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今回紹介いたしますのはこちら。

「団地ともお」第28巻 小田扉先生 

小学館さんのビッグコミックスより刊行です。



さて、団地暮らしの小学生、ともおが何やかんやと毎日を過ごすさまを描いていく本作。
日常と言う枠組みの中で、実に様々なことに挑戦してしまう本作なのですが、そんな中の一つにパラレルワールドモノもちらちらと見受けられます。
今回もそんなパラレルワールドモノが収録されているのですが、いつものそれとはなんだか様子が違うようで!?


ここは団地です。
私は子供です。
そんな奇妙な会話を交わす、吉本とよしのぶ。
ともおはその二人に、あなたは団地に住む子供ですか?とそのテンションで話しかけられました。
戸惑いながらも、今日は何する?と返事を返すともおなのですが、やっぱり二人の様子は変。
サッカーをしませんか、それはいい考えです、と同じような口調で遊びの話を続けるのです。

とりあえずともおは三人でサッカーボールを使って遊ぶのですが、おかしいのは吉本とよしのぶだけではないようです。
道を通りがかった青戸さんも誰に話しかけるでもなく、今日は晴れです、とつぶやきますし、犬の散歩をしているお姉さんも、私は散歩をしています、と独り言。
違和感を感じながらも何も言うことができなかったともおですが、そこにともおのお母さんがやってきました。
やあ、私の息子。
私は買い物に行ってきます。
帰ってきたら、テストの点についてあなたを叱ります。
とても恐ろしいことになります。
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ほかの人と同じようなテンションの言葉ではありますが……全身から立ち上る殺気は本物!
恐ろしいことになるのは間違いなさそうです……
その殺気は吉本とよしのぶも感じ取ったようで、私はあなたに同情します、あなたはかわいそうな人です、と例の口調で同情を寄せてくれました。
が、いい加減この口調が我慢できなくなってくるともお。
いい加減やめろよ、みんなで俺をからかってるんだろ?いったい何の遊びなんだ!?
そう言ってともおは吉本とよしのぶに問いかけるのですが、彼らはきょとんとした顔をして、例の口調で返してくるのです。
私たちはあなたの言ってることがわかりません、サッカーの続きをしましょう。
話にならないようです。
ともおは何も言えず、クっ、と悔しさのにじむうめきと、二人を残してその場から離れるのでした。

今日は何かが変だ、気が付いたらみんなあんな、まるでロボットにでもなったかのような調子になっていた……
強烈な違和感にさいなまれながら、団地を歩くともお。
するとほどなくして、ばったりとケリ子に出くわしました。
しかしケリ子もあの口調です。
私は今日、とても機嫌が悪いです。
あなたを蹴らせてくれませんか?
待ってください!私はとてもあなたを蹴りたいです!!
口調は丁寧ながら、言っている内容はいつもと一緒!!
猛然と追いかけてくるケリ子から、ともおは何とか逃げ延びるのでした!!

逃げ延びた後、ハアハアと荒い息をおさえていますと、29棟の壁に奇妙な落書きがあることに気が付きました。
エコバッグに簡単な顔が描いてあるような絵の下に、「かんにん袋」としたためてあるだけながら、3階から5階にかけてくらいの巨大な大きさなその落書き。
今までは存在しなかったこれはいったい何なのか、と考えていますと、そこにともおの姉ちゃん、君子があらわれました。
ですが君子もまた、ここは団地です、荒れは奇妙な落書きです、とあの口調で話しかけてきたのです。
絶望のあまり、頭を抱え込んで何がどうなってるんだ!との身だをうっすら浮かべるともお……
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それを見ると、君子はほかの人とは明らかに違う驚きの表情を浮かべ、そして、ともお、あんたは正気なの?と普通の言葉で話しかけてきてくれたのです!!
どうやら今回は君子も奇妙な世界に迷い込んでしまったようで。
試しにほかのみんなと同じようにしゃべってみたのだそうですが、そうやってみてもやはりどうにもならなかったのだとか。
自分たちだけがまとも……で、いいんだよね?と不安そうな君子ですが、なにせともおはパラレルワールド迷い込みのベテランです。
きっと変な世界に紛れ込んじまったんだ、と考えを巡らせます。
思い起こしてみますと、何となくこのしゃべり方に覚えがあるような。
聞いたのか、見たのか、読んだのか……?
そして君子もまた、思い当たることがあるようです。
それは、あの奇妙な落書きのこと。
ああいうっ落書きをいつか描いたことがあるような気がする、と言うのです。
姉ちゃんの堪忍袋って手提げが付いてるんだな、とともおが謎の感想を言っている横で、君子はその落書きのことをじっくりと考え……そして、何かの本に落書きしたような気がする、と言うところまでたどり着きました!
そして「姉ちゃんの本」と言うワードで、ともおはひらめいたようです。
わかった、あれだ!!
一心不乱に走り続けるともおを、君子は慌てて追いかけながら、何なのかと尋ねますと……ともおから出てきたのは、思いもよらない本の名前!
……「姉ちゃんの参考書」という!!

ともおが思いだしたのは、君子の英語の参考書のようです。
その中で、登場人物たちがあの口調……英語の教科書の登場人物がしゃべるようなあの堅苦しいというか、杓子定規というか、あんな感じでしゃべっていたことに思い当たったのでした!
そもそもなぜともおがそんな本を読んだのかと言うのは疑問だったのですが、それはその参考書の形式がカギとなっていました。
漫画形式で登場人物が会話をしている、これまたよくある方式の参考書だったのですが、ともおの「漫画が入っている本はとりあえず読む」と言う習性が働いていたのです。
が、肝心のその本はいつもあるはずの君子の本棚の中に存在しませんでした。
パラレルワールド慣れしているともおは、あの本の中は言っているのなら、あの本が見つかるわけない、とすぐに察知。
君子はその謎のなれに驚くのですが……そこはそれ、これで手掛かりが一切なくなってしまったわけで。
困り果てていますと、突然ともおが無意識のうちにあの口調でこんなことを言いだすではありませんか!!
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3540系統のバスに乗れば、あなたは家に帰れます。
……ともおはその言葉を発した意識はないようですが……とにかく今はそこに縋るしかないでしょう!
ともおの手を引き、バス乗り場にかけだす君子!!
その間も、ともおはどんどんと参考書の住人化が進んでいるようで、私は団地に住む小学生です、私の姉は速く走ります、と例の口調でしゃべり始めていて……!!
目的のバスはすぐに見つかりました。
3540系統……サンコーショ、の語呂合わせってこと!?
つっこみながらバスに向かう君子ですが……バスからはこんなアナウンスが流れていました。
間もなく発車します。
君子は必死に、乗ります乗ります、と走る勢いで靴が脱げてしまうともおを強引に引っ張りながらそのバスに駆け寄っていくのですが……!?


というわけで、パラレルワールドに君子も一緒に迷い込んでしまうという新たな切り口のパラレルワールドモノを収録した今巻。
頭の良さでは君子に軍配が上がるのは間違いありませんが、なにせともおはパラレルワールドのベテランです。
実際今巻でもこのエピソードの少し前にまた別のパラレルワールドに迷い込んでいますし、その世界から脱出するというミッションにおいてはやはりともおのほうが頼りになりそうですが……?
二人で参考書の世界に迷い込んだ彼らの様子も面白い部分ですが、最後に待っているオチもばっちりな興味深いエピソードになっていますよ!!

今巻は青戸さんをはじめとした準レギュラー系のキャラクターの出番は少なめで、その分ともおメインのお話が多めです。
微妙な距離感をたもつ根津とのエピソードや、君子やお母さんに対してプレゼンするともお、君子とお菓子の選び方で争うともお、奇しくも売れ残ってしまったおもちゃを救うことになるともおなどなど、ともお大活躍です!!
そんななかでも、迷い込み系ではない完全なあられるワールドではあるものの、成長したともおの姿が見られる不思議なエピソードなどは注目せずにはいられますまい!!
こちらもぜひとと呼んでほしい一編です!

今巻はいつもに比べて少し薄めの全18話。
それでもやっぱり何でもありのストロングスタイルなハイクオリティのんびり日常は健在ですよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!