が立ちふさがります。
あろうことか……桃園が!!
桃園は、先日蛍にはめられた件(結果として桃園にはうれしい結果になったわけですが)を問い詰めようとしてきた様子。
そのせいで逃げ出すことに失敗し、緑川と黄多川にも今逃げようとしたけど何なんだ、と一層圧力を高めてきて……!!
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慌てる蛍ですが、さらにそこに新たな人物が登場します。
青葉真琴。
桃園の友人であり、この学校一の天才少女です。
天才でありながら、変人ともいわれる彼女、人気のないこの理科室で眠っていたらしいのですが、この騒ぎで目を覚ましたようです。
無視しようかとも思ったものの、友人まで出てきてはそうもいかないと起きだし、第三者の視点から今の状況を整理してあげるよと言いだしたのでした!!

今までのいろいろな状況を緑川たちから聞いた青葉は、今までの蛍の隠し事やうその多さや、兄の失踪の謎を追っているという話、蛍の独自の情報源があるという推測などを立て、一つの推論を立てました。
それは、以前桃園に話したことのある、「兄の霊が自分のそばにいる」という話が、真実なのではないか、というものでした!!
そもそも霊魂軟化の存在は信じていなかったらしい青葉なのですが、あるならあるでもいいというスタンスだのだとのこと。
そして何より、蛍にとっては真実なのかもしれないし、蛍が信用できる人物なのか、ということのほうが大事だと思う、というのです。
今まで蛍が首を突っ込んできた様々な事件を思い出してみれば、一度でも自分の利益のためだったり、人を落とし入れるための者だったりしたことはない、ということがわかるはず。
この点においては信用に足る人物だと考えられると思う。
妄想に取り付かれているだけという可能性ももちろんあるが、それはそれで優しく寄り添って見守ることもできるだろう。
そこで、蛍にしゃべってもらいたい。
彼女に取って、何が真実なのかを。
すべてをゆだねられた蛍。
蛍の頭脳は必死に回転を始めます。
何か考えないと。
みんなが納得して、この場が丸く収まるうそを。
今までうまくやってきたじゃないか、誰も傷つけないで……
そうだ、兄の親友というのを作って、その人がいろいろ調べていることにして、十二人委員のことは伏せて……
ですがそんな考えとは裏腹に……
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蛍は、涙ながらにすべてを語っていたのです。
途中できづいて止めようとしても、あふれ出る涙と思いは止められず……
自分はこんなにも、誰かに打ち明けたかったんだ。
何も隠さず、何も飾らない真実を語った蛍。
すべてを吐きだしたそのあと、目の前には……4人の「仲間」がいたのでした。


というわけで、友人の多い蛍ながら、今までだれ一人としていなかった「仲間」ができた本作。
このままこの心強い仲間とともに、クライマックスへとまっすぐに向かっていくことになります!!
黄多川の師匠である達也、フードの男……
十二人委員会とつながりがありそうな人物の謎が次々に明かされていき、思いもよらない人物と委員会の真実も暴かれていき……十二人委員会のすべてがつまびらかにされることになるのです!!
ですがその中で、見たくないものを見てしまうものもいるわけで。
この後も様々な出来事が巻き起こり、謎とき以外にも挫折や復活といったドラマが繰り広げられていくのです!!
そしてクライマックスではとうとう、兄の失踪の真実が明らかに!!
すべての伏線を回収し、収まるべくところに収まる本作。
木々津先生作品中最高と言ってもいい、素晴らしいエンディングが待っていますよ!!

さらにおまけマンガ6Pにあとがきも描き下ろされ、カバー下本体にもお話の大地ともいえる小ネタなんかも用意されています!!
今巻丸々一冊で最終章という美しい終わりを迎える本作、まさしく必見ですよ!!


今回はこんなところで!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!