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今回紹介いたしますのはこちら。

「外れたみんなの頭のネジ」第1巻 洋介犬先生 

泰文堂さんのアース・スターコミックスより刊行です。

さて、ホラー漫画をメインに描いてきた洋介犬先生の最新作である本作。
本作も先生が得意とする、オムニバスホラー的な内容となっているのですが、オムニバスものでありながらもきっちりとした主人公と目的が存在するストーリーモノともなっています。
その内容はと言いますと……?


ミサキの気分は憂鬱でした。
その日も当たり前のように学校に行き、誰もが何も気にしないまま当たり前の生活をしています。
が、そんな中でミサキは一人、「気付いて」いたのです。
……例えば、以前はいつでも、にこやかにあいさつをしてくれていた近所のおばさん。
現在のおばさんが挨拶をするのは、「壁」相手にだけ……
壁とだけ楽しそうに会話し続けるのです。
ほかの例を取れば、交番にいたおまわりさん。
好青年を絵に描いたようなにこやかな彼は今、奇声を発しながら人を撃つマネをしてうろつくようになっていたのです。

徐々におかしくなっている、ミサキの住む街。
少し前に山の上に建てられた鉄塔のせいなのでしょうか。
確かめようもないまま、徐々に、徐々に、確実におかしくなってしまっているこの街で、ミサキはおびえながら暮らしていたのですが……
とうとう、彼女自身にも影響が出た、のかもしれません。
部屋の中に、悪魔のような存在が現れるようになったのです。
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その悪魔のような存在は、当たり前のように話しかけても来ます。
本当に周りが狂ってんのか?
オレが見えているわけだし、お前のほうが来るってんじゃないのか?
そう話しかけてくるその悪魔を無視し続けるわけにもいかず、ミサキは答えます。
私もそうじゃないかと思った、でも、私が遭遇した狂った連中の話をしてやれば、私じゃなく周りが狂ってると確信するさ!!
そう言って……ミサキは、今まで実際に触れてきた恐ろしい体験を明かし始めたのです。

一か月前のことです。
いつものように下駄箱を開けますと、中に一通の手紙が入っていることに気が付きました。
もしかしてこれはラブレターってやつなのか?
でもここは女子高だし……でもでも男子の代理って可能性もあるし……
そんなことを考えながら、ミサキは慌てて中を確認しました。
すると中に入っていた手紙に書かれていたのは、「七尾ミサキへ、あんたなんか大機ライ、死ね」と記されていて……
悪戯か、いやがらせか。
とにかく期待半分で手紙を開いたミサキの怒りはマックスに。
お前こそ死ね、と毒づきながら、その手紙を破り捨てたのですが……
翌日も手髪は入れられていたのです。
が、その内容はまた奇妙なもので、「やっぱりあなたがスキ、大スキ」などとしたためられていました。
次の日も、また次の日も、そのまた次の日も、手紙は入れられていまして……その内容は毎日変化し、スキだったり、キライだったりしていたのです。
そんな奇妙すぎる手紙は、ある日とうとう異常さが極まった文章になって完結します。
「七尾ミサキ、あなたのことどう思ってるか、あたしの中で多数決しました結果」
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「スキスキスキスキスキスキスキスキ…………」
今までのよくわからない態度から、スキと明確に、それも異常な熱量であらわされたことが逆に恐ろしくなりまして、ミサキはホームルームで先生を含めたクラスのみんなに相談することにしました。
怖い、みんな助けて、お願い!
ミサキが必死の思いでみんなに語りかけますと、一同は神妙な面持ちになった後……
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いいじゃないか別に、結果的に「キライ」って言われてるわけじゃないんだし、とけろりとした……そしてどこか狂気をはらんだ面持ちで、全員にさらりと流されてしまったのです!!

そんなエピソードを聞いた悪魔は、確かにそれは周りが狂っているのかもしれない、と頷いてくれました。
すると悪魔の両目の間に、もう一つの目が現れ、その第3の目の瞼がわずかに開き始めたではありませんか。
なんでもそれは、悪魔の信じる心が、魔力として開こうとしている証なのだとか。
このまま恐怖の体験を話し続け、完全に悪魔を信じさせることができたとしたら……
悪魔はその魔力によって、ミサキを救ってやる……かもしれない、と言うのです!!
悪魔の言うことを信じてもいいのか、そもそもこの悪魔自体が妄想の産物なのではないか?
そんな不安もないではないでしょうが、ミサキは藁にも縋る思いで悪魔に頼るほか道はないわけで……
ミサキは恐怖からくる震えと不安を和らげるためにかぶっていた毛布を自らはぎ取り、こう叫んだのです。
まだまだあるよ、聞けばあくまでもくるってやがると思う話が!!
この街には……いくらでも……!!


というわけで、悪魔に対する狂気の証明を行う本作。
このあとも、続々とこの街の狂気がミサキによって次々と語られていきます。
ある日突然ぬいぐるみを抱えて学校にやってくるようになり、ことあるごとにそのぬいぐるみに暴力を振るうようになった優等生。
ある日突然、クラスメイトの耳をやたらと……いや、常に甘噛みするようになったクラスメイト。
ゆるキャラのぬいぐるみの中に入っていた、痩せぎすの女の驚愕の行動。
いつも赤ちゃんの人形のようなものを入れた乳母車をおし、カワイイでしょうと語りかけてくる「カワイイオバサン」の真実。
道端に落ちていた、ビデオテープの映像に隠された恐怖……
数々の恐ろしい物語が明かされ、そして悪魔は徐々にその第3の目を開いていきます。
その目が開いた時にどうなるのか。
そして、この街がおかしくなっていった原因は何なのか。
ミサキもただ悪魔に信じてもらおうとするだけでなく、自身でもそれを探ろうと危険を顧みず調査をしていくのです!!

本作の構成で非常に面白いのは、ホラーで、悪魔まで登場しているにもかかわらず、第1巻の時点でオカルト的な要素が悪魔の登場だけだ、と言うところです。
描かれているのはただただ、何らかの原因によって変貌してしまった普通の町の人々の異常な行動。
と言うことはこの異常事態も、オカルトではない何かによって引き起こされているという可能性も……!?
そもそも悪魔の存在すらも妄想の産物ではないと言いきることはできないわけで。
描かれていく狂気のさまを堪能しながら、この事態の真相に迫る様子を見守っていく以外、その真相を知ることはできなさそうですね!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!