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今回紹介いたしますのはこちら。

「うしおととら 完全版」第14巻 藤田和日郎先生 

小学館さんの少年サンデーコミックススペシャルより刊行です。

さて、東西妖怪戦争を何とか収めることには成功したうしおととら。
その戦いの中でうしおは母に再会することができたのですが、白面の者の復活がすぐ近くまで迫ってきていることも判明しました。
間近に迫る決戦を前に、うしおととらは……?


静岡県、海辺の町。
小さな商店で、一人の少年がパンと牛乳を買い求めていました。
少年の来ている服は薄汚れていまして、明らかに野宿か何かを繰り返している様子。
この辺の子じゃないみたいだけど、お母さんと来たの?と店員さんが心配してい尋ねてみますと、少年は首を振ってこたえました。
ううん、いないんだ。

少年は、キリオでした。
獣の槍伝承候補者の一人にして、白面の者に運命をもてあそばれた少年……
すべての真実を知り、すべてを失ったどころか、自分には最初から何もなかったんだと知り、自暴自棄になってしまったのです。
今の彼は何のあてもなく、放浪の生活を過ごしています。
斗和子の残したお金がまだ数十万円ほどは残っているようですが、それが付きた時どうなるのか?
それはキリオ自身にもわかりません。
もはや寄る辺もないキリオに取っては、もはやこの先のことなどどうなっても構わないのかもしれません。
彼が今のぞむのはただ一つ。
もう予後と見る嫌な夢は見たくない……
キリオは相棒の九印とともに、小高い丘の上にある小さな神社の中で眠りにつくのでした。

その夜のことです。
外から何かの声が聞こえ、キリオは目を覚ましました。
しっぺい太郎は来てないな、今宵今晩このことは、しっぺい太郎に知らせるな。
そう歌っているのは……大勢の、巨大な……猿の化け物!?
歌って踊る猿たちの真ん中には、一人の女性が横たわっていて……
そして、猿たちのリーダーであるらしい、白髪のひときわ巨大な猿が歩み出ます。
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信濃の国の光前寺、しっぺい太郎に知らせるな。
歌い終わるとともに、猿たちは女性に襲い掛かります。
危険を察知したキリオは飛び出すのですが、その決断はあまりにも遅すぎました。
女性は白毛の猿に殴り殺されてしまい……キリオは怒りのままに猿たちにえれざーるの鎌を振り下ろすことになってしまったのです。
いくら自暴自棄になったとはいえ、キリオの実力は本物。
瞬く間に猿たちを退治していくのですが、数が多すぎてこのままではらちがあきません。
そこで九印とともにリーダーである白毛を片付けようとしたのですが……白毛は驚くほどのスピードでキリオを翻弄してきたのです!!
そしてその速度だけでなく、知恵やパワーも頭抜けていました。
九印の肩から放たれるカノンを、八社の瞬間を狙って攻撃することで暴発させるなどの頭脳プレイ見せたうえ、真っ向からキリオも撃破!!
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白毛は今日は余興があって面白かった、と女性の亡骸を引きちぎって仲間の猿たちとむさぼり喰らい、立ち去っていってしまったのでした。

真由子は静岡の親戚のうちに遊びにきていました。
この地方では、突然一人の女性が失踪し、行方知れずになったというニュースでもちきりになっています。
そのニュースで報道された女性の姿は、あの猿たちの犠牲になった少女そのものなのですが……
骨まで喰らい尽くされた彼女が発見されることはもうないでしょう。
ですがこのニュースには、ある恐ろしいうわさもくっついていたのです。
彼女が失踪する前日、彼女の家の玄関に「白い羽の矢」が立っていた……
その噂は、去年の秋田でもささやかれていました。
秋田の事件の犯人もやはり猿の化け物で、そいつはうしおが仕留めました。
とはいえ解決していることはごく一部の者しか知らないわけですから、今回の件もその事件を彷彿させる、と人々を震え上がらせていたのです。
そしてその白羽の矢が立った家の少女がさらわれる、というのはおとぎ話にも伝わっています。
毎年人身御供を差し出せと要求する神がいて、旅の僧がその神を猿の化け物だとみやぶり、しっぺい太郎という犬とともに退治した、という。
そのおとぎ話を思いおこさせる今回の事件、まさかこの失踪者も妖怪に?と、真由子と親戚の家のご近所さんであり、たまたま遊びに来ていた由加里はおびえるのですが……
そのお話が、冗談では済まなくなっていしまうのです。
……由加里の家に、白羽の矢が立っていたのですから!!

由加里は泣き崩れ、震えます。
いたずらならいいのですが……今まで様々なことを経験してきた真由子は、それがいたずらではないと確信しているようです。
そこでおとぎ話に詳しいおじいちゃんに、そのお話の妖怪はどうやって倒したのかと聞いてみると、こう答えてくれました。
お坊さんとしっぺい太郎が、いけにえを捧げるための箱に、しっぺい太郎と一緒に
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身代わりに入ったんだ、と。
それを聞いた真由子は、その瞳に決意の炎を燃やしました。
……いつもならば頼りになるうしおととらにお願いするところです。
ですがあいにく二人は写生のための旅行に出てしまっていて、連絡をつける手段がありません。
だったらもう……!!
たった一人でも、由加里を助けるために行動することにした真由子。
そして、その妖怪に完全に叩きのめされてしまったキリオ。
多くの人間の運命をもてあそぶ強力極まりない猿の妖怪、狒々の凶刃は容赦なく襲い掛かるのです……!!


というわけで、キリオと真由子の物語となる「あの眸は空を映していた」を収録した今巻。
アニメ版では残念ながらカットされてしまっていたこのエピソード、真由子とキリオの距離が縮まり、そしてあのキャラのあの力が発揮される重要なエピソードとなっています!
それだけでなく、強力な妖怪に対するキリオや真由子の奮闘ぶり、そして「しっぺい太郎」をめぐるエピソードpなど、ドラマ面でも見ごたえある内容なのです!!

そしてこのほか、こちらも重要な長編エピソードである「TATARI BREAKER」も収録!!
うしおととらはもちろん、麻子も活躍し、個性的でインパクトあるキャラクターも登場し、さらに今後の戦いにも大きくかかわる要素の登場する、こちらも必見のエピソードです!!
さらにギャグ調ながらじんわりくる短編エピソード、「満月」「かがりととらおつかいに」も収録されていまして、たっぷり楽しめる一冊になっていますよ!!


今回はこんなところで!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!