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今回紹介いたしますのはこちら。

「恐之本 仇 高港基資ホラー傑作選集」 高港基資先生 

少年画報社さんのSGコミックスより刊行です。

さて、高港先生が描き続けてきた恐怖漫画を単行本化していく本シリーズ。
とうとう9冊目となった今巻でも、相も変らぬ恐ろしさを見せつけてくれています。
今回はそんな中から「お誕生日のおまじない」と言うエピソードを紹介したいと思います!!


良子がまだ幼かった時のことです。
両親と祖母との4人暮らしだったその頃のある日、祖母の奇妙な行動を見かけました。
おばあちゃんが庭の片隅に箱を用意し、その箱に簡素なつくりのぬいぐるみを入れていたのです。
何をしているのかと尋ねてみますと、おばあちゃんはびくりと体をこわばらせた後、こう言うのです。
この人形はおばあちゃんが作ったんだよ。
ふたをして……
この箱はもう絶対触ったらダメ。わかった?
おばあちゃんが触るなと言うのですから、触らないのは一向にかまわないのですが、それにしてもいったいなぜなのでしょう。
おばあちゃんは、今日は何の日だと良子に聞いてきました。
今日が何の日か、忘れるわけがありません。
あたしの誕生日!と笑顔で答える良子。
そんな良子におばあちゃんは、これは誕生日の大事なおまじないなんだ、と答えるのでした。

夕食でみんなにお祝いしてもらった良子。
大きなケーキが出て、プレゼントにはこれも大きなぬいぐるみ。
うれしくて良子は、ぬいぐるみと一緒に布団に入って眠るのでした。
その深夜、良子はトイレに行きたくなって目を覚まします。
するといつの間にかおばあちゃんが座っていたのです。
その形相は真剣そのもので、良子はなぜか寝たふりを続けなければいけない気がしだします。
息をひそめて寝たふりをしながら、おばあちゃんの様子をうかがい続けていますと、おばあちゃんの険しい表情が一層険しくなりました!
と同時に、外からがさがさと何かの音が聞こえてきます。
その音を出している「何者か」の影が、窓越しのシルエットでうかがえるのですが……
その何者かはまっすぐに、あの箱のほうへと向かって言ったようです。
しばらくしてその音がなりやむと、おばあちゃんはほっと胸をなでおろし、部屋を出ていきました。
あの何者か、は何なのか。
良子はどうしても気になってしまい……

翌日。
朝早く良子はおきだし、あの箱のほうへと向かいました。
恐る恐るはこのふたを開けてみますと……中に入っているのは、ねじったひものようなものでした。
よくよく見れば……
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それは、あり得ないほどにねじれたあのぬいぐるみであることがわかります。
普通の人間がねじったところで、こんなひものようなありさまになるはずがありません。
その物体に空恐ろしさを感じた良子は、すぐにぬいぐるみとふたを元通り収め、その場から逃げ出したのです。
ちなみにそのぬいぐるみは、午後に祖母によって箱とともに燃やされた様子。
そしてこのおまじないはその時だけではなく、それ以前も、そのあとも、誕生日のおばあちゃんが欠かさずやっていることがわかりました。
何のためにこんなことをしているのか聞いてみても、おばあちゃんは悲しいようなつらいような顔を浮かべるだけで、答えてはくれません。
やがて良子は父の仕事の都合で、おばあちゃんと離れ離れになってしまい、とうとうそのことを聞けずじまいになってしまったのでした。

そんな祖母がなくなったのは、良子が高校1年生の時でした。
もうあのおまじないをしてくれる人はいないんだなぁ、などと思っていたのですが、お葬式から帰ってくると、部屋の片隅に見慣れない段ボールがあることに気が付きます。
中に入っていたのは……大量の、おばあちゃんの作ってくれたあのぬいぐるみ!!
お母さんによれば、おばあちゃんに渡されたのだそうです。
なんでもおととしに倒れて入院してから、ずっと作り続けていたようで。
そのぬいぐるみとともにおばあちゃんは、「毎年良子の誕生日に、一つ箱に入れて、家の外回りの北東角に目立つように、よく見える場所において」と告げてきたのだそうです。
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絶対忘れないと約束して、どんなことがあっても必ず毎年やると誓って、お願い。
おばあちゃんは、ものすごく真剣に、鬼気迫ると言っていい形相でお母さんにそう言ってきたのです。
理由は教えてはくれませんでしたが、入院してもボケてはいなかったおばあちゃんがこれだけ必死に言ってきたのですから無視するわけにもいかず。
その日の二日後に迫っていた良子の17回目の誕生日の朝、早速お母さんは指示通りの場所に箱を置いたのでした。

誕生日は部活で遅くなり、日の暮れた後に家に向かっていた良子。
誕生日の話を電話でお母さんとしながら帰っていたのですが……その背後に人影を感じます。
とっぷりと日の暮れた夜だというのに、彼女の後ろをつかず離れずといった距離で歩いてくる、子供……
良子は何か嫌な予感を感じ、バットそちらを振り返りました!!
するとその子供は、ちょうど自宅についたようで、ただいまと自分の家に入っていくところでした。
少し過敏になりすぎていたようです。
やだもう、と自分の行動に顔を赤らめながら再び前に歩き始めた……その直後のことです。
……前方の電信柱の陰に……明らかに普通の者ではない、何かが隠れるように潜んでいるではありませんか!!
そしてそれは
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一目見ただけで危険なものだとわかる忌まわしい顔をのぞかせ……!!

ちょうどそのころ、おりからの風によって木の葉が舞い散り、それがあの箱を覆いかけていました。
「よく見える」状況ではなくなってしまっていたのです!!
忌まわしい顔の「それ」は、黒い何かを良子にまとわりつかせ……そして、ねじるような力を加えていき……
そして……!!


というわけで、奇妙なおまじないにまつわる物語を描くエピソードを収録した今巻。
この後、物語は一応の真相めいたものに迫っていき……
奇妙なおまじない、ねじれた人形、奇怪な存在の襲来。
流れるように繰り広げられていく恐怖、そしてこれからのことが気になる読後感と、見ごたえある一片となっています!!

もちろんこのほかの作品も引き込まれるものばかり。
心霊的な話ではあるものの、単純なホラーではない「家族について」。
なくなった奥さんと暮らし続ける男性に事情を聞くために尋ねていく警察官に襲い掛かる悪霊の恐怖を描く「死人憑き」。
主人公と寄り添い続ける「手」の真実に迫る「はらから」。
得体のしれない「まじない屋」の奇妙な儀式を描く「身代わりの人形」。
使用すれば絶対にたたられるという恐怖の駐車場を描く「地下駐車場」。
ホームの下に住まう怪、「ノツゴ」……
今回もじんわりくるいい話から、ただただ恐ろしい恐怖を描くもの、怪奇とともに人の恐ろしさを描くもの、と正統派ホラーながらも様々な物語を収録!!
もはやおなじみ「わはは顔」はじめとした、一目見るだけで生理的な嫌悪感すら感じる怪異、クリーチャーの描写もさえわたり、今巻も見どころ満点の内容になっていますよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!