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今回紹介いたしますのはこちら。

「孔雀王ライジング」第8巻 荻野真先生 

小学館さんのビッグコミックスより刊行です。


さて、子供たちの失踪事件を調べるため、鬼ヶ島学園に潜り込んだ孔雀たち。
ですがその子供たちの失踪事件には、本来仲間であるはずの裏高野のトップの一人、日航がかかわっていて……?


失踪した子供たち、通称「落ちこぼれ」は、ひそかに学校の地下の空間に隠れ住んでいました。
実はこの学校に通っている生徒たちはみな鬼と化していまして、先生に逆らう生徒たちはみなこの地獄に落とされてしまったのだと言います。
孔雀たちは、それならこの学園の外からさっさと出てしまおうというのですが、落ちこぼれたちはどこにも逃げられない、と反論してきます。
もちろんそれは落ちこぼれたちだけではなく、孔雀たちも同様だ、と言うのです。
落ちこぼれたち、そして孔雀が手にしていた地蔵宝珠の数珠の教えによれば、ここは仏教でいうところの「本物の地獄」なんだとか。
本物の地獄は、一度落ちれば天界の神や坊主でも自力で這い上がることのできない六道輪廻の牢獄。
受験に血道を上げる勉強付けの環境を「受験地獄」とはよく言いますが……それが一転して本当の地獄、とはどういうことなのでしょうか?

学園では、その日も授業が行われています。
行われていたのは、恒例のクラス替え輪廻転入試験、などというもの。
クラスは全部で6つ、天、人、修羅、畜生、餓鬼、地獄。
勝ち上がったものは、天組で将来極楽のような人生を約束され、負け続けた地獄組の常連は、強制的に退学にされる。
極楽への道は狭く険しい一本道だと考えろ、前を行く者たちはお前たちの全身を阻み、後ろに続く者たちはお前たちの足を引っ張る敵ばかりだ。
勝ち続けろ、将来仏に成るか虫けらに成るかはお前たちの努力と成績次第だ!!
教師の賢八がそう謳いあげるなか、テストに打ち込む生徒たち。
ですが、その中の一人の生徒が、ちらりと隣の生徒の答案を盗み見して、回答を移したから大変です!
すかさず賢八のチョークがその生徒の額を直撃!
そして説教が始まるのです!
受験戦争は本物の殺し合いではないが、カンニングは盗人と同じく本物の犯罪だ!
仏道における四重禁、殺戒、盗戒、淫戒、妄語戒を犯した僧は、教団追放の上、魂は大教官地獄へ落とされるのが決まり!
残念だがお前は地獄組の更に下の、本物の地獄で生存競争の厳しさを学びなおすがよい!!
そう言うや否や、教室に恐ろしい武器を携えた鬼が数名なだれ込み、その生徒を攫っていきます。
そして窓から生徒を放り投げたのでした!
そんな非情な裁きを下す賢八ですが、そんな彼にもわずかながら情けがあるようで。
幸いお前は本物の殺しも姦淫も未経験な上に、カンニングも下手くそな小心者だ、だから全身を縄で縛りあげて切り裂く、盗人の落ちる黒縄地獄あたりで許してやるわ。
そう言うと、校庭に空いた大穴の中から黒いなわのようなものが数本伸びてきて、生徒の手足に絡みつきました。
そして、じっくりと生徒を引きずり込んでいき……!?
お願い、誰か助けてください……
生徒の悲痛なその声に呼応するかのように、突如地蔵菩薩の真言が響き渡りました。
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地蔵菩薩の真言を唱えているのは……孔雀の母、冥道。
孔雀の母の形を借りた、地蔵菩薩の守り本尊です!
その慈悲の力で、生徒をあっという間に救いだしたのでした!
生徒からすれば文字通り地獄に仏でしょう。
ですが賢八からすれば、自分の教育の邪魔をする障害に他なりません!!
すぐに孔雀のもとに降り立ち、なぜ罪人を救うのだと問いかけてきました。
自分が犯した罪の対価は、おのれの苦痛で支払うのが地獄の罰。
そういう賢八の言葉は間違ってはいないのでしょうが、だからと言って地獄の獄卒でもない賢八が偉そうに生徒をいじめていいはずがない、と孔雀は反発するのです!
同じように罰を与えてやろうかと噛みつく孔雀に、賢八は妄言戒で大教官地獄落ちがお似合いだ、と鬼とともに孔雀に襲い掛かりました!!
が、鬼たちはあっさりと真っ二つにされてしまいます。
現れた、守り本尊の孔雀明王によって!!
相手が孔雀明王ならばと、印を結んで変身する賢八。
彼は、文殊菩薩とともに釈迦に説法を説いた普賢菩薩と自称。
たかが体育会系の明王ごときが説教とは思いあがるんじゃない、と改めて攻撃を仕掛けてきました!!
ですが孔雀明王は、瞬く間に普賢菩薩が乗っていた象を切り刻んで無力化!
普賢菩薩はそれでも負けじと、徒手空拳で孔雀明王に襲い掛かるのですが……もはや権力差は歴然。
あっという間に普賢菩薩は切り刻まれ、自らが地獄の穴へと落ちていってしまうのです。
そんなバカな、本物の明王みたいに強いぞ……
そう嘆く普賢菩薩……もとい賢八に、孔雀は言うのです。
そりゃそうさ、お前みたいに作り物の仏像じゃないもん。
地蔵菩薩は母ちゃんが、孔雀明王は父ちゃんが結縁感情した、正真正銘本物の仏様だよ。
……本来守り本尊は一人一仏、同時に二仏も加持祈祷できるわけがない。
そんな常識など、孔雀には関係ないのです。
僕にはできるんだからしょうがないよね。
そう言ってにこりと笑う孔雀に対し、もはや賢八は負け惜しみめいたこんな言葉を言うしかありませんでした。
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僕は死にましぇん、と……

孔雀の活躍を知った日光は、学園長との会話でこんなことを言っていました。
俺は阿鼻地獄がお似合いの坊主と仏殺しの大逆者だ。
その理由は、タイましだった孔雀の両親を、俺が殺したからだ。
そしてその時、彼らのこの孔雀も俺が殺して地獄に送った。
しかし、孔雀と言う少年は今も生きてこの学園に居る……
ヤツにとっては、死も地獄もさして恐ろしくないのだ。
俺とても裏高野座主として生まれ、仏も魔仏も地獄の存在も刺して恐ろしいとは思わぬが、殺しても死なず、地獄からも平然と帰ってくる。
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あの得体のしれぬ化け物俺には恐ろしいのだ……



というわけで、学園編が盛り上がりを見せる今巻。
学園での戦いは、孔雀たちの全員が一丸となって戦う、総力戦となっていきます。
ですがその裏で、日光の企みが結実しつつあり……
自らが最強となるために、日光が選ぶ道とは。
そしてその道を歩むためにこの学園でしたこととは?
その恐ろしい計画を目の当たりにしたとき、孔雀はどのような道を選ぶのか、その結末は!?
「孔雀王」や「退魔聖伝」では少し荒々しいところはあるものの、人格者ではあった日光。
その若かりしときの野心の行く末やいかに……!!

そしてこの後、物語はそのままの流れで新展開へ。
その新展開の場では、孔雀があまりにも意外すぎる人物と同行し、母を訪ねることとなるのです!
この新たな土地でどのような出会い、戦い、ドラマが待っているのでしょうか?
クライマックスを間近に迎えた本作からますます目が離せませんね!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!