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今回紹介いたしますのはこちら。

「辺獄のシュヴェスタ」第4巻 竹良実先生 

小学館さんのビッグコミックスより刊行です。



さて、コルドゥラと言う協力者を得たエラ達。
さらに不手際を働いたものへの刑の執行を買って出たことで、エラは修道院の中でも一目置かれる存在になってきました。
着々と進んでいく脱出のための準備と、準備を盤石にするための疑われない地位固め。
しかし物事はそううまくは進まないもので……


修道院の長、エーデルガルトはどんどんとその権力を強めていました、
教皇庁図書館の全面的な閲覧権を得たエーデルガルトは、その部屋を開くカギを手にすると、すぐに大勢の部下たちを連れて図書室の中へと入っていきます。
そしてその図書室の中にぎっしりと収められた蔵書は、様々な知識や歴史が詰め込まれていまして、まさしく宝と言っていいもの。
そしてエーテルがるとは、「見渡す者」と呼ばれる、白い修道服に身を包んだ、手足を拘束された人物を部屋の中央に座らせます。
そしてその「見渡す者」に、部下たち全員でその本の内容を読み聞かせて……
一体何をやっているのか、気になった枢機卿の一人、ロッシはあえてその中に入っていき、アウグスティヌスのある本を探している、と割り込んでいきました。
するとエーデルガルトは、ちょうど用意ができている、と言いだし、「見渡す者」に指示をすると……
「見渡す者」は、
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その本のくだりを、すらすらと諳んじはじめたではありませんか!!
あっけにとられる枢機卿たち一向ですが、すぐに冷静さを取り戻し、要するに複写しただけだはないか、と吐き捨ててその場を去ろうとします。
が、「見渡す者」はそのまま続けて奇妙なことを言いだしたのです。
十分の一税帳簿1535年、司教は凶行に5000ドゥカーティ納めた。
十分の一税帳簿1536年、3500ドゥカーティ納めた。
イタリア聖職者六録巻五十二、ウルビーノ司教、マウリツィオ・デ・ロッシ、在職1522~1538。
……それは、35年と36年に起きた凶作を隠れ蓑に横領が行われたという記録と、その時横領を行ったのがこのロッシ枢機卿であったということを示す記録の内容でした!
その場にはエーデルガルトの関係者やロッシ枢機卿以外の多くの人物もいたため、瞬く間にあたりの雰囲気は一変!
調査をして、結果によっては査問会を開くことになる、と言われてしまった枢機卿は、勝手にしろ、とそそくさと去っていきます。
権力争いの末枢機卿に上り詰めてきた彼ら、誰でもつつかれれば何かしらは出てくるもの。
過去のすべてのデータを手にするということは、彼らを掌握するということ!
より一層権力を盤石にしたエーデルガルトですが、本当の目的はそれではないのです。
過去の膨大なデートを手にすれば、その統計から未来を予測することもできるかもしれない。
そして未来を予言するような「奇跡」を見せれば、人心を掌握することもたやすいはず!!
エーデルガルトに鍵を渡したジュスティーのは、エーデルガルトに、恐ろしい何かを感じていました。
私は、この聖なる都バチカンを、とんでもないものに売り渡してしまったのではないか……!?
ですがそんなジュスティーの不安を裏付けるかのような、恐ろしい出来事がこの後さらに巻き起こるとになろうとは、ジュスティーのも予想だにしていなかったのです……


一方のエラたちは、コルドゥラを加えた5人でいつもの日課となった食糧確保を行っていました。
この日は狩りがうまく行き、鹿をとらえることに成功。
大物の捕獲、そしてエラの行った「大仕事」で落ち込んだ気持ちを盛り上げるためにも、一同は努めて明るくふるまうのです。
ですがそんな中、仲間に加わったばかりのコルドゥラがこんなことを言いだすのです。
あなたたちなら、真実を知ったうえで正しい選択ができるかもしれない。
冬が来たらこの森で5人全員は生き残れない。
去年の私たちに起きたことを話すわ。

かつてコルドゥラも、この修道院の仕組みに気が付き、仲間たちと5人でこの修道院を脱出する手はずを整えていました。
ですが、冬になると獲物は激減。
獣は冬眠し、雪が積もれば痕跡を残さず森に出ることができず……
狩りも採集もできないため、ため込んだ食物だけでなんとかしなければいけない状態になったのですが……なにせ修道院の食事は口にできないため、このため込んだ食糧だけでひと冬越さねばならないわけで。
一日の食事を減らすのも限界で……
最初に食糧を減らした仲間は12月に衰弱して死亡。
やむなく院の食事を摂り始めると、薬の影響にのまれて一人が裏切ってしまいます。
そしてその一人の裏切りを阻止するため、一人が彼女を殺して自らの命を絶ち……
気が付けばコルドゥラは一人になってしまいました。
ベリーもキノコも、時期が終わる前に取りつくした。
狩りの技術が上がっても、獲物の数に限界があった。
自分たちが見ようとしなかった現実……
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この森には、5人分の冬を賄う力はない……

コルドゥラが提案したのは、「一人がチームから抜ける」というものでした。
確かに4人ならば、何とか切り詰めていって冬を乗り切ることもできるでしょう。
ですが、チームを抜けるということは院の食事を摂るということで、そうなれば薬の影響が出て、結果その人物が裏切ってしまうかもしれない……!!
どうすればいいのかわからない問題ではありますが、そこでエラが立ち上がります。
そして炭になりかけた薪を一本取り出し、このアジトの壁に自らのサインを記したではありませんか!!
これで私がここにいたことが証明される。
もし私が裏切れば共倒れ、裏切りの防止になる。
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私が抜けるわ。
……この作戦の要ともいえるエラの脱退宣言。
突然の言葉に、残った4人は……!?


というわけで、新たね展開を迎える今巻。
倒すべき敵であるエーデルガルトは、どんどんと巨大化していきます。
彼女の喉笛に牙をつきたてるために、脱出の準備を進めているエラたちなのですが……
仲間が増えることによる利益と弊害が早くも浮き彫りにされることとなりました。
脱出計画の経験者であるコルドゥラのアドバイスは確かに有用です。
ですがその有用な情報は、同時に5人では冬を越せないという現実の宣告でした。
このままでは生き延びることはできない、という状態でエラが選んだのは、自らがチームを抜けるという残酷な選択で……!!
ですが、だからと言って脱出計画を後戻りさせるわけにはいきません。
えらと言う精神的支柱を失うテアたちは脱走計画を続けられるのか?
一人になったエラは、修道院でどのように動くのか?
そんな中で登場する、新たな不安要素……!!

過酷極まる脱走計画は、さらなる困難を迎えることになります。
果たしてエラたちの脱出計画はどうなるのか!?
さらに強大な権力を握りつつあるエーデルガルトに隙は生まれるのか……?
目の離せない展開は続くのです!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!