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今回紹介いたしますのはこちら。


「本日の四ノ宮家」 山田果苗先生 

エンターブレインさんのビームコミックスより刊行です。


山田先生は13年にエンターブレインさんの漫画賞に応募した作品でデビューした新人の漫画家さんです。
15年より本作の連載を開始し、この度めでたく単行本刊行となりました。

そんな本作は、とある一家の日常を描いた作品です。
少し変わった事情は抱えているものの、平穏に暮らしてはいたある一家に突然とんでもない人物が現れて……?


克四朗と秋三朗は走っていました。
ようやくたどり着いたのは、墓地の前。
そこには彼らの兄弟が待っていて、遅刻をとがめてきます。
学校あるんだからしょうがない、とぼやき、さらにはもう月命日に墓参りするのはやめないかと提案する遅刻組ですが、遅れてきておいていきなりのそれは何度と長男である光一朗は怒りをあらわにするのです。

彼らの母親は、5年前になくなりました。
そして、父親とはもう3年会っていません。
克四朗は寂しくないか、とよく聞かれるたしいのですが……兄3人、弟1人と言うシチュエーションは、寂しいどころかむしろうるさいくらいだ、と答えるのです。
5人が母の墓前にやってくると、そこにはすでに先客が。
まぎれもなく5人の家、四ノ宮家の墓前で手を合わせている彼女ですが、5人はその彼女に全く見覚えがありません。
誰なんだと首をかしげていますと、彼女のほうが5人に気が付き、話しかけてきたのです。
五兄弟?五兄弟ね?
うれしそうな笑顔を浮かべながらそうたずねてくる彼女に、そうだけど、と戸惑いながらも答える五人。
すると彼女は、会えてうれしい、とその笑顔を一層明るくするのです。
彼女は、四ノ宮まりと名乗りました。
四ノ宮。
5人と同じ名字ですが、父の親戚か何かでしょうか。
光一朗が尋ねてみますと、彼女はちょっともじもじしてから、こう答えたのです。
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えーと、お父様の……妻、になりました。
そう言うまりの左手薬指には、きらりと光る指輪が……!?
……いきなり現れた父の再婚相手。
子供たちと顔もよあわさないばかりか、何一つ連絡することもなく再婚してしまうとは……!
5人は絶句するほかないのですが……

彼女は、なぜか四ノ宮家まで付いてきました。
何やら機嫌の悪そうな表情を浮かべている克四郎に、お腹すいてるのね?と尋ねてきて、いきなり料理を始めます。
克四朗より上の三人の兄たちはみな声をそろえて手伝うといいだし、彼女の手助けを行います。
そんな様子を見て、克四朗の不機嫌さは増していくのです。
彼の不機嫌さの原因は、父の再婚や、以上になれなれしい彼女の態度ではなく、それを自然に受け入れてしまう兄たちの態度なのですから!

出来上がった料理を食べる5人。
いの一番に声を上げたのは、末っ子の唯五朗でした。
おいしい、と言う素直な言葉に、まりは安心した様子。
克四朗の兄たちもみんな口をそろえておいしいというのですが、彼だけは依然何も言わず淡々と料理を口に運ぶばかり。
そんな様子を見たまりは、顔を克四朗のすぐ近くに顔を寄せ、まずい?と尋ねてきたのです!
まりの顔がすぐ近くに……
克四朗はあわててまずいなんて言ってねーだろ、食えるよ!としどろもどろに答えて……
無理して食べてる?とさらに尋ねてくる彼女にとにかくうろたえまくる克四朗。
そんな彼に、光一朗と次男の進二朗は、うまいといえば終わるのに、と口に出さずに突っ込むのでした。

食事が終わっても、彼女は変える様子を見せません。
いつまでいる気なんだろうか、と聞きたいところですが、やはりそれをズバッと聞くのはちょっとはばかられる……のですが、克四朗はそのあたりに切り込んでいける性格の様子!!
彼女の前に立ち、オブラートなしにこう聞いちゃうのです!
あんたいつかえんの?と!!
彼女は言いました。
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考え中なの!と……!!
どうしても五兄弟と会いたくてここまで来たらしいのですが……それからどうする鎌では考えていなかったようで。
しばらくはいるつもりなんだけど、だめ?
と尋ねられてしまい……一同は言葉を詰まらせてしまうのですが……
唯五朗が僕はいいよ、と答えたため、自然と受け入れる空気になってしまうのでした。

問題は克四朗です。
思春期真っただ中である彼、年頃の女性と言うだけでもある程度意識してしまうところ。
だというのにいきなり美人の女性が一つ屋根の下で暮らし、おまけにすごく近い距離間で接してきて……
さらに、脱衣所で着替えシーンを見らり見られたりしてしまうというお約束的なハプニングも巻き起こす彼女を意識せずにいられるわけがありません!!
ですが彼女が悪い人間ではないことは何となくわかっています。
克四朗は思春期特有のあれで素直に受け入れられないだけで……
進二郎のアドバイスもあり、とりあえずもう少し落ち着いた態度で接しようと考える克四朗。
ですがそう簡単に態度が改められるわけもなく……
彼のつんけんした態度に不安を感じたのでしょうか、風呂上がりの克四朗に、脱衣所のドア越しにこう尋ねてきたのです。
克四朗くん、私がここにいるの、いや?
寂しげな声でそう聞かれ……克四朗は頭を描きながら、こう答えるのです。
か……考え中!
そんな答えを聞き、真理はにこりと笑い……脱衣所のドア越しにそっと克四朗てをあわせ、言うのです。
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よろしくね、と。


というわけで、四ノ宮家の新たな家族が増えての毎日を描いていく本作。
本作のヒロインと言えるまりさん、32歳と言う結構な年齢でして、きっちりと家事をこなすしっかりさと、年齢を感じさせない子供っぽさを兼ねそろえた不思議な魅力を持つキャラクターになっています。
そんな彼女を突然家に向かえたことで、克四朗はどうにもこうにも歯車が狂ってしまうのです!
良くも悪くもマイペースな彼女に振り回される克四朗、ですが彼女の魅力もその中で垣間見えてきて……
克四朗とまりの、徐々に、ゆっくりと近づいていく距離。
それがメインとなった、心温まるお話なのです!!

そのメイン要素は見どころ満天でして、克四朗の思春期真っただ中な態度や、まりのやさしくぽわぽわとした、それでいて芯のある性格なんかも相まって見ごたえばっちり!
ほかの兄弟たちも出番はやや少なめながら、それぞれの魅力や背景を所々で見せてくれるのです。
本作は全1巻で、克四朗とまりの関係があることでひと段落付いたと言うところで終わっています。
これはこれでおさまりがよく、さわやかなエンディングなのですが……
ぜいたくを言えばもう少し本作が続いていて、ほかの兄弟とまりさんとのからみもみたかったところ!
とはいえ巻末の番外編ではわずかにそこも描かれていますので、そちらも必見ですよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!