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今回紹介いたしますのはこちら。

「早乙女選手、ひたかくす」第1巻 水口尚樹先生 

小学館さんのビッグコミックスより刊行です。



水口先生は02年にサンデーの漫画賞を受賞してデビューした漫画家さんです。
その後、サンデー本誌や増刊で読み切りの発表や連載を行い、12年ごろから作品発表の場をスピリッツに移して現在も活躍中。
本作も16年からスピリッツで連載された作品となります。

本作は、ラブコメディとなっています。
が、主役となる二人の間にはある事情がありまして、一筋縄ではいかないお話となっていて!?


好きです、ずっと前から、あなたのことが。
サトルくん、私と付き合いましょう。
ボクシング部の部室の前で、月島サトルはそう告白されていました。
告白してきた女性は、ショートカットにきりりとした表情が似合う美少女、早乙女八重。
彼女の告白に、サトルが返した答えは……
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ごめんなさい、というものでした。
ショックのあまりぐらついてしまう八重ですが、サトルが断ったのは八重のことが嫌いだとか、他に好きな人がいる、だとかそう言うわけではないのです。
八重は、女子ボクシングフェザー級の前年度覇者。
その圧倒的な強さで、部や学校のみならず、地域全体の期待を一身に背負う超注目選手なわけで。
しかも今は決勝前と言う非常なデリケートなはずの時期ですから……
ボクシングに打ち込んでもらうために、恋愛などに意識を振るべきではない、とサトルは考えたわけです!
しかもそんな才能あふれる八重と比べれば、サトルは体力も運動神経にも恵まれず、ボクシングをやめようとまで考えていまして……
そんなサトルの言葉を黙って聞いていた八重は、何も言わないままその場を立ち去っていってしまうのでした。

ちなみにサトルが八重の告白を断ったのは、もう一つ理由があったりします。
女子にも男子にも人気がある八重、地元の星でもある彼女と付き合う男がいるとすれば、この街で生きてはいけない……と、男子たちの間ではまことしやかにささやかれているから……
そんな様々な思いが渦巻く中、気が進まないながらも部活に向かうのです。
そこで繰り広げられている、八重のスパーリング。
八重は大学生の男子を相手に、一歩も引かないどころか圧倒的な試合運びを見せていました。
結果はノックアウト勝ち。
容姿端麗、学業優秀、卓越した身体能力。
サトルは彼女にあこがれを抱きながらも、やはり自分との隔たりを感じるのです。

スパーリングで快勝を収めた八重に、監督の塩谷は飛びついてその鮮烈なKOシーンを称賛します。
流石私の最高傑作だ、と笑う塩谷は、八重にこんな言葉をかけるのです。
まさにクールビューティー、波の男じゃ怖くて近寄れないぞ!!
引き続き塩谷は、あんたの拳は女子ボクシング界の期待の星、目指せ国体、目指せオリンピック、と1人盛り上がっているのですが……当の八重は
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ボロボロと涙をこぼして泣いているじゃありませんか!
先ほどのあの剣を思い出したのでしょう……
そんな事情など知りはしない周囲の面々は、一体どうしたんだと大慌てで彼女をなだめようとするのですが、彼女の涙は止まりません。
うずくまってしまった彼女に、寒いのか、誰か羽織るものを!と求める塩谷。
そこで八重に制服をかけてあげたのが……サトルでした。
自分に優しく服をかけてくれたのがサトルだったと知り、さっきまで泣いていた八重がもうちょっと笑うのです!

そんな流れを見て、塩谷も二人に何かがあったということを察したようです。
部室裏に二人を呼び出し、事情を聞いた後、塩谷はサトルにこう尋ねました。
八重のことを、女としてはどう思うか、と。
サトルはちょっと困りながらも、こう答えます。
恥ずかしながら俺こういうこと初めてで、正直どうなのかわからないけど……なんかこう、胸のあたりが熱くなって……
聞いてる方が恥ずかしくなる、とそこに割り込んできた塩谷は、要するに二人とも好きだということは間違いなさそうだと確信。
そして、こんな決定を下すのです。
教師としての立場や八重のファンの目を考慮して……サトルは、教から八重のトレーナーをする。
その上で、
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こっそり付き合ってしまえ!!
……いきなりの提案に、サトルはしどろもどろに。
付き合うって何を!?どんなことするんですか!?と完全に及び腰。
そんな急に言われても、なぁ八重さん!?とサトルは八重の方を振り向くのですが……
八重は、サトルをじっと見つめ続けているのです!!
その八重の、いいようのない迫力(?)に押され……サトルはこう答えるしかないのでした。
それでお願いします、と!!



というわけで、サトルと八重の隠れ交際を描いていくことになる本作。
八重はその一見するとボーイッシュにも見えがちな見た目をは裏腹に、非常に乙女チックな気持ちの持ち主です。
それでいてイメージ通りのクールさや格好良さなんかも持ち合わせておりまして、非常に魅力的なキャラクターとなっております。
サトルもそうなのですが、なにせ八重は恋愛関係に全く疎い生活を送ってきたようで、二人の恋愛は探り探り。
隠れて付き合うということはだれかにアドバイスを求めることもできませんし、いろいろと難しい所もあったりします。
ですがそんな初々しくも、ちょっぴりおかしな二人の関係は、読者としては大変ほほえましく楽しめるところなわけで。
一歩一歩恋人としての距離を縮め、理解を深めていくさまを見守る面白さがあるのです!!

昨今のラブコメなどにはつきものの思い切ったサービスシーンは本作にはありません。
ですがそんなことは気にならない、本作ならではの味わいはたっぷりです!
思い切ってはいないものの、腹筋女子と言うちょっとニッチな部分の魅力はふんだんに盛り込まれていますし、新キャラなども登場して今後の展開も期待できそう。
お話も節度ある(?)サービスシーンも、これから一層楽しめそうですよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!