sz0
今回紹介いたしますのはこちら。

「食糧人類 -Starving Anonymous-」第1巻 原作・藏石ユウ先生 漫画・イナベカズ先生 

講談社さんのヤンマガKCより刊行です。

さて、雑誌の休刊と言うピンチに会いながらも、ウェブ連載となって完結を迎えた「アポカリプスの砦」。
その完結の興奮も冷めやらぬうちに、今度は妙にホラー・サスペンス系作品の連載が多いeヤングマガジンで本作の連載を開始。
その内容はやはりホラー系なのですが、その内容はと言いますと……


伊江とカズは、ハンバーガーショップで時間を潰していました。
伊江がいつもここに来ると口にするのは、決まってナゲット。
そのナゲットを指し、カズはよくそんなものが食えるな、とはやし立てます。
なんだかわからないようなくず肉を集めて薬品で綺麗にして成型する「ピンクスライム肉」。
この手の店では間違いなくそれを使っているね、と。
そんな会話を大声でしていたせいでしょう。
ほかのお客様もいらっしゃいますのでお静かにお願いします、と鬼の形相の店長にせまられ、二人は半ば追い出されるように店を後にしたのです。

外は、うだるような暑さです。
街行く人の表情を見ても、その服装を見ても、まさに夏真っ盛り……に見えるのですが、実はまだ3月。
近年は毎年のように異常気象だと騒がれておりますが、それももうこんなところまで来てしまっているのかと言った感じです。
伊江とカズは、そのままバスに乗り込みました。
ただでさえ日本の人口は減っているのに、これ以上「滅びそう」なニュース入らないとぼやくカズですが、そんな暗い未来でもしょうらいのゆめというやつはあるのです。
それは、気象学者。
こんな世の中だから需要があるみい稼ぎになりそうだ、とうそぶくカズなのですが、実際は違います。
彼の祖父母は、この異常気象によって熱中症で倒れ、そのまま命を失ってしまっていたのです。
大学の授業料もバカにはなりませんが、両親も協力を約束してくれたとのこと。
伊江は数の強い決意を知り、冗談交じりに地球の未来はお前に任せた、と告げるのですが……彼から返事は返ってきません。
どうしたのかと彼のほうへ視線を戻しますと……先ほどまで会話をしていたにもかかわらず、カズは死んだように眠りこけているではないですか!
しかもそれは数だけではありません。
伊江以外の、乗客全員が眠っていたのです!!
あまりに異様なその事態、伊江は運転手のほうに駆け寄るのですが、ぬっと顔を出した運転手はガスマスクを装着しています。
驚きのあまり、伊江は今まで風邪気味でつけていたマスクを外してしまいました。
その効能で今までこのバスに蔓延していたガスを吸わずに済んでいたのでしょう。
たちまち家はその意識を失い、床に倒れこんでしまったのでした。

マスクの効能だけではなく、もともと伊江にはそのガスが効きづらいのでしょう。
伊江は目を覚ましました。
そこは、同じようにたくさんの眠らされた人らしき人物が無造作に詰め込まれた、トラックの荷台の上です。
まったく事情が呑み込めないまま周りを見てみますと……何と言うことでしょう。
sz1
周辺には、丸々と太った人間、らしき肉塊が無数に冷凍状態で転がされているではありませんか!!
さながら冷凍マグロのセリのようなその場所にも驚くばかりなのですが、さらに驚くべきなのはその冷凍される人間です。
周りを見ればここがどういう場所化はともかく、やばい場所であることはわかるはず。
だというのに、丸々と太った彼らは、係員らしき者たちの命令に従うままに怪しげな機械のコンベアの上に自ら乗り込んでいき……そして、冷凍されているのでした!!
さらに恐ろしいことに、その冷凍された人間は……凍ったまま電動のこぎりで裁断され……「精肉」されている様子!!
その目の前の光景は、到底現実のものと受け入れることなどできません。
伊江がそうやってうろたえていると、係員らしき人物の一人が伊江に気が付きます。
が、助けてくれる……などと言うことはありませんでした。
若いのに、気の毒にな。
そういって、伊江を値踏みするように見回した後「2型」と判別。
するとまた別の係員が、それこそマグロを移動させるときに使う柄の長い鎌のようなものを家の背中につきたて、強引に奇妙な部屋へと投げ込んだのでした!!

伊江が投げ込まれたのは、薄暗い広い部屋でした。
今落とされた入口は、かなり高い位置にあり、投げ込まれて転げ落ちてきたローラーコンベアを登ってたどり着くのは無理そうです。
後ろを振り返って状況を確認してみますと……そこには
sz2
天井から伸びているたくさんの「管」のようなものを加え、一心不乱にそれを吸っているたくさんの、丸々と肥え太った男性たちが大勢いるではありませんか!!
しかも彼ら、今転げ落ちてきた伊江には見向きもせずその管を吸い続けているというのもまた異様……
伊江の戸惑いが一層加速する中、彼はとんでもないものを再び見つけてしまうのです。
それは……管から出る液体を一心不乱に飲み続ける、カズの姿!!
しかも分かれてからそれほど時間がたっていないでおろうにもかかわらず、彼の体はすでに死亡をつけ始めていて……!!
カズは伊江に気が付くと、これ飲まないか?すごいうまいよこれ、とその管から出てくる透明な水を勧めてきました。
ここはどこなのか、なにがどうなっているのか。
伊江の当然の疑問に全く答えず水を勧めてくる。
異常庭をかけて異常なこの事態ですが、この蒸し暑い空間で差し出されるその液体はとても甘美なものに感ぜられます。
しかも、なにか果物のようなにおいも漂ってきて、一層それを飲みたいという欲が掻きたてられて……
とうとう家が誘惑に負け、その管を手に取ろうとした瞬間のことです。
突然、後ろから何者かが羽交い絞めにしてきてそれを阻止してくるではありませんか!
その男は、あの水を飲んでしまったら、以前のそいつとは違う人物になってしまったと思え、と数野様子を見させます。
あれは、飲むものの施行を抑制するらしい。
そんなことを目の前で言われていても、気にせず飲まないなら全部飲んじゃうぞ、と正気を失った目で漏らすカズ。
そしてその周囲には、こぼれた水を飲みつくさんと群がる肥え太った人々……!!
これを見せられては、この水を一口でも飲んではいけない、と言うことが嫌でもわかります。
伊江を羽交い絞めにした謎の男と、その協力者らしいもう一人の男は、伊江を解放した後にこの場所をこう呼びました。
飼育室、と。
sz3
飼育室らしい、人間のね。


というわけで、突如連れ去られ、怪しげな施設へと叩きこまれてしまった伊江とカズ。
彼らはこの地獄で出会ったナツネと山引と言う二人とともに、この地獄を出るためにあがくこととなります。
ですが問題は、この施設の全容が全くつかめないということ。
多くの人間を連れ去り、怪しげな液体で肥え太らせ、そして凍らせて精肉する。
一体それは何のための行動なのか、どんな組織が行っているのか?
様々な謎に包まれたこの施設から、伊江たちは生きて逃げ延びることなどできるのでしょうか……
この後、物語は大方の皆様の予想を覆す展開へ!
人間を精肉する理由と思しき、それは……!!
「アポカリプス」でも培われた、薄気味の悪い(褒め言葉)描写がさえまくり、次々にイベントが巻き起こるスピーディーな展開も相変わらず魅力的!
ゾンビもので脚光を浴びたコンビの新作は、その前作で楽しませてくれた要素はそのままに、また別の恐怖を堪能させてくれるようですよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!