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今回紹介いたしますのはこちら。

「うしおととら 完全版」第15巻 藤田和日郎先生 

小学館さんの少年サンデーコミックススペシャルより刊行です。

さて、ハマー機関の暴走を何とか収めることができたうしお。
生きる気力を失いかけていたキリオも、真由子との出会いなどを経て立ち直り、白面の者に挑む準備は着々と進んでいく……かに見えたのですが……?


うしおの暮らす家に突如やってきた来客。
彼らによって、うしおたちの家は少し荒れてしまいましたが……幸か不幸か紫暮は家を空けています。
そこでうしおは開き直り、いつも通りの日常を過ごすことにしました。
なにせ今日は始業式。
中学三年生になり、クラスも変わって新たな生活が始まる日なのですから!

そのころ、麻子は神棚に手を合わせて件名に何かをお願いしていました。
麻子の両親は、麻子が何を祈っているかわかっている様子。
なにせ今日はクラス替え、誰か一緒のクラスになりたいコでもいるんだろう……とまあ、そう言うわけです!
そんなんじゃない、と否定してみた麻子ではありますが、いい加減自分でもわかってきたようです。
自分の机の引き出しの中に、今も大事にしまってある……小学生時代のうしおの描いた、麻子の似顔絵。
目をむいて牙をむき出しにしたそれはもうアレな似顔絵ではあるものの、麻子はどうしてもそれを捨てられないのです。
……これはもう、お母さんたちの図星かな。
さらに麻子の机の上には、潮の名前の刺しゅうを施した袋が作りかけになっています。
6月にある修学旅行と、うしおの誕生日。
それに合わせて、麻子はプレゼントをしようとしていたのです。
これはもうだれがなんといおうと、麻子はうしおのことが……
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麻子は自分の頭を軽く小突いて、麻子さんとしたことがね、とはにかむのでした。

3年8組に振り分けられたうしお。
驚くことにこのクラス、うしおと仲のいい横尾と厚池だけでなく、麻子に真由子、おまけに礼子まで一緒のクラスだという完璧すぎる布陣!!
一緒のクラスになれたと喜び抱き合う麻子たちに、同じ組かよ、ま、よろしくな、とあいさつをするうしお、だったのですが……
なぜか三人は一瞬、きょとんとうしおを見つめながら黙ってしまうのです。
すぐに三人は、ど忘れしちゃって、とあわててその奇妙な間を謝るのですが……
実はうしお、つい先ほども横尾と厚池に同じような態度を取られたばかり。
一回医者いったほうがいいぜ、とブー垂れるうしおなのですが、いつまでも引き摺らないのが彼のいいところ。
すぐにいつもの明るさを取り戻し、先生が話題に出した修学旅行へ思いをはせるのでした。

修学旅行は6月。
そして、時逆たちに告げられた決戦の時も6月くらいのはず。
いろいろと思うところはありますが、とにかくその時が来たら全力で戦うだけです。
それまでにいろいろとやれることをやっておかないとな、とうしおは天を仰ぎ……
身の回りの整理を始めるのでした。

まずうしおがやってきたのは、麻子の家でした。
麻子はあいにく不在。
ですがうしおの目的は、麻子に借りていたノートを返すこと。
うしおはノートを返すと、すぐに麻子の家を出ていくのでした。
……麻子のご両親も、一瞬うしおのことを忘れていたのには少し参りましたが。

うしおは、なぜ自分はいの一番に麻子のノートを返しに来たのかを考えていました。
昔からの腐れ縁で、面倒見てくれてたお店のおばさんたちの娘で、いつも俺と喧嘩してて……いつでもあってるのになぁ。
そんなことを考えながら歩いていますと、公園の前でばったりと麻子と出会ってしまいました。
礼子の家に行っていたという麻子に、社会のノート漢字間違ってたぜ、とチクリとやるうしお。
人にノート借りといて偉そうに、そんなに言うなら自分で勉強しなさいよ、と麻子も反撃し、またうしおがせっかく間違いを正してやったのによ!!とやり返し……
いつものような、二人のケンカ。
背中合わせに二人は別方向へ歩きだすのですが、麻子の表情はすぐに曇り始めてしまいます。
そしてうしおもまた、今のやり取りを悔いていたのです。
どうして俺はあいつといつもこうなんだろうなァ。
いつもいつも、明日も明後日も、来年も……
そこまで考えたとき、うしおははたと思い当たります。
俺には、来年なんか来ないかもしれないじゃないか。
……麻子の背中に、声がかけられます。
振り向くとそこには、ばつの悪そうな顔をしたうしおがいて……暗いしよ、仕方ねえから送ってやらぁ、と語りかけてきたのです!
その言葉を聞いた麻子は……とびきりの笑顔で、うんと頷きました!!
桜の花びらが舞い散る中で微笑む、麻子の姿。
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うしおは顔を真っ赤にして、後ろを振り向いてしまいました。
麻子がどうしたのかと尋ねてみれば……うしおは顔を真っ赤にしながら、きれいだな、と思ってよ、と素直な言葉を漏らしてしまうのです!!
まぁすぐに、桜がよ、と照れ隠ししてしまうのですが!!
二人はそのまま、思い出話に花を咲かせ始めました。
幼稚園の時の思い出、小学校時代に先生に怒られた話……
一緒に暮らした時間の長い二人、話は尽きることがありません。
間近に迫った運笑みの戦いも、つかの間忘れることのできる幸福な時間。
きっとうしおも心の奥底では、この時間がいつまでも続けばいいと思っていたことでしょう。
……が、そのつかの間の平和は唐突に終わりを告げてしまうのです。
突然、何も言わず、足を止めてしまった麻子。
どうした?とうしおが麻子に声をかけるのですが……
麻子から帰ってきたのは、思いもよらない言葉だったのです!
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誰……あなた!?

……一陣の風が吹きました。
その風が吹いた後……
真由子の、麻子の、礼子の。
共に戦った妖怪たちの、戦いの末分かり合えた妖怪たちの。
……うしおが、確かな絆を築き上げた人々の……
その記憶の中に、蒼月潮という人間は、影も形もなくなってしまっていたのです……


というわけで、まさかの展開を迎える本作。
今巻の前半で明かされた、白面の者の力の源となるある感情。
それをより一層増幅させるために、日本中の人々からうしおの記憶を奪い取ったのです!
この恐ろしい行動がもたらすものは、白面の力を増幅させるだけに終わりません。
うしおが戦いの原動力にしている、誰かを守るという気持ち……
誰一人自分を知るものがいなくなっても、その気持ちを持ち続けることができるのか!?
追い詰められたうしお、いやらしい笑みを浮かべる白面の者。
その最後の戦いは、こんな最悪の形で幕を開けることとなってしまうのです!!

今巻は、最終決戦の序章に当たる物語となっています。
今回紹介したエピソードの前には、最終決戦を挑む前に、探し求めていた真実にたどり着いたヒョウの物語、そしてとらに関する大きな秘密が一つ明かされる物語が収録されています。
ヒョウととら、そしてうしお。
白面の者に大きく運命を狂わされた彼らの最後の戦い……
開幕からもはや一瞬も目の離せない展開が連続するのです!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!