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今回紹介いたしますのはこちら。

「アサギロ~浅葱狼~」第14巻 ヒラマツ・ミノル先生 

小学館さんのゲッサン少年サンデーコミックスより刊行です。



さて、トレードマークともいえる揃いの羽織と「誠」の旗を作りその存在感を示した浪士組。
市井の人々への印象も変わりつつなる中で、様々な場所に影響が出始めます。
柔術の使い手である愛次郎はどうしても総司と対戦したくてたまらないという感じになっていますし、何よりも高杉の手の者である佐伯と、その手引きによって愛次郎に狙いをつける人斬り・河上彦斎の動きも危険!!
果たして今巻、浪士組に襲い掛かるのは……?


総司にこれでもかと力の差を見せつけられてしまった愛次郎。
その総司のアドバイスを受け、天然理心流の想い木刀での素振りをすることにしました。
世闇の中でも、一人木刀を振り続ける愛次郎。
ひとつ振るたびに体が揺れる、剣の使い方が違うのか、重心が違うのか。
ただ振っているだけなのに「お前、それ間違ってるぞ」と教えてくれるかのようだ!
すごいな、この木刀は!!
そんなことを考えながら、ひたすら木刀を振り続ける愛次郎。
もっと、もっとと素振りを繰り返していますと、次第にその音は力任せに振った乱暴な音から、風を切るような鋭い音へと変わっていきます。
振れている!
己の体に起きつつある変化に手ごたえを感じながらひとしきり素振りを行ったあと、引き上げる愛次郎。
するとその行く先に、風呂焚きをしている師・松原の姿がありました。
実力者であるにもかかわらず、下働きのようなことをしている松原に、相変わらずですねと声をかける愛次郎。
すると松原は、いい音をさせていたな、と愛次郎の素振りをほめてきたのです。
愛次郎は、試衛館の人はみなこれを振って強くなるんです、と例の木刀を指します、
そうか、うんそうか、と笑顔でうなづく松原に、愛次郎は今の自分の素直な気持ちを告げはじめました。
初めてここに着たとき、ここは私の来るべきところではないと思っていた、が、近藤局長に声をかけられ、この人と先生を会せてみたいと感じた。
自分はここにきて本当によかったと思っているが、先生を無理につき合わせてしまったのではないか、もっと他にやるべきことがあったのではないだろうか……?
愛次郎の真剣な胸中を聞いた後、松原は笑い飛ばすのです。
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それはお前の買いかぶりだ、私はこうして風呂焚きをしてるくらいがちょうどいい!
松原の笑顔には、一点の曇りもありません。
松原の思いはすべて、愛次郎のために注がれているのかもしれません。
それを愛次郎も感じ取り、風呂焚きを手伝い始めるのでした。

その直後のことでした。
浪士組がにわかに騒がしくなり始めたのは。
浪士組が色めき立つのは、最近巷を騒がせている食い逃げ犯が現れたとの通報があったからです。
その食い逃げ犯と言うのはただの小悪党ではなく、ひとしきり飯を食ったあと浪士組にツケておいてくれ、と言い残して立ち去るという、明らかな挑発行為を繰り返す男なのです。
頭巾の上から笠をかぶり、お歯黒をべったりと縫っているというその不気味な男こそ、河上彦斎!!
その正体こそ一同は知りませんが、浪士組をバカにするような行動をするものを捨ておくわけにはいきません!!
一同は総出で食い逃げ犯を探し回るのですが……

そんな試衛館の右往左往を、屋根の上から眺めている男がいます。
そう、河上です。
河上はいたずらに浪士組に襲い掛かるのではなく、自らが霧がいのある男と見込んだ愛次郎が誰なのかをじっくりと探っているようで。
闇にまぎれ、ゆっくりと見まわしていると……やがて、河上は一人の男に狙いをつけました。
あの男、他の連中と歩き方がまるで違う、あの男に違いない!!
そう考えて狙いをつけた男は、河上の予定通り柔術の達人、愛次郎……ではなく、彼の前を歩いているその師、松原だったのです!!
見つけた、と言う声とともに、地面に降り立つ河上!!
ですがその降り立った先は、松原と愛次郎の背後で、しかもそのまま河上はどこかへ走り去っていってしまうではありませんか。
物音に気が付いた愛次郎は、すぐにその人影の後を追いかけます。
何が起きたのかと松原がそちらを振りむこうとすると……すぐそばの角を曲がってきたのか、それとも塀ずづたいにやってきたのか、消えたほうとは逆の路地から河上が現れました!!
その足の運び、身のこなし。
壬生浪士組最強の男、佐々木愛次郎という男はお前だろう。
……その問いかけに、何も答えないまま対峙する松原。
河上は、誰でもいい、お前が本物の侍だということはわかった、と殺気をみなぎらせるのです!!
その時、引き返してきた愛次郎が現れます。
愛次郎は私のことだ、と言いながら前に出てくる愛次郎を見て、河上は首をかしげ……おかしい、聞き間違いか、まあ雑魚には用がない、と漏らします。
愛次郎はその男の異様な殺気を見て、じりっと間合いを一歩詰めた、その瞬間!
河上の雑魚はすっ今度れ、と言う声と、松原のその間合いに入るな、と言う声が同時に響いたのです!
間合い?
何も起きない、おきようがないほど離れている、はずだ。
愛次郎がそう思ったのは、ごくごくわずかな瞬間でした。
気が付けば、到底剣の間合いとはいえないような遠距離に立っていたはずの河上が、
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愛次郎の懐にまで飛び込んでいるではありませんか!!
まともな反応もできない愛次郎は、迎え撃つどころか刀に手をかけることすらできず、棒立ちに。
河上はそのまま抜刀し、愛次郎を逆袈裟に切り捨てようと刀を振ります!!
が、その直前、松原が愛次郎を突き飛ばしました。
愛次郎はその勢いで地面に倒れ、河上の剣から逃れることができたのです、が……
そのまま河上とつばぜり合いとなった松原を見て、愛次郎は驚愕することとなります。
自分をかばうために伸ばした松原の左手、その手首から先が……
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切断され、地面に落ちていたのですから!!


というわけで、河上の強襲が描かれる今巻。
河上の実力も相当なものとはいえ、その河上に見込まれた松原もまともに戦えば勝ち目がないわけではなかったでしょう。
ですが、不用意に間合いに入った愛次郎を助けるため、致命的な負傷を負ってしまいました。
このまま戦い続ければ、多量の出血によって松原が息絶えるのは時間の問題。
この状況を打破するには、愛次郎が奮起するしかないのでしょうが……

今巻は、このように愛次郎が中心となって物語が進んでいきます。
総司や鴨といった人物の活躍もあるにはあるのですが、力を入れて描写されているのはあくまで愛次郎。
今巻の最初で、ある程度伸びてしまっていた鼻を総司にへし折られ、木刀の素振りで充実感を得る、そして死である松原の壮絶な姿を見て驚愕する、と様々な体験をした彼ですが、この後もまだまだ彼に試練が訪れます。
鴨に連れられていくことになるある場所で感じることとなり、さらにそのあと愛次郎を一層悩ませる出来事に遭遇……
その中で松原との出会いと言う階層も挿入され、ますます彼の心中を浮き彫りにしていくのです。
最初こそ希望に満ち溢れていた彼の顔は、それらによってどのような表情に変わっていくのか……
果たして愛次郎を待ち受ける運命とはどんなものなのか。
様々な感情の去来する今巻、最後まで目が離せません!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!