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今回紹介いたしますのはこちら。

「ビンゾー」第1巻 古谷野孝雄先生 

秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックスより刊行です。


古谷野先生は、95年から月刊チャンピオンで野球漫画「GO ANd GO」を11年間、07年から週刊チャンピオンでサッカー漫画「ANGEL VOICE」7年間と、秋田書店さんの少年誌でスポーツ漫画を連載してきたベテランの漫画家さんです。

そんな古谷野先生が再びチャンピオン系列の別の雑誌、別冊チャンピオンに移って連載を始めた本作。
ですが今回はいつものリアル路線スポーツ漫画ではないようで……!


201X年、それは爆発的な拡大を見せていました。
水疱瘡ウィルスが変異したことから生まれたそれは、瞬く間に世界中に広がっていきます。
死んでいる人間がうごきだし、人を襲う。
噛みつきによって感染が拡がっていく。
……そんな病気に侵された患者のことを、人々は……「ゾンビ」と呼んだのです。

そんな時、静岡のある場所で一人の男が動きだしていました。
ほとんど外に出ない、引きこもりに近いその肥満体の男……彼の名は、藤岡修造。
重い腰を上げ、彼は久しぶりに外に出ようとしていました。
その目的は、自分が熱を上げているアイドルのライブ!!
修造は当然のように、「東京にライブを見に行くから金をよこせ」と父親に金をせびるものの、当然そんな理由でハイどうぞとおかねを渡してくれるはずもありません。
ですが修造はそんなことにもめげず、こっそり父親の財布からクレジットカードを抜き取り、数万円を勝手にキャッシングしてライブに向かってしまうのでした。

修造の大好きなアイドル、みーもんの20歳記念ライブは大盛況。
そんな大盛況のライブの中で、修造はと言いますと……ほかのファンたちの間から、「神」と呼ばれ、遠巻きに見られていました。
なぜ修造が「神」と呼ばれているのか?
その理由は……抜群の切れを見せる「オタ芸」ゆえ!!
学校に通っていたころは、一人孤立していた修造。
そんな彼は、交通事故で2か月入院したのをきっかけとして、学校に通わなくなって二年半がたっていました。
寝ているか、ゲームしているか、ネットの掲示板に張り付いているか。
そんな無為な日々を過ごしていたある日に出会ったのが……みーもんの動画だったのです。
その動画を見て、彼は生まれ変わったのです。(自称)
それ以来彼は、有り余る時間のほとんどを彼女の応援のためのオタ芸の訓練に使い……
そして、神となったのでした!!

グッズを5000円以上買うと参加できる握手会も、当然参加している神……もとい修造。
実は修造、ここ2か月ほどみーもんのライブに参加していませんでした。
その目的は、彼女をじらすため!!
久しぶりの再会に彼女はどんな反応をするのか?
それが楽しみで修造はそれ以前は必ず参加していた彼女のライブに姿を現さなかったのですが……
修造の番がやってきました。
ちょうどその時のことでした。
みーもんの意識が、ふっと薄れ……
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修造の手にかみついてきたのは!!

少し前、みーもんはマネージャーに手をかまれてしまっていました。
……島国であるが故、ゾンビの発生を抑えられていた日本。
ですが今後深まっていく見通しの強い経済危機に備え、ゾンビ発生直後は完全に封鎖していた海外からの輸入を、つい最近特定の物資に関しての未開放してしまっていたのです。
その船のどこかに……おそらく、キャリアが潜んでいたのでしょう。
そのウィルスが、まさかこのアイドルの周りにまで届いてしまい……修造がその毒牙にかかってしまったのです!!

ゾンビと化したみーもんにかみつかれてしまった人々は、次々にゾンビと化し、人々を襲っていきます。
修造はと言うと……みーもんがゾンビになったなんて、とショックを受けるなど、人間としての感情はばっちり残っているようで。
とにかく、ここはいったん逃げよう!!
そう思って走りだそうとしたのですが……どうしたことでしょう。
ゾンビと化した人々のように動きがスローモーになってしまい、思うように走れないではありませんか!!
まさか、かまれたから俺もゾンビになったのか!?
驚愕する修造ですが、すぐにこんなに意識がはっきりしてるんだからそんなはずはない、と嫌な予感を振り払おうとするのです。
誰か、不安を払しょくしてくれないか。
縋るような思いで近くを見ると……そこには、おびえた一人のファンが。
それを見た瞬間、修造は……「襲いたい」と言う激しい衝動に駆られ、そのファンに襲い掛かってしまったのでした!!
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が、幸か不幸か、太った修造の動きは鈍く、そのファンの人はわりとあっさり回避。
そのまま逃げ去ってしまいます。
新たな犠牲者は生まれなかったものの……今の出来事は、修造が「ゾンビ」になってしまっtいつを突き付けるものとなってしまいました。
ゾンビだ、オレ、ゾンビになっちゃったんだ……
あまりの出来事に、深いショックを受け、座り込んでしまう修造……だったのですが……
かれのずぶとさは、とんでもないものでした。
修造はすぐ、まあなっちゃったもんは仕方ないかと冷静さを取り戻し、そしてこんなことを考えたのです。
俺がいなくなれば、両親は返って安心するんじゃないだろうか。
学校なんか行く気ないし、たぶん一生働かない俺を養わなくて済むんだから。
……そう考えるとなんか腹が立つな。
これからゾンビが猛烈な勢いで増えていくのは間違いない。
だったらもう一度生まれ変わってやろうじゃねえか!
どうせ俺なんか生きて立ってどうしようもない人間だったんだし。
なってやろうじゃねえか。
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ゾンビ界の神に!!
……今はまだ、自分が特殊なゾンビであることに気が付いていない、元オタ芸の神・修造。
今度はゾンビ界の神を目指すこの男が……のちに、世界を変えるのです!!


というわけで、ゾンビ界の髪を目指す男・修造の物語を描く本作。
引きこもりのアイドルオタクであった修造ですが、生来のその性格ゆえゾンビになってからの人生(?)を歩み始める道を選びます。
具体的にゾンビ界の神になるにはどうすればいいのか?
正直誰もわからないその条件ですが、修造は「仲間を増やしまくる」と言う手段を択んだようです。
が、ただでさえ身体能力が高くない彼が、仲間を増やしまくるというのは難しそう。
さらにこの後、ゾンビとなった彼の思いもよらない特性が明らかになり……?

ただこれだけでも、普通のゾンビパニックものではないことがうかがえる本作ですが、ここから先はさらにまた違った展開になっていくのです。
自分が特殊なゾンビであるということを、ある人物との出会いで知った修造。
彼はその特殊なゾンビとなった体を、普通の人間かのように操れる手段を探ることになっていきます。
そんな中で、着々と進んでいく国のゾンビ対策。
そして、ゾンビ対策を進める者たちに牙を剥く、怪しげな男……!!
数々の謎や、交錯する思惑。
本作はゾンビパニックと言うよりも、ゾンビを題材にした人間ドラマ、と言った方がいいのかもしれません!!
古谷野先生の得意とする、ふとしたことから人物の想いが見て取れるような細やかな人間の気持ちの描写もふんだんに盛り込まれていますし、同じくそんなドラマの中に挿入されるとぼけたコミカルなシーンもある、先生らしからぬ題材でありながら先生らしい作品になっているわけです!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!