ky0
今回紹介いたしますのはこちら。

「鬼滅の刃」第1巻 吾峠呼世晴先生 

集英社さんのジャンプコミックスより刊行です。

吾峠先生は13年に少年ジャンプの漫画賞を受賞し、翌年デビューした新人の漫画家さんです。
デビュー後に発表された読み切りはどれもが独特の雰囲気を持つ個性的な作品で、その世界観に多くのファンが付きました。
そんな吾峠先生が満を持して16年から連載を開始した本作。
その内容は……?


雪の降りしきる山中。
少年は、少女を背負って懸命に歩いていました。
少年は意識を失っている少女に語りかけ続けます。
禰豆子、死ぬなよ、死ぬな。
絶対助けてやるからな、死なせない、兄ちゃんが絶対助けてやるからな!!
妹、禰豆子に懸命にそう語りかけながら、少年……炭治郎は、この状況に至る前のことを思い起こすのです。

炭治郎、という呼びかけに振り向くと。母親が炭治郎の前に膝をついて顔をぬぐってくれました。
里に炭を売りに行こうとしていた炭治郎ですが、その顔が煤で汚れていたのです。
雪が降って危ないから、行かなくてもいいんだよ、と声をかけてくる母親に、炭治郎は正月になったらみんなに腹いっぱい食べさせてやりたいから、少しでも売ってくるよと答えました。
そんな炭治郎に、弟や妹たちが自分たちも町に行きたいとせがんでくるのですが、今日は無理だよとお母さんが諭してくれました。
見送ってくれる弟たちに手を振りながら街へ向かう炭治郎。
そんな炭治郎に、まだ小さな弟を背負った禰豆子が声をかけてきました。
ky1
この子を寝かしつけてたんだ、大騒ぎするから。
お父さんが死んじゃって寂しいから、みんなお兄ちゃんにくっついて回るようになった。
そう言ってくる禰豆子の背中ですやすやと眠る弟の頭を撫でてやり、今度は禰豆子に見送られながら炭治郎は出発するのでした。
……炭治郎は歩きながら考えます。
生活は楽じゃないけど、幸せだな。
でも人生は空模様がある、移ろって動いていく。
ずっと晴れ続けることはないし、ずっと雪が降り続けることもない。
そして幸せが壊れるときには……いつも血の匂いがする。

町につくと、人々は炭治郎を歓迎してくれました。
この雪の寒い日ですから、炭はいくらあってもありすぎるということはないでしょう。
よく炭を売りに来るだけでなく、障子の貼り換えなんかを手伝ったりもする炭治郎に、町の人々は好印象を抱いているようです。
そんな炭治郎のもとに、割れた皿を持ってくる少年がいました。
これを割った犯人にされてしまった、助けてくれ!
そう言ってくる少年が差し出したお皿に炭治郎は顔を近づけて……匂いを嗅ぎ始めました。
どうやら炭治郎は、人並み外れた嗅覚を持っているようで。
しばらくかいでいると、炭治郎は顔を上げて……猫の匂いがする、と言いました。
つまり皿を割ったのは少年ではなく、猫だ、と。
町の人々もその炭治郎の力をよく知っているようで、猫の仕業なのか、と自然にその事実を受け入れるのでした。

そのあとも町の人々の手伝いをあれこれしているうちに、日が暮れかけてしまいました。
早く帰らないと、と炭治郎が帰路を急いでいますと、山に入る前にある傘屋の主人が炭治郎に声をかけてそれを制止しました。
お前山に帰るつもりか、あぶねえからやめろ!
獣が近づいてきたりしても、炭治郎ほど鼻が利けば未然に防ぐことができます。
だから大丈夫だと答える炭治郎ですが、それでも主人はそんな言葉などお構いなしとばかりに、いいから来い、と言ってくるではありませんか。
なぜなら……「鬼が出る」から……!

昔から、人食い鬼は日が暮れるとうろつきだす。
だから夜は歩き回らず、明日早起きして帰ればいい。
そう言って、主人は半ば強引に炭治郎を自分の家に泊めるのです。
でもそんな、人を食い殺すほどの凶暴な鬼から、「家の中にいる」だけで身を守ることができるのでしょうか?
主人は言います。
いや、家にも入ってくる。
くるが、「鬼狩り」様が鬼を切ってくれるんだよ。
そんな話を聞きながら、炭治郎はウトウトしてきます。
打とうとしながら、こんなことを考えていました。
おじさんは家族を亡くして一人暮らしだから寂しいんだろうな、今度弟たちを連れてくるから、怖がらなくてもいいよ。
鬼なんかいないよ、大丈夫。
……うちのばあちゃんも、死ぬ前に同じこと言ってたな。

……幸せが壊れるときにはいつも血の匂いがする。
家に戻った炭治郎を迎えたのは……
ky2
血まみれになり、息絶えた家族たちでした。
母も、妹も、弟も、みなすでに息はありません。
絶望に打ちひしがれる炭治郎ですが……禰豆子だけはまだ体にぬくもりがあります。
彼女を抱え、町に戻り、手当をしてもらう……!
なんでこんなことになったんだ?
炭治郎はそう心の中で問いながら、禰豆子を背負って山を下り始めたのです。

襲い掛かる寒さ、疲労感。
ですが歩く速度を緩める余裕はありません。
まだまだ町までは距離があるんだ、死なせない、絶対に助ける、兄ちゃんが助けてやる!!
そう自分に言い聞かせながら歩く炭治郎の背中で……禰豆子が、起き上がりました。
そして、大きな声で吠えたではありませんか!!
急な出来事と雪のせいで足を滑らせ、転倒する炭治郎。
慌てて起き上がり、禰豆子を探すと……禰豆子は二本の足で立ち上がり……
ky3
牙をむいて、襲い掛かってきたのです!!
……鬼だ。
おじさんの言葉を今、思いだした。
禰豆子が人食い鬼?
いや、違う、禰豆子は人間だ、生まれたときから!
炭治郎の思いもむなしく、禰豆子は人間ではありえないその尋常ならざる力を一層強め、さらに体そのものを大人のそれのように巨大化させて覆いかぶさってきます。
……血まみれになり息絶えていた家族。
その中で一人、鬼と化して生き残っていた禰豆子。
一体炭治郎が留守の間に何が起こったのでしょうか。
そしてあの惨劇を巻き起こしたのは、まさか……?
襲い掛かる禰豆子と絶望を前に、炭治郎は……!!


というわけで、幕を開けた和風伝奇アクション。
第一話にして主人公の幸せな日常は打ち壊され、ただ一人残った禰豆子も鬼と化してしまいました。
夜歩き、人を食い殺す鬼。
その伝説上の存在かと思われていた鬼が目の前に、それも妹がそうなってしまった。
すべてを失い、それ以下の最悪の状況にたたき落とされた炭治郎が歩む道とは……?
人食い鬼と炭治郎の戦いは、この最悪の状況から始まることとなるのです!

本作の売りはそのショッキングな状況から始まるドラマティックな物語でしょう。
そんなお話に、はっきりと本作らしい色を付けているのが、やはり吾峠先生ならではの独特の雰囲気です!
物語のリズムやキャラクターの造形、独自のセンスからくる言葉選び……
細やかさとダイナミックさ、シンプルさと描きこみを併せ持つ絵柄も相まって、このムードにはまる人は徹底してはまってしまうはずですよ!!


今回はこんなところで!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!