kj0
今回紹介いたしますのはこちら。

「恐之本 充 高港基資ホラー傑作選集」 高港基資先生 

少年画報社さんのSGコミックスより刊行です。



さて、長年高港先生が紡いできた恐怖譚を集めてきた本シリーズもとうとう十冊目。
そして十冊目にして、とうとうこのシリーズは今巻で完結となるようです。
最終巻も容赦ない恐怖が襲う本作ですが、今巻はその中から「首巻き地蔵」を紹介したいと思います!


今から数十年は昔の話です。
新社会人となったばかりの女性が、同期入社してすぐ仲良くなった照美と休日に遊びに行きました。
桜にはまだ早いものの、心地よい暖かな陽気に包まれた公園は絶好の行楽地といえましょう。
ところがどうしたことか、一向に人影は見えません。
不思議には思ったものの、ノリのいい照美は貸し切りと思えばいいじゃないか、と気にせず公園の散策を続けます。
一抹の不安は隠せませんが、彼女についていくことしたのですが……
その後、輝美は奇妙なお地蔵様を見つけました。
お地蔵さまがよくしているよだれかけ代わりに、スカーフをたすきのような形でかけている。
ちょっぴり変わったそのお地蔵さまをみて、輝美さんは罰が当たるよと言う忠告も聞かずに、悪戯を始めてしまいます。
その当時上映していた映画から、一気にはやりだしたスカーフの巻き方、真知子巻き。
スカーフをそんな形に巻きなおすという、些細な悪戯を。
バツの悪さこそ感じはしたものの、その時はそこまで考えはしていませんでした。
このあと、とんでもない事態に巻き込まれてしまうということまでは……

翌日の朝。
会社に行くために起きだし、洗面所の鏡に向かった時でした。
鏡の上の端、自分の頭上ほどに、
kj1
何かちらりと赤い布きれのようなものが見えたように感じたのは。
すぐに天井を見上げても何もありませんし、また改めて鏡を見ても何もなし。
気のせいだったと思いなおし、会社に向かうのです。

が、会社に行ってみれば、照美から休むという連絡があったとか。
家族から体調が悪いという連絡があったそうですが、やはり機能あんなことをした後ですし、なんだか心配です。
散漫になった気持ちのまま、何となく窓の外に視線をやりますと、窓ガラスに反射して映った自分の頭上に、あの赤い布が垂れさがってきているのが見えたではありませんか。
幻覚!?
その時はそう考えもしたのですが……

水曜の朝。
いまだ欠勤の続く照美ですが、あれ以来連絡が途絶えています。
当時はまだ珍しくなかったのか、輝美の家には電話が引かれていないそうです。
そこで上司の命もあり、照美の家を訪ねることになったのですが……二日たった今もまた、赤い布が見えていました。
頭上にあったその布は、今や彼女の頭に触れようと言うほど低い位置まで下がってきています。
気にはなりますが、今は照美のほうが大事。
しかし家の戸を叩いて呼びかけてみても反応はなく、やむなく書置きを玄関の扉の隙間から差し込んで帰ろうとするのですが、その瞬間。
玄関の扉の先に黒い人影が見え、お引き取りくださいと告げてきたのです。
急なことにびっくりしましたが、とにかくこれで連絡はつきそうです。
照美と同じ会社のものだが、みんな心配している、と黒い影に懸命に告げるものの、その黒い影は取り合わず、当分出られないとお伝えください、冷たくあしらうばかり、
それでも食い下がろうとしますと、今度はバシンと扉をたたき、振り絞るような声で頼むから帰ってくれ、と言ってきて……

翌日も照美は来ませんでした。
取り付く島もなかったと知って上司はあきれ果て……このままでは照美はクビになってしまうかもしれません。
さらに、あの赤い布は口元のあたりまでぶら下がってくるようになっています。
そこに来てようやく、この赤い布があのお地蔵様のスカーフであることに気が付きました。
照美の様子がおかしいのも、これに関係があるのか?
二つの事態が重なり、もういてもたってもいられなくなり、輝美の家を訪ねたのですが、今度は玄関をどれだけ叩いても反応が全くなく。
困り果てていたところ、2階の窓が開いて……そこに照美が立っていることに気が付きました。
どうしたのか、何があったのか。
そう尋ねてみても、輝美は何も言わず……ぽろぽろと涙をこぼすばかり。
と、その直後です。
彼女の背後に、
kj2
恐ろしい形相をした得体のしれない人物が現れたのは!!
ぴしゃりと音を立て、閉ざされた二階の窓……
それが、照美の生きている姿を見た最後の瞬間でした……

翌日。
照美はとんでもない姿で発見されました。
会社の敷地内にある、木の枝で首をつっている、と言う痛ましい姿で。
その首をくくった枝の高さは、およそ20メートル。
女性一人でこんなところに首を吊ろうなど、一体だれが考えるでしょうか。
そもそも、どうやってこんなところまで来たのだというのでしょう。
ですが……彼女の変わり果てた姿の、最も驚くべき部分はそこではなかったのです。
吊り下がっていたせいでしょう、首が長く伸びてしまっていたのはまだわかります。
しかしその首に、
kj3
結び目がある……とは……!!
照美の死が、単なる自殺でないことは明白です。
その死はやはり、あのお地蔵さまにいたずらをしたことが原因なのでしょうか。
ならば……いま、目の前に垂れ下がっているこのスカーフは……!!



というわけで、今回も理不尽に降りかかる大きすぎる報いを描いたエピソードを収録した今巻。
今巻も恐怖がぎっしり詰まっておりまして、最終巻にふさわしい一冊となっております!
オカルト的な怖さと人間の怖さをミックスした描き下ろしの「ファイナル・カウント・ダウン」を皮切りとしまして、正義を貫いた結果とんでもない恨みを買ってしまう「蛹女」、こちらも首吊りがキーとなる「展望台」、理不尽すぎる怨念に殺されそうになる恐怖と、父の愛の形を描く恐ろしさと感動の一編「人柱」などなど、血飛沫が飛び散るようなもの、じわじわ侵食するようなもの、背筋がうすら寒くなるようなタイプのもの、様々な恐怖がたっぷり楽しめるのです!

今回の収録作は、古いものになると10年以上前の作品から、描き下ろしの現在進行形の作品と時代のふり幅が多いものの、それでも変わらぬハイクオリティな画力はさすがの一言。
おぞましい化け物、と言ったものは今回登場しませんが、人間からからかけ離れていないからこその恐ろしさをもつ亡霊たちに恐怖できることうけあいです!!
そんな恐怖が堪能できるのはいつも通りなのですが、最終巻と言うことで(?)ちょっぴり変わったアプローチの作品もあるのが隠れた目玉かもしれません。
高港先生の愛猫であるアンジーとの日常を描いた1P漫画、「恐怖の黒猫」が4編収録されているのです!
いつものただただ怖い高港先生作品の中に、ほっと一息つけるこんな作品があるのもまたよろしいのではないでしょうか!!

ちなみに本シリーズはこれにて完結ですが、新たな展開もあるとのこと。
単行本と言うのは巻数を重ねるとよっぽどのことがない限り売り上げは落ちていくものですから、ここで仕切り直しするのも全然ありでしょう!!
今度はこの単行本未収録作の刊行とともに、「異本」シリーズのような単行本収録を前提にした連載もどんどんしてほしいところですが……どうでしょうか!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!