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今回紹介いたしますのはこちら。

「ひなごう! おおひなたごう Extra Works」 おおひなたごう先生 

エンターブレインさんのビームコミックスより刊行です。

さて、現在「目玉焼きの黄身いつつぶす?」でブレイク中のおおひなた先生。
おおひなた先生は91年にデビューされておりまして、本作発売の16年でデビュー25周年!
本作はそれを記念しつつ、単行本未収録だった作品をメインに収録した単行本となっています。
今回はそんな中から、おおひなた先生らしさがさく裂する「スーツマン」のVol.1を紹介したいと思います!


スーツの男がたたずんでいました。
彼が何をしているかと言いますと……何もしていません。
そもそも映画を見に来たはずなのですが、お目当ての映画が混雑しておりまして、見ることができなかったのです。
ぽっかりと空いてしまった時間、彼曰くポッカリタイムに迷い込んでしまった彼、何をするべきか考え始めます。
パッと目に入ってきたのは、漫画喫茶の看板でした。
ですが彼、つい最近現代の医師が江戸時代にタイムスリップして頑張る名作を読破したばかりで、取り立てて世みたいマンガもない感じ。
続けてマッサージの看板が飛び込んできましたが、10分間で1000円と言うのはポッカリタイムを埋めるためだけに使うにはちょっと高すぎます。
お金がかからず、それでいて満たされるもの。
そんなものがないか、と周囲に視線を走らせると……彼の目には、紳士服の店が止まりました。
そうか……試着。
試着、してみようカナ……
そう考えているうちに、自然と彼は紳士服店に入って、スーツを物色していました。
アが手、しっくりする一着が見つかります。
声を張り上げ、堂々と店員さんに問いかけます。
すみません!試着いいですか?
それを聞いたレジの女性店員さんは、にこやかに試着室へと案内してくれました。
試着室に入る彼。
一人きりになるや、来たぞ試着室、とつぶやき、この空間を堪能し始めるのです。
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ここは今、私だけの空間だ。
足をのばしてくつろいだって良い。
幼き日を思い出して郷愁に浸ってもいい。
そう呟いていると、本当に幼い日の思い出がよみがえってきます。
父親にブランコを押してもらい、笑う幼い彼。
にこやかにそれを見つめる父……
自然と涙が彼の目頭を濡らし始め……
そんな時でした。
お客様、いかがですか?と言う店員さんの声がかかったのは。
そりゃそうです、ここは試着室ですから。
正気に戻った彼は慌てて涙をぬぐい、ササッと試着。
そして彼は鏡の中の字部yンにささやくのです。
どうだ、したぞ、試着を。
次だ!買わないけど、買わないけど行くぞ!
自分自身を奮い立たせ、彼は試着室から身を乗り出します。
そして先ほど試着していたスーツを掲げ、店員さんにこう尋ねました。
もうワンサイズ上ありますか?と!
店員さんは手早くもう一つ上のサイズの同じスーツを持ってきてくれました。
彼はそれを受け取り、ほくそ笑むのです。
バカめ、買わないのに。
そしてそうほくそ笑んだ直後、さらによこしまな考えが浮かんできてしまいました。
もっと言えば、着なくたっていいんだ。
来たかどうかなど店員はわからないのだ……!
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このまま返してしまおうかと言う謎の考えに頭を悩ます彼。
ですがすぐに首を振り、それでは試着にならない、私はあくまで試着に来たんだ!とスーツを羽織りました。
そして予定通り店員さんにスーツを返し、これはまた今度にするよ、と試着だけを楽しんで店を後にする、はずだったのですが……
そこで、同時にお店で取り扱っている指輪に目が行きました。
指輪なんて今までしたことがなかったな、と自問し……今度は店員さんに、この指輪嵌めさせてもらっていいかな、と尋ねます。
取り出してくれた店員さんの目の前でその指輪を嵌め、これまた妙なことを言いだしました。
こう言うのは何て言うのかね、試嵌めとでもいうのかね?
店員さんもその言葉は耳慣れないようで、首をかしげます。
彼もしっくりこないとうなるのですが、そこに急に近くにいた男性が寄ってきて、気になったから調べさせてくださいと会話に乱入してきました!!
早速「試嵌め」で検索してみるものの、該当はなさそう。
身に着けるものだから試着で良いような気もしますが……指輪の試着、そのモノを刺す言葉はないわけで……逆に「試嵌め」と呼んでもいいのではないか!?と言う結論に行きつきました。
彼も、男性も、店員さんもこの行為を「試嵌め」と呼ぶことに同意!
しかも運命のいたずらか、ちょうどそこに指輪を嵌めさせてもらっていいかと尋ねてくるバルのお客さんが現れるではありませんか!
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店員さんはにこやかに、ハイ、試嵌めですね!とそのお客さんに対応し……
残された彼と男性は、顔を見合わせて笑うのでした!

妙な連帯感が生まれ、彼はその心が満たされていくのを感じます。
彼は、満足して店を出ます。
もちろん、何一つ買わずに!!


というわけで、そんな謎の男性、スーツマンのポッカリタイム解消法を描いていく「スーツマン」を収録した本作。
「スーツマン」はこのほかにも5編、計6編が収録されていまして、その時その時の一人遊びだったり、最適なスポット探しだったりを淡々と、ごくまれにドラマチックに描いていくのです!
そんな印象的な作品の他、ヤングジャンプで連載され、02年と07年に単行本も刊行された「犬のジュース屋さん」の単行本未収録作品を7編収録。
柱の小ネタもしっかり収録した、こちらも完全版の名に恥じない内容になっています!
そしておおひなた先生のあふれだすハマショー愛があふれだす「ハマショー!」全8編。
悪魔で本作の主役は浜離宮省之助左衛門、略してハマショーなわけですが……
とにかくおおひなた先生のハマショーラブがひしひしと感じられつつも、なんか怒られそうな気もするシュールなギャグマンガなのです!

とどめに控えているのは、描き下ろしの完全新作「おやつ」です!!
この「おやつ」はおおひなた先生が週刊少年漫画誌に連載した初めての作品で、テレビ雑誌やサブカル誌などの連載が多かった先生が、漫画好きに広く知られるようになる第一歩と言える作品でして。
自分もこの作品でおおひなた先生を知り、今に至っている、個人的な思い入れもある作品だったりします!
その「おやつ」連載終了後15年にして描かれる特別篇となるのが本作なのですが、さすがと言うかなんといいますか、当時の雰囲気そのまま!!
絵柄もかなり当時に近い感じですし、時に無駄に(褒め言葉)壮大になる感じのオチまで再現!
オールスターに多くのキャラも登場しますし、ファン感涙の一片に仕上がっているこちらだけでも必見……かもしれません!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!