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今回紹介いたしますのはこちら。

「ジグソークーソー 空想地図研究会」第1巻 高舛ナヲキ先生 

幻冬舎さんのバーズコミックスより刊行です。

高舛先生は、15年に商業デビューした漫画家さんです。
それまでの(現在もですが)活動の場は主に同人の場でして、本作ももともとは同人作品として描かれたもの。
そんな作品を加筆修正して発表した本作、その内容は非常に珍しいものをモチーフにしていて……


人間の記憶はさかのぼると三歳ぐらいから始まるとか。
そんな頭に刻み込まれた最初の記憶は、母親の手の感触と、知らない街の見覚えのある景色……
杜子ダイチ、一年生筆頭。
彼は見るからに気難しそうな、不機嫌そうな顔をしながら書類に判をついていました。
彼が入学した東鹿塚高校は、親友性が積極的にサークルを新設する、という伝統があると言います。
が、それは主席入学した筆頭の許可が下りれば、の話。
ダイチは良くも悪くも「堅物」というやつでして、都合のいいたまり場が欲しいだけにしか見えないいい加減なサークル活動の申請を片っ端から不認可にしていたのでした。
気が付けば、認可したサークルはゼロ。
あんな堅物がなんでこの学校に入ったんだ、と言う囁きが耳に入り、ダイチはますます機嫌が悪くなります。
なぜなら彼、入りたくてこの学校に入ったわけではないのですから。
志望校に落ち、やむを得ず……怒りとともにまた新たな不認可印をつこうとしたその時のことです。
何かがぶつかったような音が響いたのは!
音のした方を向いてみると、そこにいたのは
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入り口のドア枠の上縁に頭を痛打していた、大柄な女生徒でした!
1年6組塔元チリエです、サークル活動の申請にきました!
そう言った彼女ですが、頭をぶつけた衝撃からか、その場に倒れこんでしまいました。
……受付の時間を10分も過ぎている、時間も守れないものの申請を受け付けると思うか?
冷静にそう言い放つダイチですが、彼女は聞いていません。
なぜなら彼女……気絶してしまっていたのですから!

自分よりはるかに大きな体格を持つ彼女を背負い、なんとかかんとか保健室に運び込み、ベッドに寝かせたダイチ。
運悪く先生は席を外しているようですが、おそらく軽い脳震盪か何かだろう、とダイチは安静にさせていれば大丈夫と判断したようです。
それにしてもこのチリエ……大きいです。
185センチ以上はありそうな身長はもちろんですが、その視線はどうしてもその……胸についた大きな二つのふくらみに引き寄せられてしまいます。
はっと正気に戻った大地は、いやらしいものを見せるな、と彼女が抱きかかえていた長い筒のようなものを取り上げました。
すると、筒にはまっていたふたが取れてしまいました。
中から出てきたのは……大きな一枚の地図。
とりあえず手近な机に広げてみますと、どうやらそれは江戸川区の地図のようです。
よくよく見れば彼女の抱えているいくつかの筒は、すべて地図が収められているようです。
今時紙の地図なんか何に使うんだ……?
と考えていると、ふとダイチにあの時の記憶がよみがえってきます。
お祭りで金魚を掬い、持って帰る帰り道。
母にすごいとほめられながら歩いた、橋の上……
橋や川の名前なんてもちろん覚えてはいません。
が、ひょっとしたら地図を見れば何かわかるかもしれない。
そう考え、大地は地図を広げて考え込むのでした。

川で土地が縦に分断されているのに、南北を連絡する電車が通っていないなんて不便そうだ。
そもそも川の名前がおかしい、江戸川と旧江戸川があるのはわかるとして、なんで中川は3つもあるんだ。
旧中川と新中川なんて場所が飛んでいるし……と、地図を見ることによってわかる様々な発見に首をかしげるダイチ。
あまりにも夢中になっていたため、背後でチリエが起き上がっていることに気が付きませんでした。
わかりますか!?
そう言っていきなり台地に声をかけてきたチリエは、目を輝かせながら言葉を並べ始めます。
川のは知り方がユニークなのは、人間の手が加わった結果なんですよ。
利根川水系は洪水が絶えなくて、今の江戸川区一帯でも工事が繰り返されたんです。
けれど毎回十分な計画性があったとはいえず、工事するたびに土地の形がいびつになったんですね!
一気呵成にしゃべりながら、迫ってくるチリエ。
その大きな胸も目の前に迫ってきて、圧倒されてしまうダイチですが……やがて落ち着きを取り戻し、とにかく喋り捲るチリエを包帯でぐるぐる巻きにして黙らせます。
そして、落ち着いたところでようやく本題に入るのです。

まず申請についてだが、君は完全に遅刻していたから受諾されることはない。
いきなりハッキリ言われてしまうチリエ、いろいろ言い訳をしたいものの、有無を言わさない大地のムードに圧倒されて黙ります……
ですがダイチから、もう一つ……今度は質問が投げかけられたのです。
君は江戸川区に詳しいのか?と。
チリエは何だか煮え切らない返事をしますが、彼女が言うには「地図はよく見るけど行ったことがない」ので、ちゃんと詳しいわけではないとのこと。
ですが、地図を見ればそこがどんな場所で何が存在し、何が起きたのかがわかる、と言うのです。
チリエはその実例として、江戸川区の南部、葛西臨海公園のあたりを指さし、海岸線が滑らかだから、人工的に作られた埋め立て地だということがわかる、と説明しました。
そのくらいは見ればわかる、と言うダイチなのですが……その言葉をチリエは待っていたようです!
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目を光らせ、それなら埋め立て前の旧海岸線がどこだったかわかりますか?と尋ねてきたのでした!!
この地図を見て、答えるのか?といぶかしげなまなざしでチリエを見るダイチ。
ダイチは最初ネットで調べようとしましたが、いきなりネットに頼るのかと言うチリエの挑発的な言葉を聞き、イラッとしつつも自分で考えることにしました。
少し考え……そしてダイチは、マジックですいすいと旧海岸線を描き切りました!
なぜダイチはここにこう線を引いたのか?
根拠は三つある、と指を立て、ダイチは自分なりに導き出した理由を上げるのです!

そんなクイズのやり取りもあり、チリエが地図にとても詳しいことがわかりました。
……ダイチには、どうしても気になることがあります。
あの祭りの帰り道、自分の手を握ってくれたあの女性は、本当に自分の母親なのか……?
場所がわかれば、その記憶をたどる手掛かりになるかもしれない。
そして、ずっと引っかかってきたその疑問の答えがわかるかもしれない!
……ダイチは、チリエに問いかけます。
地図でいろいろわかるなら、教えてくれ、
僕は幼いころ、江戸川区に住んでいたんだろうか?
ダイチのその質問を聞き、チリエはそっと地図を抱えて答えます。
「これから行く場所」ではなく、「自分が居た場所」ですか。
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面白そうですね、詳しく聞かせてください。


というわけで、一枚の地図から広がる世界の姿に思いをはせる本作。
この後二人は地図で様々な情報を探りながら、実際に現地に足を運びつつダイチの過去の記憶をたどっていくことになります。
果たしてダイチの出生の秘密は……?というような壮大なお話にはなりませんで、この江戸川区編はこの第1巻の半分くらいで終了!
江戸川区の歴史と、ダイチの思い出をたどり、記憶のもやもやを晴らしつつ二人の距離が縮んでいく本作の導入部的なストーリーになっているのです!

地図を見てあれこれ空想するという、本作の基本的な構造(?)を紹介する導入部的なストーリーを終え、本作はさらなる展開へ。
新キャラクターの登場とともに、実は謎の多いチリエのあれこれにも迫っていくお話になっていきそう!
地図と言うどうしても地味な題材ながら、だからと言って見せ場がないというわけではない、物語の起伏や意外なあれこれ、そしてもちろん目玉と言っていい地図のうんちくも楽しめる、盛りだくさんな内容になっていますよ!!
描き下ろしのおまけも8ページと大充実、最後の最後まで盛りだくさんです!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!