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今回紹介いたしますのはこちら。

「鬱ごはん」第2巻 施川ユウキ先生 

秋田書店さんのヤングチャンピオン烈コミックスより刊行です。

さて、就職浪人・鬱野たけしが、日々の悶々とした思いとともに、ただ飢えを満たすためだけの食事を平らげていく日常を描く本作。
今巻でもその基本構造は変わらず、ひたすらもの悲しさすら感じさせる食事風景を描いていくわけですが、今回はそんな中から本作初の長編(?)シリーズである一人旅編を紹介させていただきたいと思います!


たけしは、衝動的に降りたこともない駅で電車を降り、一人旅を始めました。
その街は、観光地でも何でもない、ごく普通の街。
そんな普通の街の普通の道を、たけしは一人歩くのです。
見知らぬ街でありながら、どこか故郷と似たものを感じるそこで、たけしが求めていたものは……圧倒的な孤独。
それを手に入れようとたけしが選んだ店は、
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「オートレストラン」という大きな文字が躍る、うらさびれた飲食店でした。

中にあるのは、申し訳程度のテーブルと、ずらりと並んだ食べ物の自動販売機。
ほかの客などほとんど見当たらないその寂しい光景に、むしろ満悦のたけしは、まずその販売機のラインナップを検めてみることにします。
ハンバーガー、うどん、そば、カップラーメン……
最近ではこう言った食べ物系の自動販売機と言うのもあまり見なくなりました。
そんなレアなものがここで一同に会しているわけですから、せっかくだからコンプリートしてみたい、という気持ちがわいてくるのも自然というもの。
たけしがその第一歩に選んだのは、トーストサンドでした。
お金を投入し、スイッチをおし、しばらくたつと商品が取り出し口に排出されます。
出てきたそれは、アルミホイルで包んでありまして、そのためなのかトーストなのに熱さは感じません。
いや、それどころか……冷たい?
恐る恐る中を開いてみると、なんとそこにはトーストになっていない生(?)のサンドイッチが鎮座しているではありませんか!!
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ボタンを間違えたのか?故障しているのか!?
あり得ない出来事に戸惑うたけしですが、助けを求めようにも店内に店員は見当たりません。
だからと言って冷えたパンを食べるのもどうかと思いますし……
悩んだ末、旅だから豪勢に行かなくては!と思いたち、もう一回トーストサンドを購入するという冒険に出たのです!!

今度出てきたそれは、握るのも難しいほどの熱々!
しっかりとトーストされているのが、アルミホイル越しでもわかるほどです。
早速包みからトーストを取り出し、かぶりつくたけし。
口の中にパリパリとした食感が広がり……なるほど、不味くはない!という感想が自然と湧いてきました!!
しばらくそのトーストに集中していたたけしですが、いつの間にかほかのお客さんが来ていたようです。
そしてそのお客さんは、店内の片隅にある扉をどんどんと叩きながら、おっちゃん、また冷てーやつが出てきたぞ!と大声を出しています。
するとほどなくして、その扉の中から店主らしいおじさんが登場。
コツだからよくあるんだ、ごめんねと言いながら、お金を販売機に投入、新しいものを購入してそのお客さんに渡してあげてました。
そんな光景を見たたけし、交換してもらえるんだ、と衝撃を受け……て自然とその視線を自分の目の前に置いたままの冷たいトースト(の素)へ移行。
こっちの分を返金してもらおう、と思いたちました。
トーストを手に立ち上がり、すみません、これ冷たいやつが……と店主に持っていくたけし。
すると店主は、ああ兄ちゃんも買い、ちょっと待っててくれと言って問答無用でトーストを購入!!
熱いから気を付けて、とにこやかにアツアツのトーストを渡してきてくださったのです!!
返金、と言う言葉をもはや呑み込むほかないたけし……
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残された道はもう、二つのトーストを食べるという道のみです。
再び誰もいなくなった店内で、トーストを口に運び、こんなことを考えます。
トーストを2つ食ったらハンバーガーは厳しいか。
つーか、うどんも蕎麦もカップ麺も全部無理じゃねーか?
そう言えば、この辺の名物は焼きまんじゅうだって看板にあったな……
もぐもぐと口を動かしながら、たけしは天井を見上げます。
ああ、僕は今、どこにいるのだろう?
深いような、深くないような。
そんなむなしい思いとともに、たけしは大きなげっぷを吐きだすのでした。


というわけで、一人旅編が収録された今巻。
毎号4ページで月刊連載と言う都合上、前巻より3年の時間が流れ、待望の第2巻発売となりました。
連載期間も六年を越え、どうやら作中の時間も大体同じように流れているようで……第1話で22歳だった彼もそれなりの年になってまいりました。
一人の寂しい食事と、そんな時脳裏によぎる楽しくない考え。
本作の肝であるそれは、時の流れとともにより一層印象深いものになっているような気がします!!
そんな彼、今回も様々な食事と、様々な自虐を繰り広げてくれます。
今回紹介させてもらった一人旅編では、まさかの一泊旅行になったにもかかわらず、このオートレストランを皮切りに「旅に来てまでそれ?」と言わざるを得ないアレな食事がどんどん行われていくことに。
漫画で旅に出れば大体何かが巻き起こったり、何かの転機になったりするものですが、この漫画に関していえば当然そんなものあるわけがありません。
たけしの陰鬱とした食事と、空回り感の否めないあれこれをお楽しみください!!
さらにその他にも、いろいろな変化も訪れてみたりもします。
自堕落な生活がたたって肥えてみたり、風邪をひいてみたり、突っ込み役だった黒猫の幻覚がほとんど登場しなくなってみたり……
こんな変化がやがてたけしの毎日を激変させる何かにつながる、なんてこともあるのでしょうか……?
そればかりは、これからも本作を読み進めていくほかに知るすべはありません!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!