今回紹介いたしますのはこちら。
「累」第9巻 松浦だるま先生
講談社さんのイブニングKCより刊行です。
さて、とうとう累を地獄に叩き落とす計画を実行に移した野菊。
顔を入れ替える口紅を偽物とすり替え、本番の舞台上で累は素顔をさらす、というその計画……
野菊は滞りなく口紅をすり替え、そして舞台は幕を開けようとするのです……!
運命の舞台、最終公演の直前。
野菊は、累との「最後」の交換の時を迎えていました。
野菊は周到の準備を済ませています。
人目から隠れて、二人が口づけをする。その場所として選んだのは、小道具などが置かれている倉庫でした。
その倉庫の、たった一つ時金井蛍光灯をあらかじめ抜き取っておく。
そうすることで、お互いの顔の見えない状況を作りだしたのです。
口づけによる顔交換の効果時間は12時間。
その時間をフルに活用するために、二人が顔を交換するとき、二回の口づけを行うのです。
最初の口づけで、お互いの顔をもとの状態に戻す。
そして、2度目の口づけで顔を交換する……
倉庫の中を真っ暗にすることで、その最初の口づけで顔がもとに戻ったことか確認できないようにして、口紅のすり替えを気付かせないようにした、というわけです。
真実を知らないまま、二度の口づけは行われました。
これであとは、開演を待つだけ……
野菊はその心の中に沸き上がる感情を押し殺し、倉庫から先に出て周りに人がいないことを確認。
出てきて大丈夫だ、と累に声をかけるのです。
するとるいは、野菊の手首をつかみ……そして、彼女の胸に顔を寄せたのです!
彼女の突然の行動に、戸惑う野菊。
累は、震えながらこう言うのです。
怖いの、初めてこんなに緊張してる。
あのね、「ガラスの動物園」の時からカーテンコールの客席にあなたを探すようになっていた。
あなたが見てくれている、そう思うだけで心強いの。
だから今日も、最後までしっかり見ていて。
……涙を浮かべながら、野菊の顔を見上げてくる累。
野菊の脳裏には、一瞬、もしかしたらと言う可能性の、違う運命の景色がよぎります。
もし、生まれ方や出会い方を間違えず、普通の姉妹として支えあっていきられたら、と……
あり得ないことで、いくら考えようとも無駄なことだというのに……
もちろんよ、約束したでしょう、共に歩むと。
とっさにそう答える野菊……
彼女の心中の揺らぎを知る由もない累は、ありがとう、と笑顔で返すのでした。
ロビーで腰を下ろす野菊に、羽生田がコーヒーを持ってきました。
顔色が悪いがどうかしたのか、と声をかけてくる羽生田に、野菊は問いかけます。
ずいぶん私に気を使っているのに、と。
それを聞いた羽生田は少し間をあけた後、その理由について思い当たることを語り始めます。
お前の、父親の話に対する同情はあるかもな。
子を産ませておいて踏みにじるような男は、殺されて当然だ。
そう言うやつに他にも覚えがあってね。
……そんな話をしているうちに、舞台は幕を開けました。
累の信頼、羽生田の同情。
……ここに来て、野菊の裏切りに後ろめたさを感じさせるような出来事が重なってきました。
ですが野菊は、その決意を揺るがせないよう、考え直します。
こんなものは、自分が都合の良い協力者である限りのまやかしだ。
舞台上に目をうつせば、累は咲朱として、見るものを引き込んで止まない凄絶な演技を見せつけています。
「私だって乳をのませたことがあります。」
「乳房に吸い付く赤ん坊がどんなにかわいいかは知っています。」
「でも」
「私はその柔らかい歯茎から乳首を引きもぎって」
「脳みそを叩きだして見せる」
その台詞は、マクベス夫人そのものから出ているとしか思えない、圧倒的な禍々しさをはらんでいて……
到底、先ほどまで野菊に縋りついて震えていた女性と、同じ人物とは思えないではありませんか。
そして、舞台はあのシーンに差し掛かります。
「消えてしまえ」
「呪われたしみ!」
「消えろというのに!!」
あまりにも悲痛なその叫び、悶え、苦しむその姿。
あの時よりも、昨日よりも、さらなる成長を遂げた表現力で演ぜられるその姿は、マクベス夫人が見たちの幻覚を観客にまで体感させるような、驚嘆するほかないものでした。
天才と言う呼び方すらも生易しいその才能。
嘘を真実へと捻じ曲げ、他人の人生を盗み取るための、凶悪な力……!!
観客の目が一層彼女にひきつけられていく中で、舞台はクライマックスへ。
マクベス夫人も、マクベスも、破滅経て引き寄せられていく……
野菊は思うのです。
同じように、あなたも咲朱としての命を終えるためのカーテンコールへ!!
万感の拍手が鳴りやまぬ中、カーテンコールは行われました。
笑顔をで観客の声にこたえる累。
そして……口紅の効果が切れるまでは……残り数秒!!
この観客の視線が集中する中で、ついにその時はやってくるのです!!
というわけで、とうとう運命が決するときがやってきてしまう本作。
累への歪んだ憎しみの心が形となった、復讐計画。
顔を入れ替える口紅をすり替える、と言うその計画は確実に成功しています。
そして、暗闇の中で顔交換を行う、と言うことで正常にそれが行われているかどうかを隠すという詰めの部分も。
野菊の計画は、今まさにその舞台の上で実を結ぼうとしています。
計画のまま、多くの人々の前で累の顔がもとの醜いものに戻ったとすれば……
もはや累は、ここまで築き上げた咲朱という人生をすべて失うことになります。
それどころか、その顔交換の真実までもが暴かれ、彼女のこれからの人生すべてが闇に閉ざされてしまうかもしれません……!!
運命の時は、容赦なくやってきます。
累はその時、どんな表情を浮かべるのでしょうか。
そして、野菊は……!?
運命の時瞬間、見逃す手はありません!!
そして物語は新章へ。
この多くの人間の運命を捻じ曲げた、すべての始まり……
淵透世の過去が暴かれていくことになるのです!!
愛と憎しみと怨念。
そんなものが作りだした、本作の始まりも必見ですよ!!
今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!
「累」第9巻 松浦だるま先生
講談社さんのイブニングKCより刊行です。
さて、とうとう累を地獄に叩き落とす計画を実行に移した野菊。
顔を入れ替える口紅を偽物とすり替え、本番の舞台上で累は素顔をさらす、というその計画……
野菊は滞りなく口紅をすり替え、そして舞台は幕を開けようとするのです……!
運命の舞台、最終公演の直前。
野菊は、累との「最後」の交換の時を迎えていました。
野菊は周到の準備を済ませています。
人目から隠れて、二人が口づけをする。その場所として選んだのは、小道具などが置かれている倉庫でした。
その倉庫の、たった一つ時金井蛍光灯をあらかじめ抜き取っておく。
そうすることで、お互いの顔の見えない状況を作りだしたのです。
口づけによる顔交換の効果時間は12時間。
その時間をフルに活用するために、二人が顔を交換するとき、二回の口づけを行うのです。
最初の口づけで、お互いの顔をもとの状態に戻す。
そして、2度目の口づけで顔を交換する……
倉庫の中を真っ暗にすることで、その最初の口づけで顔がもとに戻ったことか確認できないようにして、口紅のすり替えを気付かせないようにした、というわけです。
真実を知らないまま、二度の口づけは行われました。
これであとは、開演を待つだけ……
野菊はその心の中に沸き上がる感情を押し殺し、倉庫から先に出て周りに人がいないことを確認。
出てきて大丈夫だ、と累に声をかけるのです。
するとるいは、野菊の手首をつかみ……そして、彼女の胸に顔を寄せたのです!
彼女の突然の行動に、戸惑う野菊。
累は、震えながらこう言うのです。
怖いの、初めてこんなに緊張してる。
あのね、「ガラスの動物園」の時からカーテンコールの客席にあなたを探すようになっていた。
あなたが見てくれている、そう思うだけで心強いの。
だから今日も、最後までしっかり見ていて。
……涙を浮かべながら、野菊の顔を見上げてくる累。
野菊の脳裏には、一瞬、もしかしたらと言う可能性の、違う運命の景色がよぎります。
もし、生まれ方や出会い方を間違えず、普通の姉妹として支えあっていきられたら、と……
あり得ないことで、いくら考えようとも無駄なことだというのに……
もちろんよ、約束したでしょう、共に歩むと。
とっさにそう答える野菊……
彼女の心中の揺らぎを知る由もない累は、ありがとう、と笑顔で返すのでした。
ロビーで腰を下ろす野菊に、羽生田がコーヒーを持ってきました。
顔色が悪いがどうかしたのか、と声をかけてくる羽生田に、野菊は問いかけます。
ずいぶん私に気を使っているのに、と。
それを聞いた羽生田は少し間をあけた後、その理由について思い当たることを語り始めます。
お前の、父親の話に対する同情はあるかもな。
子を産ませておいて踏みにじるような男は、殺されて当然だ。
そう言うやつに他にも覚えがあってね。
……そんな話をしているうちに、舞台は幕を開けました。
累の信頼、羽生田の同情。
……ここに来て、野菊の裏切りに後ろめたさを感じさせるような出来事が重なってきました。
ですが野菊は、その決意を揺るがせないよう、考え直します。
こんなものは、自分が都合の良い協力者である限りのまやかしだ。
舞台上に目をうつせば、累は咲朱として、見るものを引き込んで止まない凄絶な演技を見せつけています。
「私だって乳をのませたことがあります。」
「乳房に吸い付く赤ん坊がどんなにかわいいかは知っています。」
「でも」
「私はその柔らかい歯茎から乳首を引きもぎって」
「脳みそを叩きだして見せる」
その台詞は、マクベス夫人そのものから出ているとしか思えない、圧倒的な禍々しさをはらんでいて……
到底、先ほどまで野菊に縋りついて震えていた女性と、同じ人物とは思えないではありませんか。
そして、舞台はあのシーンに差し掛かります。
「消えてしまえ」
「呪われたしみ!」
「消えろというのに!!」
あまりにも悲痛なその叫び、悶え、苦しむその姿。
あの時よりも、昨日よりも、さらなる成長を遂げた表現力で演ぜられるその姿は、マクベス夫人が見たちの幻覚を観客にまで体感させるような、驚嘆するほかないものでした。
天才と言う呼び方すらも生易しいその才能。
嘘を真実へと捻じ曲げ、他人の人生を盗み取るための、凶悪な力……!!
観客の目が一層彼女にひきつけられていく中で、舞台はクライマックスへ。
マクベス夫人も、マクベスも、破滅経て引き寄せられていく……
野菊は思うのです。
同じように、あなたも咲朱としての命を終えるためのカーテンコールへ!!
万感の拍手が鳴りやまぬ中、カーテンコールは行われました。
笑顔をで観客の声にこたえる累。
そして……口紅の効果が切れるまでは……残り数秒!!
この観客の視線が集中する中で、ついにその時はやってくるのです!!
というわけで、とうとう運命が決するときがやってきてしまう本作。
累への歪んだ憎しみの心が形となった、復讐計画。
顔を入れ替える口紅をすり替える、と言うその計画は確実に成功しています。
そして、暗闇の中で顔交換を行う、と言うことで正常にそれが行われているかどうかを隠すという詰めの部分も。
野菊の計画は、今まさにその舞台の上で実を結ぼうとしています。
計画のまま、多くの人々の前で累の顔がもとの醜いものに戻ったとすれば……
もはや累は、ここまで築き上げた咲朱という人生をすべて失うことになります。
それどころか、その顔交換の真実までもが暴かれ、彼女のこれからの人生すべてが闇に閉ざされてしまうかもしれません……!!
運命の時は、容赦なくやってきます。
累はその時、どんな表情を浮かべるのでしょうか。
そして、野菊は……!?
運命の時瞬間、見逃す手はありません!!
そして物語は新章へ。
この多くの人間の運命を捻じ曲げた、すべての始まり……
淵透世の過去が暴かれていくことになるのです!!
愛と憎しみと怨念。
そんなものが作りだした、本作の始まりも必見ですよ!!
今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!
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