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今回紹介いたしますのはこちら。

「蒼の六郷」 あさりよしとお先生 

白泉社さんの楽園コミックスより刊行です。

さて、あさりよしとお先生の最新作となる本作。
本作は、そのどこかで聞いたことのあるタイトルからも何となくわかるように海洋冒険ものとなっています。
なってはいるのですが、そこはあさり先生、先生らしい一味違った味付けのされた作品に仕上がっているのです!


東京都大田区。
多摩川が海にそそぐすぐ手前に六郷という土地がありまして……その六郷のとある団地で、一人の少年が女子中学生に頭を下げておりました。
少年は、小学4年生の真潮くん。
真潮は女子中学生、昂にお願い事をしています。
こんなこと頼めるの、お姉さんしかいないんです!
誰にも内緒で、明日の夕方、多摩川の六郷橋のところへ来てください!
大事な話があるんです!
それだけ言うと、踵を返してかけだしてしまう真潮……
その後ろ姿を見送りながら、昂は何だかにやけてしまっています。
もっと小さなころには、手をつないで一緒に遊んだこともあった二人。
そんな子が大きくなって、自分に「大切な話」をしにくるなんて。
むずがゆいような、うれしいような、そんな思いを抱いて、昂はとこにつくのでした。

が。
翌日、出会うなり真潮は妙な場所に昂を招き入れようとするのです。
河原に不法に建てられている、あばら家の中に……!!
流石にいきなりそれはどうかと思う、とためらう昂ですが、真潮は早く、人に見られちゃう、と強引に昂を中に連れ込みます!
すると、中に入るなりなぜか落下するような感覚に襲われ……気が付くと、昂は見慣れない地下室のような場所にいたのでした。
そこには、船のキャプテン的な帽子をかぶった真潮が待っていまして、ここは潜水艦の秘密基地だよ、と説明をしてくるのです。
確かにその部屋には船着き場のようになっている水場がありまして、そこには2~3人用と言ったところの潜水艦らしき船が浮かんでいます。
真潮はその船に視線をやりながら、この船で世界の平和を守るんだ!と真剣そのものの表情で発言。
……そこでようやく昂は気が付くのです。
お願いと言うのは、その世界平和を守る戦いとやらに、自分が協力しろ、と言うことなのだ、と!!
僕一人じゃ無理なんだ、と言う真潮ですが、ちょっとそのお願を這いやりましょうとうなずくのは無理というもの。
素直に無理、と断ろうとした昂ですが、真潮はお願いを聞いてくれるから来たんじゃないのかだからこの秘密の場所を見せたのに!と血相を変えて食ってかかってきます。
こんなお願いだと思っていなかった、と言った旨の言葉をごにょごにょとつぶやく昂なのですが、真潮にじゃあどんなお願いだと思っていたのか、と尋ねられると……さすがにそれを包み隠さず明かすのは……はばかられます!!
やむなく昂は、潜水艦に乗ることを承諾するのですが……

なんか、
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昂は潜水艦の操縦席に座らされ、その膝の上に真潮が腰かけて操縦桿を握る、という妙なことになっていました。
なんでも今までは身長の問題で立ったまま操縦しなければいけなかったそうで、まともに操縦ができなかったんだとか。
そこで人間椅子役+フットペダル要員として昂に白羽の矢が立ったのです。
……自分の生足の上で、真潮のすべすべの生足がすりすりする感覚になんだか妙な感覚を覚えてしまう昂、とりあえずなぜ自分を選んだのか尋ねてみました。
まず、小さなころから知っていて、秘密を守ってくれそうだったこと。
そして、部活動をしていないから早く帰ってくるから、とのこと。
なのですが、それなら別の棟に住む古葉さんもそうじゃないか?と昂が尋ねてみますと、昂はその質問を遮るように、どうしてもお姉さんじゃなきゃダメなんだ!と語気を荒げたのです!
なぜなら

古葉さんでは操縦中、胸が頭に当たってしまうから……
……やり場のない怒りを、真潮のお尻を触りまくるというセクハラでぶつける昂。
何でそんなことするんだよ、と怒る真潮ですが、そうこうしているうちに行く先に「敵」の姿が見えました。
うねうねと動く触手……
真潮によればそれは、海底帝国の尖兵である、ダイオウイカなんだそうです!
が、それはどう見ても、
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タコです。
ゆっくりとこちらに迫ってくるその大ダコに恐怖を感じた昂は、どうするの?武器はないの?と真潮に質問を投げかけるのですが……
真潮は昂を振り返り、タコ怖い!小1の時から見るのもダメ!!とおびえ、震えだすではありませんか!!
実は真潮、この潜水艦を与えてくれたある存在にあれはダイオウイカだ、とうそを教えられてここまで来ていたのです。
それでも必死に戦おうとする真潮ですが、ダメなものはダメ。
やっぱり怖い、世界の平和を、お姉さんを守らなきゃいけないのに!と叫びながら顔を覆い隠してしまい……
ですがその瞬間、真潮の股間を昂が触り始めました!
お姉さん、どこ触って……と後ろを振り向くと……
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真潮に、昂が口づけしたではありませんか!!
元気出たみたいね。
そう言ってほほ笑む昂の顔を見て……真潮は前を見据え、来い!海底帝国!!と叫びました!!
闘志のよみがえった真潮ですが……大ダコは、潜水艦に何もせず、通り過ぎて去っていってしまいました。
どうやらやり過ごしたみたいだ、と胸をなでおろす真潮、相手にされてなかっただけのような気がする、と心の中で突っ込む昂。
ともかく、難は逃れました。
ありがとうお姉さん、とほほを染めてうつむく真潮に、昂はやさしく、昂で良いよ、これからも頑張ろうね、と声をかけるのです。
海底帝国、その尖兵のオオダコ。
その話がどれだけ信じられるのかはよくわかりませんが、昂が気になるのはまず。この潜水艦を作ったのは誰か、と言うこと。
その秘密は、もう少し後に語られることとなるのです!


というわけで、真潮と昂の海の冒険を描いていく本作。
海洋冒険ものではあるものの、物語の舞台は主に東京湾、そして敵役は主にタコ、という小規模なものになっております。
この紹介した第1話でもわかるように、大スペクタクルと言うものではなく、あさり先生らしいのんびりした、とぼけたムードでゆったりと物語は進んでいくのですが……もちろんそれだけでは終わらないのもあさり先生らしさ!!
このあと、潜水艦を作った驚きの存在や、その存在の目的、そして同じようにタコと戦う別の存在なども登場!!
物語は規模を大きくしつつも、大事にはならないまま展開していくのです!!
そしてその流れで、なぜこの海底探索に真潮や昂が選ばれたのか、と言う理由なども明かされるのですが、これもまた衝撃的なもの!!
その背景に迫りながら、以前当人たち(主に昂)ののんびり具合は変わらず、さらにとんでもなく広い世界への冒険へと出かけていく、その展開に引き込まれていくこと間違いなし!!
全1巻ながら、描き下ろしを含めて大変感慨深いラストは胸にジンときちゃうことでしょう!!

ちなみにこの第1話でも何となくわかると思われますが、本作にはお姉さんと少年のカラミ……おねショタ成分が大変豊富!!
そっちファンの方も要注目……かもしれません!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!