ro0
今回紹介いたしますのはこちら。

「リバースエッジ大川端探偵社」第8巻 作・ひじかた憂峰先生 画・たなか亜希夫先生 

日本文芸社さんのニチブンコミックスより刊行です。

さて、大川端探偵社に舞い込む様々な事件を描いていく本作。
主な仕事は人探しや素行調査などなのですが、一風変わった依頼が舞い込むことも珍しくはないようで……?


眼鏡をかけた、いかにも真面目そうな男。
それが今回の依頼人の印象でしょうか。
依頼人、と言ってもその依頼人は、本当の依頼人の代理としてきたとのことで、どうもちょっぴりきな臭い以来の様子。
限りなく非常識な話なので、笑われてしまいそうだが、と前置きをしたうえで、彼はその依頼を切り出してきます。
自称・不老不死の老人がいるらしい。
……確かにファンタジックなお話ですが、詳しく聞いてみないことには話も進みません。
一体何歳くらいなんですか、と村木が尋ねてみますと……116歳、だとか。
それもありがちなほとんど寝たきりだったり、半分病人のような状態などではなく、ゴルフの飛距離はプロ並みという身体能力を維持しているのだと言います。
普通に考えればあり得ないこと。
ですが代理人は、依頼人がパパラッチに盗撮させたものだ、と何枚かの写真を見せてきました。
筋骨隆々の老人が、女性の肩を抱いている写真。
その老人のアップの写真。
みれば、その表情は非常に険しいもので、すでにただものではない空気を感じさせます。
さらに代理人は、動画も見せてきました。
その動画は、先ほど聞いたゴルフの飛距離を実際に見られるもの。
ゴルフの打ちっぱなしで、ガンガンと球を打つその姿は、
ro1
ものすごい迫力……到底116歳だとは信じられないのです。
彼の自称によれば、明治33年……1900年生まれ。
確かに116歳なわけですが……当然素直にそれを信じるわけにはいきません。
そこで、この探偵社に調査を依頼しに来た、というわけなのです。

週に一回、ゴルフの打ちっぱなしにベンツで送迎されている。
その情報を頼りに、まず村木がその打ちっぱなしに張り込み、老人を実際に見てみることにしました。
動画ではすでに見ていますが、実際に見てみますと……なるほどその老人の「迫力」は飛んでもありません。
不老不死だというのもなぜか信じそうになってしまうその老人、しばらくゴルフクラブを振ると、再びベンツに乗って打ちっぱなしを後にします。
村木もそれを追っていきますと、老人は同行していた柄の悪い男とともに高級マンションの中へと消えていってしまいました。
おそらく老人は底に住んでいるのでしょう。
最近の高級マンションは、セキュリティが万全で侵入は困難。
加えて、昨今のご近所事情や個人情報の意識が高まっていることも相まって、「隣室の住人」に関しても無関心でいることが多く……聞き込みで情報を売ることも難しそうです。
村木はその後ゴルフ練習場に戻って従業員に聞いてもみましたが、まともな情報は得られません。
あのおつきの男が組の関係者だということ、そしてその男が老人を「ジジィ」呼ばわりしていたこともある……そのくらいの事しかわからなかったのです。
有能な村木にしてはいまいちな戦果ですが、所長は何となくそれで事情背景を察知します。
その老人の扱い、そして尋常ならざるあの表情。
本当にあの老人に価値があるとすれば、裏社会が「保護」しているんじゃないか、と。
ゴルフの件も、資源が劣化しないように運動させてるのだろう、とあたりをつけた所長は、この事件に対してのアプローチを変えてみることにしました。
「悪人」のキャラにチェンジして、あの代理人のほうをつついてみる……!
所長はおもむろに電話をかけ始め、有力情報をゲットしたから、そちらの知っている情報をもう少しくれないか、と代理人との酒の席をセッティングしたのでした!!

その酒の席で、所長は例の自説を、盛りに盛って語りました。
代理人はそれを聞いてしばらく無言だったのですが……そこで所長が勝負に出ます。
腹をわって話そうじゃないか、あんたらも金で雇われたんだろ?
こっちも調査料で人の秘密を探る後ろ暗い稼業だ。
ro2
本当の依頼者を裏切って、タイアップしませんか?
分け前は半々、一億ならば5000万、10億ならば5億、100億ならば……
思い切りダーティな取引を持ち掛ける所長。
村木はその「悪人」ぶりに、心の中で舌を巻きます。
そこで代理人は、重い口を開き始めました。
二つ説があって……一つは米国の製薬会社がやつのDNAに関心を持っている、もう一つは中国の大財閥の総帥が長寿の秘訣を伝授して盛ろうとしている……
所長はそこで、あんたの真の依頼者はどっちかな?と、さらなるカマをかけます!!
……沈黙が続く中、代理人の胸ポケット入っていた携帯が鳴り響きます。
その電話を取り、部屋を後にしていく代理人。
所長はそれを見計らって、支払いはお連れさんが、と店員さんに言い残してさっさとその場を去っていってしまうのでした!!
代理人が帰ってきたとき、部屋の中はもぬけの殻。
所長はまんまと老人の周りで蠢く企みの真相を聞くことができ、ついでに高級店での酒を楽しむことができた、というわけです!

とはいえ、あの老人の正体はわかりせん。
本人の口からも語られることはないのでしょうが……所長は言うのです。
きっと関東大震災や東京大空襲の際に役所の炎上で戸籍を失い、それ以降「流れ者」としてサバイバルしてきた……
ro3
そんな風にアイツは見栄を切るだろう、と。
生年月日の査証など戸籍を調べられたら終わりなのかもしれませんが、その戸籍がなければそれもできません。
老人には戸籍がない、それだけは真実な気がする。
にやりと笑う所長は、俺の悪人ぶりはどうだった、と五万エルの表情を浮かべるのでした。



というわけで、謎の老人に関しての事件を収録した今巻。
謎多き老人を探ってみれば、会ったのはどろどろとした闇ばかり……
ある意味、本作らしい裏社会の闇にまみれた事件でした。
そんな事件の他にも、様々な物語が収録されています。
性豪を誇る男と女、その二人を対決させてみてほしいという奇妙な依頼、「ケダモノ対決」。
まるでお伽噺か何かの世界に迷い込んでしまったかのような不思議な事件に遭遇する「夢の浮橋」。
伝説的にささやかれる、伝説の「馬券師」の謎に迫る「馬券師」……
今巻も様々な、社会の闇、人間の闇、その中で鈍色の光を放つ人間の輝きなどなど、本作らしい味付けの物語が9編収録されております!
本作らしい、淡々と進んでいく雰囲気も心地いい一冊、今巻も安心して楽しめますよ!!




……ただ、14年あたりからささやかれ始めた相撲女子、通称スージョのことを本作の作中ではかたくなに「スモジョ」と言っているのが気になってみたり!!
いや、スモジョと言う言い方もあるんですけど、スージョが今のメインストリームになっているので……ホント、凄くどうでもいいんですけどね!!