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今回紹介いたしますのはこちら。

「風の魔転郎」 丸尾末広先生 

エンターブレインさんのビームコミックスより刊行です。


さて、エログロな退廃的作品というイメージの強い丸尾先生ですが、そんな丸尾先生も以前は少年誌向けの作品を描いてみたいと思っていたこともあったそうです。
そんな94年に、徳間書店さんから創刊された少年漫画誌が月刊マンガボーイズでした。
そのマンガボーイズで連載した、丸尾先生の数少ない少年向け漫画、それがこの「風の魔転郎」なのです!


雷雨降り注ぐ夜の明けた晴天のある日のこと。
内田小学校の6年2組に奇妙な転校生がやってきました。
風野魔転郎。
左目に大きな傷のある魔転郎は、北海道からやってきたといいます。
自己紹介は「よろしく!」の一言だけ!
あの席に座ってと先生に促されると、一切迷う様子もなくずんずんと歩き、すとっと自分の席に腰かける彼。
その独特の雰囲気は、すぐにクラスのみんなの間で物議を醸しだすのでした!!

授業中はずっとプールのほうを見ていますし、まともな会話もなし、女子たちが廊下で噂話をしている横を、目もくれず歩いていく。
女子たちは一層とっつきにくそうだとささやきあうのですが、彼の顔はなかなかハンサムですし、そのすかしたともとれる態度がカッコいいと感じるものもわずかにはいるようで。
サユリちゃんだけは、転校生だしよくしてあげないと、とほほを紅く染めるのでした。

ですがその態度は、女子たちよりもむしろ男子たちの反感を買ったようです。
クラスのガキ大将的な太めの男子とその取り巻きが、お前の親も変わっているな、魔転郎何て名前を付けるなんて、と魔転郎をその親ごと批判したのです。
ビルでもないのにマテンロー、ずーっとあなたをマッテンロー、などとはやし立てる取り巻きたち.
すると魔転郎は、くるりと踵を返したかと思うと、いきなり取り巻きたちにパシパシとビンタを見舞ったではありませんか!!
子分たちがいきなり殴られ、黙ってはいられないガキ大将。
きさま、と魔転郎に背後からつかみかかりました!!
完全に背後からとびかかれてしまった魔転郎ですが、彼は驚くべき反撃法を見せました。
後ろを振り返るのでも、ジャンプして避けるのでもなく、そのまま後ろを見ずに両拳を頭の後ろで挟み付けるような形で振るったのです!!
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まるで後ろが見えているかのように、その拳は的確にガキ大将の顔を捕えていて……!
さらに目にもとまらぬ動きでガキ大将の腕をつかんだかと思うと、そのまま片手で投げ飛ばしてしまいました!
完全に役者が違います。
ガキ大将はノックアウト、取り巻きたちは慌てて逃げていってしまいました。
そんな魔転郎のとんでもない力を目撃した、隣の席の石田は、あいつは何者なんだと当然の疑問を感じ、すかさずその疑問をぶつけようとします。
が、魔転郎は耳を貸さずどんどんと歩いていってしまい、やがて石田はその姿を見失ってしまいます。
それでも追いかけていってみると……魔転郎の消えた場所に、見慣れない制服姿の女子がいるではありませんか。
突然現れたように見える彼女に、お前は誰だと尋ねる石田。
ですが彼女もまたその問いに何も答えず……そのまま、忽然と姿を消してしまったのです。
まるで、幽霊か何かのように……!!

取り巻きたちは、プールサイドまで逃げてきていました。
思いだしてもいら立ちが募る、先ほどのこっぴどいやられかた。
魔転郎め、あいつはいったい何安打、もしかして人間じゃないんじゃないか!?
そんなことを愚痴りながらプールに石を投げて憂さ晴らししていますと……そのプールの中から……奇妙な男が顔を出します。
水をしたたらせ、プールから上がってきたスキンヘッドの黒衣のその男は、取り巻きの少年の頭をわしづかみにして軽々と持ち上げて見せ……!!
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再び目の前で起きた現実離れした様子に、取り巻きは大きな悲鳴を上げてしまいました。
ですがそこは校舎から離れたプール、誰の耳にも届かない……はずだったのですが、魔転郎の耳にはしっかりと届いていました!!
ちょうど午後の授業が始まるところでしたが、魔転郎は全くそんなことは気にせずプールへダッシュ!!
早速プールに駆け付けますと、そこには取り巻きの靴が落ちていました。
魔転郎はすぐに何が起きたのか察知!
迷いなくプールに飛び込むと、そこには先ほどの怪人が取り巻き二人を水中に引きずり込んだところでした!!
どうやら魔転郎はその怪人のことを知っている様子。
怪人を「水亡」と呼び、二人を離せと襲い掛かったのです!!
魔転郎のパンチは水亡の顔面に確実にヒット!!
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ですが水亡は、耳から毒液を出して反撃してきました!!
予想外の反撃を喰らってしまった魔転郎は、目を抑えて苦しみます。
そのダメージによって、目がぼんやりとしか見えなくなってしまったその隙をつき、水亡はどこかへと逃げ去ってしまったのでした。

その後、学校はつかの間の平和を迎えた……かと思われましたが、授業の後に早くも事件は起きてしまいました。
水道で先生が顔を洗うと、その顔が真っ赤に腫れ上がってしまいます。
そして同じ水でクラスの女子がうがいをすると、突如苦しみだして激しくおう吐したではありませんか!!
気が付けば、水道の水はどろどろの不気味な緑色の液体へと変化していて……!!
やがてその液体は猛烈な勢いで扉に放出され、そこで人の形へと固まっていきました。
その中から顔を出したのは……水亡です!!
高笑いとともに、女生徒に襲い掛かろうとする水亡。
その声を聞き、魔転郎は再び声のもとへと走るのですが!?


というわけで、謎の転校生・魔転郎が、謎の怪人と戦っていく姿を描く本作。
丸尾先生作品としてみると、本作は大変珍しい内容になっています。
まず主人公が特に裏のない、正義の超能力者だということ。
全体的に明るめの雰囲気であること。
そして何よりも、いうなれば能力バトル漫画であるということ!!
この第一話の水を操る水亡の後は、布を操る黒衣天、人間をウサギ怪人に変えてしまう耳長、そして砂を操るサンドマンと、次々に能力者が登場しては激しいバトルを繰り広げる、少年漫画らしい内容になっているのです!!
とはいえ描いているのは丸尾先生、先生ならではの個性はばっちりと残っています。
絵柄もあるのでしょうが、7~80年代のヒーローものをほうふつとさせる様々な演出、独特なせりふ回し、必要以上に(?)恐怖を描きたてるグロテスク(ほかの丸尾先生作品と比べれば大分マイルドですが!)描写……
やっぱり丸尾先生作品だ!となっとく間違いなしの味わいですよ!

雑誌が一年ほどで休刊してしまったため、本作もそのまま中途半端な感じで連載終了となっているためか、物語はほとんどないと言っても過言ではありません。
怪人がいったい何者なのか、魔転郎の正体は何なのか、女の子の幽霊の正体は?
ねずみ男的なポジションのキャラクターや、最終エピソードで登場する驚きの人物などなど、今後の展開もいろいろ考えておられたでしょうに、そのあたりは残念と言うほかありません!!
とはいえ、それを補って余りある独自の「雰囲気」が楽しめることは間違いなし!
丸尾先生ファンならば言うまでもなく、丸尾先生ならではのどぎついあれこれが苦手な人でも受け入れやすい内容の作品なのです!!
読めばきっとあなたも別れ際に「チャオ!」と言いたくなることうけあいですよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!