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今回紹介いたしますのはこちら。

「サエイズム」第4巻 内水融先生 

秋田書店さんのチャンピオンREDコミックスより刊行です。



さて、蘭に振り回されてしまう美沙緒。
ですが彼女の存在によって、美沙緒は冴を二人きりで別荘に泊まるという恐怖のイベントを無事終えることができました。
しかし無事とはいえ、冴の恐ろしさや得体のしれなさは一層増すことに。
蘭と言うトラブルメーカーの登場によって、冴と美沙緒の関係はどうなっていくのでしょうか!?


蘭、そして古海の導きもあり、新たな協力者を得ることができた美沙緒。
その協力者に、あるアドバイスを受けた美沙緒は、決死の思いでそのアドバイスを実行することにしました。
協力者によれば、古海とともに実行してきた数々の作戦の中で、最もいい線を言っていたのが最初の作戦である「脱真木作戦」。
それは、冴の愛する「気弱な少女」だった美沙緒が、自らの意思で能動的なキャラクターに変化し、冴の気持ちを離れさせる……というもの。
最終的に美沙緒は、冴の迫力と暴力によって折れてしまい、その作戦は頓挫してしまったわけです。
が、逆に言えばそこで美沙緒が折れず、能動的な自分を演じ続けることができれば関係を断ち切れた……可能性もあった、と言うことでしょう。
そこで美沙緒は、自ら動物園と遊園地が一体化したテーマパークで遊ぼうと冴を自分から誘います。
ここは協力者がバイトしている場所であるため作戦のサポートがしやすく、もし冴が何らかの要因で暴走したとしても、人目の多いテーマパークならば大げさなことはできないだろう、と踏んだのです。

テーマパークにつくなり、遊園地に行こうという冴のリクエストを決死の思いで断り、動物が見たいとわがままを押し通した美沙緒。
冴の迫力に惜し負けてしまいそうになりながらも、何とかその作戦を実行していたのですが……
動物園を見終えた後、冴はあれに乗ろう、とジェットコースターを指しました。
美沙緒があれに乗ったらどうなっちゃうのか見たい、さんざん付き合ったんだからいいでしょ?
恍惚の表情でそう漏らす冴。
その表情を見ると、美沙緒の心臓は早鐘を打つように鳴り響くのです、が……
美沙緒は勇気を振り絞り、絶叫系は絶対無理なんだ、やめとくよ、と返しました!
すると、冴はしばらくの時間を置いた直後……
その表情に怒りをみなぎらせながら、いいじゃん、乗ろうよ、とプレッシャーをかけてきたのです!!
そのすさまじい圧力に屈しそうになる美沙緒。
その様子を、変装した蘭も近くでひそかに、心配そうにうかがっています。
美沙緒はぐっと唇をかみ……
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こわれたおもちゃのようになりながらも、無理なものは無理だよ。乗らない、と答えました!!
そして、それよりお腹が減ったから、何か食べよう、と言って、半ば強引に協力者のいるカフェへと連れていくのでした!!

協力者も近くでひそかに力づけてくれるカフェにたどり着き、美沙緒はわずかながら落ち着きお取り戻した……と言いたいところでしたが、そううまくは行きません。
席につくなり、冴はいきなり本題に入ってきたのです。
私が別荘にいる間に、美沙緒の中にどんな変化が起きたのか、教えてくれる?
……全身から迸る、さっきと言っても差し支えない冴の圧力。
その苛立ち様を見るに、この作戦は確実に効果を上げていると言っていいでしょう。
問題は、美沙緒の気持ちがこの圧力に耐えられるかどうか。
……美沙緒は、激しく音を立てる心臓の鼓動を何とか抑え込みながら、口を開きます。
冴ちゃん、今日呼び出したのはわけがあるの。
いじめられていた私を助けてくれた時は本当にうれしかった、でも冴ちゃんはだんだん変わっちゃったよね?
私も最初は冴ちゃんが好きだったけど、その好きは冴ちゃんがいつも言っている種類の好きじゃないの。
私は冴ちゃんと同じ気持ちには絶対なれない……!
に意を決してそう告げた美沙緒ですが……冴は、ものすごい形相で美沙緒をにらみながら、へえ、そう、と静かに答えます。
ですがその鬼気迫る迫力を感じさせる表情そのままに、冴の怒りは頂点近くにまで来てしまっている様子!!
そんな台詞、聞きたくなかったよ美沙緒。
そう言いながら、冴は靴先に仕込んだスタンガンを作動させ、美沙緒のすねを軽く蹴ってきたのです!
この痛みを知れば、これ以上の「わがまま」は言えなくなるはず。
冴のそんな考えを、美沙緒は表情一つ変えず、予想外の言葉で返してくるではありませんか!
スタンガンは効かないの、ジーンズの裏にゴムを縫いつけてきたから……
そして、さらに美沙緒は続けます。
古海君を解放すること、最初の頃みたいに普通の友達に戻ること。
この二つを聞いてくれないなわ、私、もう冴ちゃんと遊べないから!!
とうとう言ってやった、美沙緒からの最大級の「わがまま」!!
それを聞いた冴は……今まで以上の、悪鬼羅刹のごとき表情で今の心境を如実に表すのです!!
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私に命令するんだね……!
冴から発される圧力は、現実に突風が襲ってきたかのような威力を持って美沙緒を直撃します。
さらに恐ろしいことに、何も知らない周囲の客までもが奇妙な寒気のようなものを感じているではありませんか。
その迫力を真っ向から浴びた美沙緒の精神は、ぽっきりと折れてしまっても不思議ではないでしょう。
ですが、このまま美沙緒が彼女に屈すれば、やがて待っているのは以前の被害者のような……家族まで被害が及ぶ上、自らの命を絶つという無残極まりない結末。
美沙緒は彼女のようにはなりたくない、と言うギリギリのところで……対にその言葉を紡ぎだしました。
うん、命令するよ……
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私を、自由にして、冴ちゃん!!


というわけで、とうとう自分の口から直接冴に決別の意思を告げた今巻。
今まで様々な手を使って、冴は今まで数々の少女を、そして美沙緒を思うがままにしてきました。
それはすべて、冴の超人的な身体能力、あらゆる出来事をもみ消すことのできる権力と財力、彼女の忠実な傀儡である着ぐるみたちの散財があってのことです。
対する美沙緒たちには、そんな大層な武器は何もありません。
彼女に太刀打ちする手段は、蘭たちが講じたささやかな策略と、美沙緒の精神力だけ!
果たしてこの決死の作戦は、冴からの支配を脱するという目的に到達する作戦となりうるのでしょうか!?
あるいは冴の狂気にその作戦ごと呑み込まれてしまうのでしょうか……
冴の束縛する愛と、そこから流れんとあがく美沙緒達。
その壮絶な戦いが、今巻にて完結するのです!!

その完結を前に、物語の様々な謎も明かされていきます。
爆発に巻き込まれた古海はどうなったのか。
どんなとんでもないことをしても、自信に満ち溢れている蘭のその自身の源は?
そして……冴の正体は?
その謎が明らかにされ、物語は一気に佳境へ。
序盤は冴の恐怖をじわじわと描いていき、中盤はその超人ぶりを明らかに。
そして終盤は怒涛の展開でそのすべてを明らかにするという構成となった本作、終わってみれば主役は冴だったといわざるを得ませんでしたた。
彼女の愛憎劇の終着駅を、その目でお確かめください!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!